2.[解説]医薬品の適正使用のために
    フルオロウラシル系抗癌剤による重篤な副作用
 
 テガフール・ウラシル等のフルオロウラシル系抗癌剤は、胃癌、結腸・直腸癌等の
悪性腫瘍を適応とする抗癌剤である。成分により異なるが、経口用剤、坐剤及び注射
剤などがある。安全で有効な使用のためには細心の注意が必要であり、安全性、有効
性及び適正使用のための情報を本情報No.127(平成6年7月号)で紹介した。
これらの抗癌剤のうち、主として経口用剤を胃癌等の悪性腫瘍の治癒的手術後に使用
し、劇症肝炎、骨髄抑制、重症腸炎等の重篤な副作用が発現した症例が報告されてい
る。
 悪性腫瘍の治療には外科的療法、放射線療法、化学療法などがあるが、今回紹介例
にある治癒的手術後の患者の5年後生存率は、例えば胃癌を例にとるとステージ1で
は90%以上、ステージ2でも85%と非常に良好な状況が報告されており(文献1
)、これらの患者は、手術後のアジュバント療法等の化学療法の積極的適応にはなら
ないとされている。一方、症例に紹介するように、抗癌剤の投与により重篤な副作用
発現の可能性があることから、個々の患者に抗癌剤による治療を考慮する場合には、
癌の状態や全身状態等から適応となるか否かについて慎重な判断が必要であり、また
適応となる場合であっても、安全性に十分注意し「使用上の注意」記載事項等にのっ
とった使用が求められる。
 
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|成 分 名|    成 分 名     |     該 当 商 品 名    |
|     +−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|     |(フルオロウラシル系抗癌剤)|                 |
|該当商品名|フルオロウラシル     |5−FU(協和醗酵)他      |
|     |カルモフール       |ミフロール(三井製薬)他     |
|     |テガフール        |フトラフール(大鵬薬品)他    |
|     |テガフール・ウラシル   |ユーエフティ(大鵬薬品)     |
|     |ドキシフルリジン     |フルツロン(日本ロシュ)     |
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用  |骨髄抑制(白血球減少、血小板減少)、劇症肝炎、重篤な腸炎   |
+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
(1)フルオロウラシル系抗癌剤の重篤な副作用
 テガフール・ウラシル等のフルオロウラシル系抗癌剤は主に経口で胃癌、結腸・直
腸癌等(品目により異なる)の悪性腫瘍を適応とする抗癌剤である。これらの薬剤の
安全で有効な使用のためには細心の注意が必要であり、安全性、有効性及び適正使用
のための情報については本情報No.127(平成6年7月号)で解説した。
 これら抗癌剤を悪性腫瘍の治癒的手術後に使用し、骨髄抑制、劇症肝炎、重症腸炎
等の重篤な副作用が発現した症例が報告されている。骨髄抑制等報告された症例の一
部を表1に紹介する。症例1はドキシフルリジンによる骨髄抑制、症例2、3はテガ
フール・ウラシルによる劇症肝炎等の重篤な肝障害、症例4、5、6はテガフール・
ウラシル、フルオロウラシルによる重篤な腸炎の報告である。
 悪性腫瘍の治療には外科的療法、放射線療法、化学療法等があるが、例えば胃癌を
例にとると治癒的手術後の患者の5年後生存率は、現在ではステージ1では90%以
上、ステージ2でも85%と非常に良好な状況であり(文献1)、これらの患者は手
術後のアジュバント療法等の化学療法の積極的適応にはならないとされている。一方、
症例に紹介したように、抗癌剤の薬理作用である直接細胞毒性に基づく副作用は、抗
悪性腫瘍効果(腫瘍の縮小)を求める投与量では高い頻度で発現するものであり、そ
の内容も骨髄抑制や腸炎などの重篤な症状が知られている。したがって、個々の患者
に抗癌剤による治療を考慮する場合には、癌の状態や全身状態等から適応となるか否
かについて慎重な判断が必要であり、また適応となる場合であっても、安全性に十分
注意し「使用上の注意」記載事項等にのっとった使用が求められる。
 今回紹介した副作用症例はいずれも血液障害、肝機能異常、消化器症状として基本
的には既に「使用上の注意」に記載されているが、より重篤な症状が報告された薬剤
については、新たに追記し注意を喚起する。
 
表1−1 症例の概要
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.1                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         59                     |
|   使用理由[合併症]  胃癌                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:ドキシフルリジン800mg/日、約1年9ヵ月      |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|胃癌に対しドキシフルリジンの投与を開始し、約1年9ヵ月後に突然左上肢脱力感|
|があらわれ、翌日右頭頂葉に脳出血を認め、入院した。血小板数 6900/mm3と著明|
|な血小板減少がみられた。脳出血に対する治療と血小板輸血等を行ったが症状は改|
|善せず、入院8日後脳出血による脳ヘルニアにて死亡した。          |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:肝臓加水分解物製剤、シサプリド、ウルソデスオキシコール酸     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         74                     |
|   使用理由[合併症]  胃癌[高血圧、不眠症]            |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:テガフール・ウラシル顆粒1.5g(テガフールとして   |
|             300mg含有)、1ヵ月            |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|胃亜全摘(治癒切除、Stage1 )術後、約1ヵ月頃よりテガフール・ウラシル顆粒|
|の投与を開始した。26日後に発熱、倦怠感が発現、翌日GOT 201U/l、GPT |
|141U/lとなる。その3日後GOT 1179U/l、GPT1562U/l、総ビリルビン 1.6mg/|
|dlとなり入院、薬剤の投与を中止する。入院翌日白血球 20200/mm3、CRP 11.86|
|μg/mlとなり重症感染症の合併を疑い、抗生物質の投与を行うが徐々に悪化する。|
|ウイルスマーカーはすべて陰性。入院7日目腹部CTにて肝腫大、胆嚢壁肥厚がみ|
|られた。入院13日目に腹水を認め、総ビリルビン 26mg/dl、プロトロンビン時間|
|38%となり重症肝炎と診断。ビリルビン吸着療法、血漿交換療法を施行した。そ|
|の後炎症反応は改善したが、肝性脳症が出現し、総ビリルビンは上昇し続けた。入|
|院約1ヵ月後に劇症肝炎のため死亡した。                  |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:シサプリド、アラセプリル、フルニトラゼパム            |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         50                     |
|   使用理由[合併症]  膀胱癌                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:テガフール・ウラシル顆粒3g(テガフールとして     |
|             600mg含有)、約2ヵ月半          |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|膀胱癌に対し手術、放射線照射を行った患者にテガフール・ウラシル顆粒を投与し|
|たところ、約2ヵ月後に総ビリルビン1.3mg/dl、GOT 376U/l、GPT 613U/l、|
|と肝障害がみられた。その15日後に黄疸のため他院を受診し、その2日後入院し|
|た。新鮮凍結血漿(FFP)、グルタチオン製剤の投与、血漿交換療法を行った。|
|入院から約2ヵ月後、肝障害は回復した。                  |
|                                     |
|臨床検査値
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|          投与開 投与約2 入院日 入院12 入院17 入院約2|
|          始日  ヵ月後      日後   日後   ヵ月後 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|総ビリルビン(mg/dl)  1.0   1.3   18.6   25.5   21.8   2.1 |
|GOT    (U/l)  20   376    471    120    74   23 |
|GPT    (U/l)  24   613    561    99    61   28 |
|LDH    (U/l)  288   829    590    442    399   390 |
|ALP    (U/l)  181   470    533    444    414   450 |
|プロトロン   (秒)  -     -     -    19.3   20.6   -  |
|  ビン時間                               |
|血小板   (x10000) 13.8   8.1    6.0    7.0    6.9  10.0 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:ウベニメクス、柴苓湯、シメチジン、インターフェロン−α、塩酸エピル|
|    ビシン                              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
表1−2 症例の概要
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.4                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         70                     |
|   使用理由[合併症]  直腸癌                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:テガフール・ウラシル4カプセル(テガフール400mg  |
|             ウラシル896mg)、81日間         |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|直腸低位前方切除術施行後、テガフール・ウラシルカプセルの投与を開始した。投|
|与開始81日目朝より腹痛、下痢が出現した。腹痛が増強したため入院し、医薬品|
|の服用を中止した。IVH治療、セファゾリンナトリウム、臭化ブチルスコポラミ|
|ンの投与を行い、翌日には症状が軽減した。結腸内視鏡検査にて肛門縁より40 |
|cmの部位からoral側に白苔で覆われた凹凸不整の粘膜病変が広がっていた。|
|以後下痢、腹痛等の症状はなく、約1週間後の結腸内視鏡検査では改善傾向が認め|
|られた。治療を続け、症状発現から2ヵ月後に回復し退院となった。      |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:エチゾラム、臭化メペンゾラート、フェノバルビタール、消化酵素剤、 |
|    耐性乳酸菌                            |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.5                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         64                     |
|   使用理由[合併症]  直腸癌                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:フルオロウラシル150mg、86日間          |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|直腸癌のためマイルス手術(腹会陰式直腸切断術)を施行後、フルオロウラシル錠|
|等の薬剤の投与を開始した。85日目に激しい下痢が出現し、翌朝、人口肛門より|
|中等度の出血が認められた。腹部の鈍痛はあるが、明らかな圧痛はなかった。全薬|
|剤の投与を中止し、大腸内視鏡検査を行ったところ、人口肛門口より約10cmの|
|ところから全周性の粘膜の壊死像を認め、典型的な偽膜性腸炎と考えられた。その|
|翌日より塩酸バンコマイシンの投与と、IHVによる高カロリー輸液と蛋白製剤の|
|投与を開始したところ、症状は回復に向かった。症状発現から14日後、再び大腸|
|内視鏡検査を行ったところ、粘膜の炎症はあったが、壊死像は消失していた。更に|
|8日後の検査では粘膜の炎症は消失し、その11日後に正常化を確認した。   |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:シサプリド、複合ビタミンB剤、健胃消化剤             |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.6                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         48                     |
|   使用理由[合併症]  甲状腺癌                   |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:フルオロウラシル250mg、24日間          |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|左甲状腺癌のため、甲状腺摘出術を施行後、フルオロウラシル等の薬剤の点滴静注|
|投与を開始した。投与開始24日頃より発熱、腎機能障害等が発現したため投与を|
|中止した。投与開始32日目、嘔吐、イレウス症状、消化管出血があり、輸血を必|
|要とした。その6日後、大量の下血が生じ、入院となった。入院時、頻脈、貧血、|
|血清総蛋白・血清鉄の低下がみられ、その後の小腸内視鏡検査で、十二指腸に凹凸|
|不整な顆粒状粘膜と全周性の深い潰瘍、管腔狭窄がみられた。入院から2ヵ月半後|
|・狭窄が進行したため十二指腸・空腸切除術を施行。手術時の所見より虚血性小腸|
|炎と診断された。手術後2ヵ月半の内視鏡所見では、縦走傾向の浅い潰瘍が多発し|
|、一部に全周性潰瘍と管腔狭小化が残存していた。その後症状の再発はみられてい|
|ない。                                  |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:塩酸アクラルビシン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
(2)テガフール製剤による劇症肝炎と具体的注意点
 テガフール・ウラシルによる黄疸、脂肪肝等の肝機能障害については既に「使用上
の注意」に記載してきたが、重篤な肝障害(劇症肝炎等)の報告が最近3年間に5例
報告され、うち3例が死亡している。
 報告された5例の性別は男1例、女4例で、年齢は45〜75歳であった。また、
投与開始から肝障害発現までは1〜5ヵ月で、ほとんどが1〜2ヵ月の間に発現して
いた。劇症肝炎として報告されたのは3例で、他は肝炎、肝不全であった。検査値、
経過等の情報が不足している症例もあるが、いずれも薬剤との関係は否定できない。
また、報告例の中にGOT、GPT、総ビリルビン等の肝機能検査値に異常が認めら
れた後も薬剤の投与が継続されている例、検査間隔が長すぎたために副作用の発見が
遅れた可能性のある例があり、必ずしも適正な使用が徹底されていないおそれがある。
このことから、テガフール製剤による劇症肝炎を含む重篤な肝障害の発現について改
めて注意を喚起する。
 テガフール・ウラシル、テガフールの投与にあたっては次の点に留意する必要がある。
 
1.適応患者の慎重な選択
2.肝機能検査の確実な実施
 肝障害を早期に発見し、重篤化させないために定期的な肝機能検査は必ず行うこと。また、肝障害の前兆、又は自覚症状と考えられる食欲不振、倦怠感の発現に十分注意
し、黄疸(眼球黄染)があらわれた場合には直ちに服薬を中止すること。
 
 副作用に関連して、警告、一般的注意等「使用上の注意」を下記のように改訂する
こととした。
 また、テガフール製剤以外のフルオロウラシル系抗癌剤についても同様の副作用が
発現するおそれがある。使用にあたっては十分な注意が必要である。
 
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<テガフール、テガフール・ウラシル>
警告
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|劇症肝炎等の重篤な肝障害が起こることがあるので、定期的に肝機能検査を行うな|
|〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜|
|ど観察を十分に行うこと。異常が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な|
|〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜|
|処置を行うこと。                             |
|〜〜〜〜〜〜〜〜                             |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
一般的注意
 劇症肝炎等の重篤な肝障害が起こることがあるので、定期的に(特に投与初期は頻
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 回に)肝機能検査を行うなど観察を十分に行い、肝障害の早期発見に努めること。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 肝障害の前兆、又は自覚症状と考えられる食欲不振を伴う倦怠感等の発現に十分に
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 注意し、黄疸(眼球黄染)があらわれた場合には直ちに投与を中止すること。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
副作用
 肝臓:まれに劇症肝炎等の重篤な肝障害があらわれることがあるので、定期的に(
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 特に投与初期は頻回に)肝機能検査を行うなど観察を十分に行うこと。(以下現行
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 の記載)
 
(3)フルオロウラシル系抗癌剤と重篤な腸炎
 フルオロウラシルの投与により、激しい下痢が起こることは以前から報告されてお
り、本情報No.41(昭和55年2月号)で情報提供し、「使用上の注意」に脱水
症状、下痢等の記載を行った。他のフルオロウラシル系抗癌剤についても既に下痢の
発現についての記載がある。しかし、最近の報告でフルオロウラシル系抗癌剤の投与
により下痢、腹痛を起こし、重篤な腸炎(出血性腸炎、虚血性腸炎、壊死性腸炎等)
が確認されている症例が7例あった。その内訳はフルオロウラシル2例、ドキシフル
リジン1例、テガフール1例、テガフール・ウラシル3例であった。
 報告された7例の性別は男4例、女3例で、年齢は34〜72歳であった。いずれ
もフルオロウラシル系抗癌剤投与後に下痢、腹痛が発現し、内視鏡等により重篤な腸
炎が確認されている。7例中6例が前述の悪性腫瘍の治癒的手術後の補助的な化学療
法として用いられているほか、他の抗癌剤が併用されている例等があるが、再投与に
より症状が再発している例もあり、薬剤との関係が強く疑われる。したがって、フル
オロウラシル系抗癌剤の投与にあたっては、腹痛、下痢等の発現に十分注意し、異常
が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要がある。
 フルオロウラシル系抗癌剤の投与による重篤な腸炎の発現について更に注意を喚起
するため、「使用上の注意」を下記のとおり改訂することとした。
 
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<フルオロウラシル(注射剤、経口剤)[フルオロウラシル、(坐剤)、カルモフー
ル、テガフール、テガフール・ウラシル、ドキシフルリジンについても同様の改訂]>
一般的注意
(2)重篤な腸炎(出血性腸炎、虚血性腸炎、壊死性腸炎等)及び脱水症状があらわ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  れることがあるので観察を十分に行い、激しい腹痛・下痢等の症状があらわれた
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  場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、脱水症状があらわれた場
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  合には補液等の適切な処置を行うこと。
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副作用
(1)脱水症状:激しい下痢が発現した場合には、投与を中止し補液等の適切な処置
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  を行うこと。
(2)消化器:重篤な腸炎(出血性腸炎、虚血性腸炎、壊死性腸炎等)があらわれる
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  ことがあるので観察を十分に行い、激しい腹痛・下痢等の症状があらわれた場合
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  には投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、(以下、現行の記載)
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<参考文献>
1)Treatment Results of Gastric Carcinoma in Japan,No.39,The Japanese
  Research Society for Gastric Cancer(1995)