1.ミコナゾールと不整脈
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|成分名             |該当商品名              |
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、ミコナゾール          、フロリードF注(持田製薬)他     、
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|薬効分類等:抗真菌剤                          |
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|効能効果:クリプトコッカス、カンジダ、アスペルギルス、コクシジオイデスの|
|     うち本剤感性菌による下記感染症                |
|       真菌血症、肺真菌症、消化管真菌症、尿路真菌症、真菌髄膜炎 |
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(1)症例紹介
 ミコナゾールは昭和60年(1985年)11月に承認されたアゾール系抗真菌剤
である。これまでにミコナゾールの投与により不整脈を発現したとする症例が8例報
告されている。報告された症例は高齢者が多く、心不全等の重篤な循環器系の疾患を
持っている例が多い。また、同時に併用されている薬剤がある症例も多い。しかし、
いずれの症例もミコナゾールの投与直後又は投与中に不整脈が発現しており、本剤と
の関係は否定できない。報告された症例の性別は男性7例、女性1例、年齢は44〜
86歳で65歳以上が6例と高齢者が多い。また、原疾患として心不全等を合併して
いる症例が3例ある。不整脈(心室頻拍、期外収縮、頻脈等)の発現時期については
初回投与時より確認されている症例が2例、継続投与後に発現している症例が6例で
あった。
 報告された症例の一部を表1に紹介する。
 
(2)安全対策
 これまでミコナゾールの投与による循環器系の副作用としては、「その他」の項に
血圧低下、期外収縮があらわれるとの報告がある旨を、及び「適用上の注意」に希釈
せずに急速に注射した場合、一過性の頻脈又は不整脈があらわれるとの報告があると
の記載をしていた。しかし、その後の症例報告もありミコナゾールの投与による心室
頻拍、期外収縮、頻脈等の不整脈の発現についてより一層注意を喚起するため、下記
の改訂を行った。
 
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<ミコナゾール>
副作用
(2)循環器:ときに血圧低下、まれに心室頻拍、期外収縮、頻脈等の不整脈があら
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  われることがあるので、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を
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  行うこと。
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表1 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         77                     |
|   使用理由[合併症]  カンジダ(肺炎)[完全AV−ブロック]    |
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|1日投与量・投与期間:400mg、6日間                 |
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|副作用−経過及び処置                           |
|カンジダ(肺炎)の治療に本剤を投与したところ、投与中及び投与後2時間程度の|
|間に心電図上、心室性期外収縮が認められた。投与後2時間以降は心電図異常は認|
|められていない。また、翌日以降、投与の度に心室性期外収縮が認められたので本|
|剤の投与を中止した。以後、心室性期外収縮は認められていない。       |
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|併用薬:L−アスパラギン酸カリウム、ブドウ糖加アミノ酸製剤、硫酸アトロピン|
|    dl−塩酸イソプロテレノール、複合ビタミンB製剤、高カロリー輸液 |
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         83                     |
|   使用理由[合併症]  肺真菌症(肺炎)[陳旧性肺結核、慢性心不全] |
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|1日投与量・投与期間:600〜1200mg、約1.5ヵ月間        |
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|副作用−経過及び処置                           |
|喀痰よりカンジダ3+、カンジテック4倍が確認されたため本剤を投与開始、60|
|0mgで8日間、800mgで3日間投与し、投与を中止したが、そのときは特に|
|副作用の発現はなかった。約1ヵ月後、肺炎増悪し本剤を1200mgに増量して|
|投与を再開したところ、投与再開6日目、投与開始直後より頻脈(80台−>14|
|0台)及び悪心が発現した。同日に3度投与したが、いずれも投与直後より同様の|
|症状が認められた。また、点滴速度を落としたが症状は改善せず、投与を中止した|
|。以後、症状は消失している。                       |
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|併用薬:硫酸セフピロム、アスポキシシリン                 |
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|No.3                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         65                     |
|   使用理由[合併症]  肺アスペルギルス症              |
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|1日投与量・投与期間:600〜800mg、5日間             |
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|副作用−経過及び処置                           |
|肺アスペルギルス症、混合感染の治療のためフルコナゾールを4日間投与。翌日、|
|ミコナゾールに変更し、600mgで3日間投与したところ、食欲低下、GOT、|
|GPTの上昇が発現した。翌日、800mgに増量して投与開始、食欲低下が著明|
|となる。翌日、午前中より脈拍の欠損がみられ、モニターを装着した。夕方、モニ|
|ター上に心室性期外収縮及びそれに続く心室性頻拍(Torsades de pointes )が出|
|現し、開眼したまま意識喪失となる。胸骨叨打にて洞リズムへ回復。意識も回復。|
|塩酸リドカイン50mg静注後、本剤及び塩酸ミノサイクリンの投与は中止し、持|
|続点滴を開始した。(患者は入院時より低カリウム血症が認められていた。)  |
|                                     |
|臨床検査値                                |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| 検 査 項 目       投 与 前  投 与 中   投 与 後  |
|               −−−−−  −−−−−   −−−−−  |
|         投与日   7/27  8/8  8/11 8/13   8/14  9/4  |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|GOT(IU/l)         45   38   144  252    160  28   |
|GPT(IU/l)         22   13   53  104    98  25   |
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|併用薬:セフタジジム、塩酸ミノサイクリン、フルコナゾール         |
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