3.オキサトミドと膀胱炎症状
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|成分名             |該当商品名              |
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、オキサトミド          、セルテクト(協和醗酵)        、
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|薬効分類等:アレルギー性疾患用剤                    |
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|効能効果:成人:アレルギ−性鼻炎、蕁麻疹、皮膚そう痒症、湿疹・皮膚炎、 |
|        痒疹                          |
|     小児:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、痒疹       |
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(1)症例の紹介
 オキサトミドはアレルギー性疾患用剤で昭和62年(1987年)に承認されてい
る。細胞内カルシウム制御作用とケミカルメディエータの遊離抑制作用等の薬理作用
を有し、気管支喘息、アレルギー性鼻炎等に用いられている。
 これまでにオキサトミド投与により膀胱炎様症状を発現したとする症例が3例報告
されている。報告された症例は、性別が男性2例、女性1例、年齢は4歳から10歳
であった。投与開始から膀胱炎様症状発現までの期間は54日から1年半であった。
主な症状は排尿痛、頻尿、血尿等で、いずれの症例も薬剤投与中に症状が発現し、投
与中止により症状の改善、回復がみられている。
 報告された症例を表3に紹介する。
 
(2)安全対策
 薬剤起因性の膀胱炎様症状については、類薬ではトラニラストが本情報No.63
(昭和58年10月号)、フマル酸ケトチフェンが本情報No.125(平成6年3
月号)で情報を提供し、他の薬剤では漢方製剤について本情報No.123(平成5
年11月号)で「漢方製剤(柴朴湯、柴苓湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯)と膀胱炎様症
状」を掲載し、漢方製剤による膀胱炎様症状の発症についても注意を喚起している。
 今回報告された症例は他の薬剤が同時に投与されているものもあり、中には膀胱様
症状の発現が知られている漢方製剤(柴朴湯)が併用されている例があった。しかし、
オキサトミドの投与後に排尿痛、血尿等の膀胱炎様症状が発現し、本剤の中止により
症状が回復していることから本剤と膀胱炎様症状発現との因果関係は否定できない。
オキサトミドを投与中に膀胱炎様症状があらわれた場合には、本剤の投与を中止し適
切な処置を行う必要がある。
 このため、オキサトミドの「使用上の注意」に膀胱炎様症状があらわれることがあ
る旨を記載することとした。
 また、今回の報告はすべて小児における報告であったことからアレルギー疾患用剤
を投与する際には特に小児では膀胱炎様症状の発現に留意し、投与中に膀胱炎様症状
が起った場合には、薬剤起因性膀胱炎の可能性を考え、使用薬剤の投与を中止し、経
過を観察するなど適切な処置をとることが必要である。
 
(3)報告のお願い
 薬剤起因性の膀胱炎様症状の発現機序については現時点では不明であり、トラニラ
スト、フマル酸ケトチフェン、オキサトミド以外のアレルギー疾患用剤においても膀
胱炎様症状が発現する可能性がある。薬剤起因性の可能性がある膀胱炎様症状を経験
した場合には、その因果関係が明らかでない場合も、併用薬の投与期間、膀胱炎様症
状の発現から回復までの経過等の情報が特に重要なので報告をお願いしたい。
 
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<オキサトミド>
副作用
(6)泌尿器:まれに頻尿、排尿痛、血尿、残尿感等の膀胱炎様症状があらわれるこ
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  とがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する
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  など、適切な処置を行うこと。
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表3 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         5                      |
|   使用理由       気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎|
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|投与量・投与期間:16mg、1年5ヵ月                  |
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|副作用−経過及び処置                           |
|オキサトミド投与約1年半後、排尿時最終尿に肉眼的血尿を認める。症状として頻|
|尿及び下腹部痛あり。3日後、泌尿器科にて膀胱内に障害ありと診断された。セフ|
|ァクロルドライシロップを投与。4日後、小児科にて膀胱炎様症状が確認される。|
|オキサトミド中止。中止2日後に、泌尿器科・小児科にて検尿したところ異常はな|
|かった。                                 |
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|併用薬:柴朴湯、麻杏甘石湯、パモ酸ヒドロキシジン、クロモグリク酸ナトリウム|
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         10                     |
|   使用理由       アレルギー性鼻炎               |
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|投与量・投与期間:60mg、6ヵ月                    |
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|副作用−経過及び処置                           |
|オキサトミド投与約6ヵ月後に排尿痛、軽度血尿が発現した。検尿にて尿中白血球|
|20/視野、赤血球無数/視野(肉眼的血尿)のため尿培養の後、セフジニル、イ|
|ブプロフェンを投与すた。その3日後排尿痛は軽減したが、軽度の血尿が続き検尿|
|にて白血球20/視野,赤血球無数/視野。尿路結石の可能性も疑い、単純写を行|
|うが有意所見はなかった。更に3日後排尿痛は消失したが軽度の血尿は続いた。尿|
|中白血球2〜3/視野,赤血球無数/視野。尿培養が陰性であったため、薬剤性膀|
|胱炎を考えオキサトミドを中止し、対症療法をカルバゾクロムスルホン酸ナトリウ|
|ム、トラネキサム酸に変更したところ、オキサトミド中止3日後に自覚症状はなく|
|なり検尿にて白血球0/視野,赤血球0/視野となった。           |
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|併用薬:なし                               |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         4                      |
|   使用理由       気管支喘息、アトピー性皮膚炎         |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:16mg、120日                   |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|オキサトミド投与54日目に、頻尿及び残尿感出現。1週間後受診時、検尿一般・|
|沈渣の核試験においては異常なしであったが、尿培養により大腸菌が認められたた|
|め、尿感染症を疑って化学療法を行った。その際、オキサトミドの投与は継続され|
|た。約2ヵ月間にわたって症状が持続するため、オキサトミドを一時中止してペミ|
|ロラストカリウムに変更。テオフィリンは継続。変更後10日経過した頃より、症|
|状は消失。その後も再発していない。                    |
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|併用薬:テオフィリン                           |
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