2.エポエチンアルファ、エポエチンベータとショック
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|成分名 |該当商品名 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
、エポエチンアルファ(遺伝子組換え)、エスポー(麒麟麦酒) 、
、−−−−−−−−−−−−−−−−、−−−−−−−−−−−−−−−−−−−、
、エポエチンベータ(遺伝子組換え) 、エポジン(中外) 、
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|薬効分類等:ヒトエリスロポエチン |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|効能効果: |
|(エポエチンアルファ(遺伝子組換え)の場合) |
| ・1500、3000国際単位 |
| 1.透析施行中の腎性貧血 |
| 2.未熟児貧血 |
| ・6000、9000、12000、24000国際単位 |
| 1.腎性貧血 |
| 2.貯血量が800ml以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者|
| の自己血貯血 |
|(エポエチンベータ(遺伝子組換え)の場合) |
| ・1500、3000国際単位 |
| 1.透析施行中の腎性貧血 |
| 2.透析導入前の腎性貧血 |
| 3.貯血量が800ml以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者|
| の自己血貯血 |
| ・6000国際単位 |
| 1.貯血量が800ml以上で1週間以上の貯血期間を予定する手術施行患者|
| の自己血貯血 |
| 2.透析導入前の腎性貧血 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
(1)症例の紹介
エポエチンアルファ、エポエチンベータの投与後にショックを起こした症例が4例
報告されている。報告された症例は透析施行中、自己血貯血の採血後、及び腎性貧血
への投与から4時間半後の発現と、発現前の状態と発現の時期は様々であるが、いず
れもエポエチンの投与後に血圧低下、チアノーゼ、意識喪失、冷汗等を発現しており、
薬剤との関係は否定できない。
報告された症例の内訳は、エポエチンアルファ2例、ベータ2例で、性別は男性2
例、女性2例、年齢は55〜84歳で、初回投与後の発現が2例、2、3回目の投与
後がそれぞれ1例ずつであった。症状は血圧低下、呼吸困難、冷汗、チアノーゼ、意
識喪失等で、1例は経過観察のみで回復し、他の3症例は生理食塩液等の点滴静注、
酸素吸入、昇圧剤の投与等により回復している。
報告された症例を表2に紹介する。
(2)安全対策
エポエチンの「使用上の注意」には、これまでにも一般的注意として、「ショック
等の反応を予測するため十分な問診をすること。なお、投与開始時あるいは休薬後の
初回投与時には、本剤の少量を静脈内に注入し、異常反応の発現しないことを確認後、
全量を投与することが望ましい。」との記載を行いショック発現の可能性について注
意を促してきた。
今回報告のあった症例は例は透析施行中、自己血貯血の採血後など血圧低下を起こ
しやすい状況の症例もあり、薬剤との関係は必ずしも明らかではない。しかし、いず
れもエポエチン投与後に血圧低下等を起こしていることから、本剤の投与にあたって
は事前に問診を十分に行い、また、投与中・投与後は血圧の変化等の患者の状態を観
察し、異常が認められた場合には投与を中止し、必要に応じて昇圧剤の投与等の適切
な処置を行う必要がある。
このため必要な「使用上の注意」の改訂を行った。
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<エポエチンアルファ、エポエチンベータ>
副作用
(1)ショック:まれにショックを起こすことがあるので、観察を十分に行い異常が
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認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
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表2 症例の概要
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|No.1 モニター報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 男 |
| 年齢 64 |
| 使用理由(合併症) 貧血(慢性腎不全、高血圧症、大動脈閉鎖不全) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量:6000単位 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|慢性腎不全で透析を施行していたが、貧血のためエポエチンアルファを投与した。|
|3回目の静注直後より、口・喉頭違和感、息苦しさ、血圧低下が発現し、その後一|
|時意識喪失となった。下肢挙上させ、生理食塩液の点滴静注と酸素吸入により約 |
|15分後に回復した。経過観察のため入院させたが、その後特に症状は出ていな |
|い。 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:なし |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 男 |
| 年齢 55 |
| 使用理由(合併症) 腎性貧血、慢性腎不全(慢性肝炎) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量:3000単位 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|8年前から保存療法で腎機能低下、貧血の治療を行ってきたが、腎機能が悪化して|
|きたため透析を開始した。透析導入(2回目)にエポエチンアルファ初回投与終了|
|3分後より、血圧低下、冷汗、チアノーゼ、気分不快が発現した。特に治療せず、|
|経過を観察したが、約10分後に回復し、血液透析を終了した。以後輸血療法を施|
|行している。 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:フロセミド、ニフェジピン、アテノロール、スクラルファート、 |
| 沈降炭酸カルシウム |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 68 |
| 使用理由(合併症) 術後自己貯血(胸部大動脈瘤) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量:6000単位 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|術前自己血貯血のためエポエチンベータを投与した。その2度目の投与直後に気分|
|不良、血圧低下(測定不可)となった。塩酸エチレフリン、塩酸ドパミン等の投与|
|により昇圧した。その後異常は認められていない。 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:酒石酸メトプロロール |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.4 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 84 |
| 使用理由(合併症) 腎性貧血(急性腎不全、心不全、狭心症、 |
| 慢性関節リウマチ) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量:6000単位 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|腎性貧血のためエポエチンベータを投与したところ約4時間半後に四肢冷感を訴え|
|た。血圧低下(70mmHg)したため血管確保し、リンゲル液、塩酸ドパミンの|
|投与を行ったところ血圧は回復した(110mmHg)。 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、アルファカルシドール、 |
| ニザチジン、沈降炭酸カルシウム |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+