3.[解説] 医薬品の適正使用のために (骨髄抑制に関して)
2)塩酸イリノテカンと骨髄抑制
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|成分名 |該当商品名 |
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、塩酸イリノテカン 、トポテシン(第一製薬) 、
| |カンプト(ヤクルト) |
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|副作用:骨髄抑制(特に白血球減少) |
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(1)症例の紹介
塩酸イリノテカンは平成6年1月に承認された、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮
頚癌、卵巣癌を効能とする抗癌剤である。承認時点で重篤な骨髄抑制と下痢の発現が
知られていたため、発売時より、「使用上の注意」に警告欄を設け、
「臨床試験で骨髄抑制あるいは下痢に起因したと考えられる死亡例が認められてい
る。」
「投与は、緊急時に十分に措置できる医療施設及び癌化学療法に十分な経験を持つ医
師のもとで、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与すること。」
「骨髄機能抑制のある患者、下痢のある患者等には投与しないこと。」
「投与に際しては、骨髄機能抑制、高度な下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、
ときに致命的な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検
査、腎機能検査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること」
等を記載し、更に新たに発行された新医薬品承認審査概要(サマリーベーシスオブア
プルーバル:SBA)により医療関係者に注意を喚起してきた。
しかし、発売後あまり期間が経過していないにもかかわらず、既に重い血液障害が
認められている状態で投与されている例や、他の抗癌剤が同時に投与され急激な骨髄
抑制を起こした例など、「使用上の注意」が十分守られていない報告がある。報告さ
れた症例を表2に示す。
(2)具体的注意点
塩酸イリノテカン投与に際しての注意点は既に「使用上の注意」に十分記載があり、
具体的な注意点も前述のMTX・FU交代療法と同じであるが、特に重要な点は以下
のとおりである。
1.既に白血球減少、血小板減少(骨髄抑制)が認められている患者には投与しない。
2.同時に他の抗癌剤を投与する際には両剤の投与量に細心の注意を払う。
今回の報告例の特徴としては、本剤の投与後にあらわれる骨髄抑制が投与から数日
後に急激にあらわれ、最悪の場合死亡に至る点である。本剤投与前の血液検査値や患
者の状態からの投与の是非の判断、他の抗癌剤の併用投与等については、これまでの
癌化学療法に対する認識を改める必要があると考えられる。
表2 症例の概要
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|No.1 企業報告|
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|患者 性 男 |
| 年齢 66 |
| 使用理由(合併症) 肺癌(肥大型心筋症、痛風) |
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|投与:60mg/m2、2回 |
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|副作用−経過及び処置 |
|肺癌に対し、シスプラチン等による治療を行っていたが、シスプラチン80mg/m2 に|
|加えて塩酸イリノテカンの投与を行った。翌日食欲不振はあったが、嘔吐はなかっ|
|た。投与7日後には嘔気があり食欲はなかったが、塩酸イリノテカンの2回目の投|
|与を行った(白血球7500)。2回目投与2日後、泥状便、血尿がみられた。更にそ|
|の2日後38.8゚の発熱がみられた。泥状便も続いていた。その翌日、白血球数600、|
|クレアチニン4.04、BUN96.3、排尿のため起立した際に一時意識喪失する。血圧|
|下降(40台)、冷感が発現する。昇圧剤により一時血圧は改善したが、翌日血圧が|
|60台より上昇しなくなり、蘇生術を行ったが死亡した。 |
| |
|臨床検査値 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| 投与前 初回投 2回目 2回目 2回目 2回目 2回目|
| 与5日 投与日 投与2 投与5 投与6 投与7|
| 後 日後 日後 日後 日後 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|赤血球(x10000) 364 430 467 485 433 380 333 |
|白血球(/mm3) 10200 9100 7500 7900 600 200 70 |
|血小板(x10000) 37.2 49.0 40.6 41.3 11.2 3.5 1.1 |
|BUN(mg/dl) 26.9 60.9 74.1 76.5 96.3 100.5 122.3 |
|クレアチニン(mg/dl) 1.48 2.69 2.68 2.55 4.04 4.49 4.89 |
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|併用薬:塩酸グラニセトロン、デキサメタゾン、フロセミド、ペンタゾシン、 |
| トラネキサム酸 |
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