2.麻しんワクチンとアナフィラキシー様症状

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|成分名             |該当商品名              |

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、 乾燥弱毒生麻しんワクチン   、乾燥弱毒生麻しんワクチン(武田薬品工 、

|                |業)他                |

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|薬効分類等:生物学的製剤(ワクチン類)                 |

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|効能効果:麻しんの予防                         |

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(1)症例の紹介

 乾燥弱毒生麻しんワクチン(以下麻しんワクチン)の接種後にアナフィラキシー様

症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)を発現した症例が4例報告されている。報告

された症例は、年齢は1〜3歳で、性別は男3例、女1例であった。いずれの症例も

麻しんワクチン接種後5〜30分以内に意識混濁、喘鳴、眼瞼腫張、血管浮腫、蕁麻

疹、呼吸困難等が発現し、2例は血圧低下も伴っていた。患者の既往歴は「特になし」

1例、「不明」1例、残る2例に卵白アレルギーがあり、母親又は本人にアトピー性

皮膚炎があった。報告された症例を表2に紹介する。

 

(2)安全対策

 これまでにも麻しんワクチン接種後に発熱、軽度の麻しん様発疹や蕁麻疹等が発現

することは報告されていたが、今回報告のあった4例はいずれも症状が重篤であり、

処置が遅れた場合には生命に関わる可能性もある。

 麻しんワクチンを接種する際にはアナフィラキシー様症状が発現する可能性がある

ので接種後は観察を十分に行う必要がある。このため麻しんワクチンの「接種上の注

意」にアナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれること

がある旨記載し、接種後の観察の重要性について注意を喚起することとした。

 

<<接種上の注意(下線部追加改訂部分)>>

<乾燥弱毒生麻しんワクチン>

副反応

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|まれにアナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれるこ|

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|とがあるので、接種後は観察を十分に行うこと。               |

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表2 症例の概要

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|No.1                             企業報告|

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|患者 性          男                      |

|   年齢         1歳                     |

|   使用理由       麻しんの予防                 |

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|投与量:0.5ml                              |

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|副作用−経過及び処置                           |

|卵白アレルギー、アトピー性皮膚炎を有する1歳児に麻しんワクチン0.5mlを皮下 |

|接種したところ約5分後に急に咳込み、嘔吐した。間もなく蕁麻疹、呼吸困難、喘|

|鳴が発現したため、グリチルリチン配合剤、副腎皮質ホルモン剤の投与を行い、呼|

|吸困難は消失した。翌日夕方には発疹は下肢のみとなり大腿部に色素沈着があっ |

|た。投与から2日後に回復した。                      |

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|No.2                             企業報告|

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|患者 性          男                      |

|   年齢         1歳7ヵ月                  |

|   使用理由       麻しんの予防                 |

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|投与量:0.5ml                              |

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|副作用−経過及び処置                           |

|主な既往歴及びアレルギー歴なし。接種後、軽い咳嗽から喘鳴となり、眼瞼浮腫が|

|発現し、かゆみのため機嫌が悪くなり、約30分後に来院した。全身に蕁麻疹があ|

|らわれたが、徐々に回復し、その日のうちに一般状態も回復した。       |

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|No.3                             企業報告|

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|患者 性          女                      |

|   年齢         1歳6ヵ月                  |

|   使用理由       麻しんの予防                 |

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|投与量:0.5ml                              |

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|副作用−経過及び処置                           |

|接種後30分程して咳込み、ひきつけを起こした。この後顔面・唇は浮腫状に腫 |

|れ、口唇は蒼白、手足、耳、前胸部は蕁麻疹様に腫れた状態となった。心拍数120 |

|回/分 血圧94/56で入院させ点滴を開始した。点滴後はうとうととよく眠った  |

|が、一度少量のミルクを吐いた。翌朝、意識は清明で食欲も良好となった。蕁麻疹|

|様の発疹も消失した。2日後に一般状態も良好となったので退院した。     |

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|No.4                             企業報告|

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|患者 性          男                      |

|   年齢         3歳                     |

|   使用理由       麻しんの予防                 |

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|投与量:0.5ml                              |

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|副作用−経過及び処置                           |

|食物アレルギー(卵により下痢、嘔吐、2歳頃に牛乳・ヨーグルトにて蕁麻疹)を|

|有し、母親にアトピー性皮膚炎、サバによる蕁麻疹のある3歳児に接種したとこ |

|ろ、約5分後に顔面潮紅、嘔気が発現。その後意識混濁、蒼白、冷感が強く、直ち|

|にO2吸入、血管確保しエピネフリン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウ  |

|ム、デキサメサゾン投与後、救急搬送された。到着時、全身蒼白、意識はなく口唇|

|・四肢にチアノーゼを認める。呼吸は浅く不整で脈拍は聴診にて心拍数 120回/ |

|分、O2 投与、点滴の上、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、炭酸水素ナ|

|トリウムを投与し、5分後より呼びかけにわずかに反応するようになったが、血圧|

|は測定不可であった。脈がわずかに触れるようになり、顔面浮腫が目立つようにな|

|った。約1時間後、意識状態・末梢冷感は徐々に改善し血圧も 100前後となった。|

|それから更に2時間後には意識は清明となり、呼吸、心拍、血圧、動脈血酸素飽和|

|度も正常となった。翌日は尿量も十分確保され、血液、尿検査に大きな問題がなか|

|ったためO2 投与、尿カテーテルを中止した。接種から5日後には一般状態も良好|

|となったので退院した。                          |

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