2.インドメタシンと痙攣

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|成分名             |該当商品名              |

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、インドメタシン(経口剤、坐剤) 、インテバン(住友製薬)他       、

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|薬効分類等:非ステロイド性消炎鎮痛剤                  |

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|効能効果:(坐剤の場合)                        |

|      手術後の炎症及び腫張の緩解、慢性関節リウマチ・変形性関節症の|

|      消炎・鎮痛                         |

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(1)症例の紹介

 インドメタシンはいわゆる非ステロイド性消炎鎮痛剤であり、プロスタグランジン

生合成阻害作用等による消炎、鎮痛、解熱等の作用を有しており、経口剤、坐剤、外

用剤等で広く用いられている。

 インドメタシン投与後に痙攣が発現したとする症例が8例報告されている。

 報告された症例の年齢は2〜74歳と幅広く、性別は女性5例、男性3例であった。

使用理由は疼痛の緩解、感冒時の解熱、インターフェロン投与時の解熱等であった。

8例のうち5例が単回投与によって発現した症例であり、3例は3〜7回目の投与時

に発現したものであった。投与から発現までの期間は1〜2時間が4症例と最も多く、

投与直後が1例、その他の症例では不明であった。併用薬剤については、インドメタ

シン単独投与による発現が疑われる症例は2例で、残る6例ではインターフェロン、

イブプロフェン、D−ペニシラミン等、他の薬剤が併用されていた。既往歴について

痙攣等が認められた患者は1例のみであった。また、8症例すべてインドメタシンの

坐剤による症例であった。

 報告された症例の一部を紹介する。(表2)



表2 症例の概要

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|No.1                             企業報告|

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|患者 性          女                      |

|   年齢         29                     |

|   使用理由       産後の疼痛                  |

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|投与量:50mg                             |

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|副作用−経過及び処置                           |

|産後の切開部疼痛に対して、インドメタシン坐剤の投与を行った。投与約1時間後|

|に強直性痙攣が発現し、ジアゼパムを投与したが、意識喪失を来したため他院へ緊|

|急入院した。その後、点滴を行い呼びかけをしたが反応はなく、眼瞼反射も認めら|

|れなかったが、突然意識を回復した。脳CT、脳波及び神経学的検査を行ったとこ|

|ろいずれも正常であった。                         |

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|No.2                             企業報告|

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|患者 性          女                      |

|   年齢         3                      |

|   使用理由       関節リウマチ                 |

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|投与量:30mg/日                           |

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|副作用−経過及び処置                           |

|若年性関節リウマチに対して、アスピリンが投与されていたが、インドメタシン坐|

|剤の投与に変更された。インドメタシン投与3日目に突然、間代性痙攣、意識障害|

|、呼吸停止が発現したため、ジアゼパム、シチコリン、デキサメタゾン等の投与及|

|び人工呼吸管理を施したところ、痙攣は25分後には消失した。更に2日後には自|

|発呼吸が出現し、意識も清明となった。                   |

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|No.3                             企業報告|

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|患者 性          女                      |

|   年齢         40                     |

|   使用理由       発熱                     |

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|投与量:50mg/日                           |

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|副作用−経過及び処置                           |

|腎細胞がんの患者に右腎摘除術の後、再発予防のためインターフェロンαを投与し|

|ていたが、それに伴う発熱に対してインドメタシン坐剤の投与を行った。4回目の|

|使用時、投与から約1時間半後に間代性痙攣、意識喪失が発現したが、その後数分|

|で症状は回復した。                            |

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|併用薬:インターフェロンα                        |

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(2)安全対策

 今回の8例における患者の原疾患は種々であったが、特に痙攣の発現に関与してい

ると思われるものは認められなかった。インドメタシンの使用理由はいずれも消炎、

鎮痛、解熱の目的であり、用法において特殊な使用症例は認められなかった。年齢に

ついては30歳以下が5例、60歳以上が1例と若年層における症例が半数以上であ

った。痙攣の既往歴のある29歳女性の1例は、幼小児期における熱性痙攣の事例で

あり、インドメタシン投与後の痙攣発現との関連は不明である。併用薬剤のある6例

のうち痙攣の副作用が知られている薬剤が併用されていた症例は3例のみであり、併

用薬剤の関与が大きいとはいえない。さらに、痙攣の発現時期がインドメタシン投与

後2時間以内である症例が半数以上であり、インドメタシン単独投与での痙攣発現症

例も2例あったこと等から、インドメタシンと痙攣発現との因果関係は否定できない。

また、今回はすべて坐剤による症例であったが、薬物動態において全身的な分布を示

す経口剤においても、同様の副作用が発現する可能性は否定できない。したがって、

インドメタシンの経口剤及び坐剤の投与に際しては、痙攣発現の可能性に留意し、症

状が発現した場合には適切な処置を行う必要がある。

 今般、インドメタシンの経口剤及び坐剤の「使用上の注意」の「副作用」の項に、

痙攣があらわれることがある旨を追記し、注意を喚起することとした。



《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》

<インドメタシン経口剤、坐剤>

副作用

 精神神経系:頭痛、ときに眠気、めまい、ふらつき感、脱力感、疲労、神経過敏、

  知覚異常、また、まれに痙攣、抑うつ、不眠、昏睡、精神錯乱、離人症、振戦、

             〜〜〜

  失神及び末梢神経炎等があらわれることがある。症状が激しい場合及び減量して

  も消失しない場合には投与を中止すること。