1.メタゾラミドと皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症
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|成分名 |該当商品名 |
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|メタゾラミド |ネプタザン(日本レダリー) |
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|薬効分類等: 眼科用剤 |
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|効能効果:緑内障 |
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(1)薬剤と重篤な皮膚障害
医薬品の投与中にみられる重篤な皮膚障害としては、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表
皮壊死症が知られている。皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:以下S−J)
は紅斑、水疱、びらんが粘膜や体表の大部分に広範に生じる多形紅斑の一種で、悪心、
高熱を伴う。眼、口腔、陰部等にも症状があらわれることがあり、失明等の重篤な転
帰をとる場合もある。中毒性表皮壊死症(Lyell症候群:以下TEN)は、発熱を伴っ
て急激に発症し、皮膚の大部分が2度熱傷様の水疱を伴うび慢性紅斑となる。摩擦を
加えると表皮が剥離するニコルスキー徴候が陽性になることが特徴で、生命の危険を
伴う場合もある。両症ともその原因として感染症があげられるが、薬剤アレルギーも
重要な原因の一つである。
抗てんかん剤、ペニシリン系・セフェム系抗生物質、非ステロイド性消炎鎮痛剤等
すでに多くの薬剤でこれらの重篤な皮膚障害の発症が知られ、「使用上の注意」に副
作用として記載されている。本情報においても、「医薬品による重篤な皮膚障害」No.
73(昭和60年6月号)、「アンピシリン(ビクシリン他)投与とStevens-Johnson
症候群」No.96(平成元年5月号)、「ラタモキセフナトリウム(シオマリン)
投与と中毒性表皮壊死症」No.103(平成2年7月号)、「エノキサシン(フル
マーク)投与と中毒性表皮壊死症、皮膚粘膜眼症候群」No.105(平成2年11
月号)を掲載し、情報提供を行ってきた。
皮膚障害は薬剤の副作用のなかで最も多く報告される症状であり、軽微な皮疹等に
ついてはほとんどの薬剤で報告があることから、医療関係者はすべての薬剤の投与に
あたって皮膚障害の発現に注意する必要があることは周知の事実である。S−J、
TENといった重篤な皮膚障害についても「使用上の注意」に記載のある薬剤をはじ
め、その類薬では同様の副作用症状の発現に常に留意する必要がある。
(2)症例の紹介
メタゾラミドは緑内障治療剤で、毛様体上皮の炭酸脱水素酵素抑制により房水産生
を減少させ眼圧を低下させる作用をもつ内服薬である。
発売後S−J,TENの症例が報告されたため、「使用上の注意」にS−J,TEN
があらわれることがある旨の記載を行い注意を喚起してきたところである。しかし、
その後の報告を含め現在までにS−J,TENを発現したとする症例があわせて13
例報告されている。
報告された症例は、S−J6例、TEN7例で、性別は男性6例、女性7例で、年
齢は25〜78歳であった。投与中に症状が発現している症例は8例で、投与開始か
ら症状発現までの日数は10〜36日であった。また、投与終了後に症状が発現した
症例は5例で、投与終了後3日〜8日の間に症状が発現している。投与中に症状の発
現した8例については、症状発現後ただちに投与薬剤を中止しているが、その後も全
身に症状が拡大した例が多い。
また、13例中3例については、S−J、TENの発現が知られている薬剤が併用
されていたが、残り10例については、なかに他剤併用例もあるが、投与期間等から
本剤単独の関与が疑われる。
報告された症例の一部を紹介する(表1)。
表1 症例の概要
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|No.1 企業報告|
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|患者 性 男 |
| 年齢 32 |
| 使用理由(合併症) 緑内障 |
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|1日投与量・投与期間:10mg 7日間 |
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|副作用−経過及び処置 |
|投与開始翌日に硝子体切除、増殖性硝子体網膜症手術を施行した。投与中止3日 |
|後、肛門周囲にびらん出現。さらに3日後口腔内にびらん、潰瘍が出現した。その|
|後、手掌、躯幹、大腿前面、口唇、眼囲、鼻部に浸潤性の紅斑ないし丘疹が発現 |
|し、皮膚粘膜眼症候群と診断され入院した。副腎皮質ホルモン剤で治療をしていた|
|が、入院19日後には眼症状悪化のため眼科転院となった。18日後には、粘膜面|
|が上皮化し、症状軽快となった。 |
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|併用薬:アセタゾラミド、ニトラゼパム、テプレノン、 |
| L−アスパラギン酸カリウム、レピリナスト、ファモチジン、感冒用剤 |
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|No.2 企業報告|
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|患者 性 男 |
| 年齢 58 |
| 使用理由(合併症) 緑内障(糖尿病) |
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|1日投与量・投与期間:75mg 8日間 |
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|副作用−経過及び処置 |
|投与開始8日後に緑内障濾過手術を施行し、投与を終了した。投与終了8日後に皮|
|疹出現。翌日、両眼球結膜充血、躯幹紅斑、両手掌紅色皮疹が出現。2日後には、|
|眼、口腔内粘膜疹が出現し、副腎皮質ホルモン投与開始。その後、皮膚科転科。消|
|炎剤等の投与を受ける。ニコルスキー反応陰性で皮膚粘膜眼症候群と診断された。|
|抗生物質の投与も開始し、23日後回復した。 |
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|併用薬:フロモキセフナトリウム、硫酸ジベカシン、アセタゾラミド、 |
| L−アスパラギン酸カリウム |
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|No.3 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 78 |
| 使用理由(合併症) 緑内障(高血圧、便秘) |
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|1日投与量・投与期間:150mg 8日間、100mg 29日間 |
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|副作用−経過及び処置 |
|投与開始35日後から頚部、背部から発赤が出現し、急速に全身に拡大、発熱を伴|
|った。3日後には、38°C台の発熱、粘膜疹も認められるようになり、投薬をす|
|べて中止した。皮疹の生検組織像により中毒性表皮壊死症と診断された。副腎皮質|
|ホルモンの投与開始し、24日後に症状軽快した。 |
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|併用薬:プレドニゾロン、ニフェジピン、シサプリド、酸化マグネシウム、 |
| センノシド、大黄甘草湯、ビフィズス菌、総合消化酵素製剤 |
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(3)安全対策
メタゾラミドによるS−J、TENについては、すでに「使用上の注意」に記載が
あるが、その後も報告数が増加しているため再度注意を喚起するものである。
これまでに報告された症例はいずれも回復しているものの、S−J、TENは発現
しやすい患者群などの特定ができず、事前の安全対策が困難であること、また、症状
が全身に広がり、失明、多臓器不全、肺炎等きわめて重篤な転帰をとる可能性もある
ことから、本剤の投与に際しては重篤な皮膚障害の発現に十分注意する必要がある。
投与中は観察を十分に行い、紅斑、そう痒感、眼充血等があらわれた場合にはただち
に全ての薬剤の投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤投与等の適切な処置を行うこと、
また、薬剤投与終了後に発現する場合もあるため投与後も一定期間は患者の症状を観
察することが必要である。
本剤の「使用上の注意」の副作用の項にはすでにこれらの症状についての記載を行
っていたが、より一層の注意喚起を行う必要があるため、下記の改訂を行った。
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
一般的注意
1)皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)、中毒性表皮壊死症(Lyell 症候
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群)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、発熱、紅斑、そう痒感、眼
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充血、口内炎等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
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