2.シロスタゾールと血小板減少
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|成分名 |該当商品名 |
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|シロスタゾール |プレタール(大塚製薬) |
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|薬効分類等:抗血小板剤 |
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|効能効果:慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善|
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(1)症例の紹介
シロスタゾールは、昭和63年(1988年)に承認された血小板凝集抑制作用と
末梢血管拡張作用を有する抗血小板剤である。
本剤の投与により血小板減少を発現したとする症例が6例報告されている。報告さ
れた症例の性別は男性2例、女性4例、年齢は34〜86歳、投与期間は4日から約
11ヵ月間であった。シロスタゾールの投与開始から症状発現までの期間は3日間の
症例が1例あり、他は2ヵ月〜8、9ヵ月程度、また、投与中止から回復までの期間
は約10日〜2ヵ月程度と、長期間投与ののち症状が発現した症例や、中止後回復の
遅い症例もある。6例のうち、2例についてはすでに血小板減少の発現が知られてい
る他の薬剤が併用されていたが、4例は本剤単独の関与が疑われる症例であり、いず
れ症例も本剤の投与中止後、血小板数の改善が認められていることから、本剤の投与
により血小板減少が発現した可能性は否定できない。
報告された症例の一部を紹介する(表2)。
表2 症例の概要
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|No.1 企業報告|
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|患者 性 女 |
| 年齢 54 |
| 使用理由(合併症) 高脂血症(糖尿病、高尿酸血症) |
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|1日投与量・投与期間:200mg 31日間、50mg 12日間 |
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|副作用−経過及び処置 |
|インスリン非依存型糖尿病のための通院加療中、高脂血症が見られたため、シロス|
|タゾールの投与を開始した。投与開始1ヵ月後に、血小板減少を認めたため、1日|
|投与量を減らし、その10日後中止した。投与中止から約1ヵ月後、血小板数は投|
|与開始前の値まで回復した。 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| 血小板(x10000) |
| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− |
| 投与13日前 11.0 |
| 投与29日目 4.3 |
| 投与42日目 3.4 |
| 中止後8日目 2.3 |
| 中止後12日目 4.3 |
| 中止後28日目 11.6 |
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|併用薬:グリベンクラミド、ニトラゼパム |
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|No.2 企業報告|
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|患者 性 男 |
| 年齢 79 |
| 使用理由(合併症) 動脈硬化症(糖尿病) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・投与期間:100mg 約10ヵ月 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|動脈硬化症の治療のためシロスタゾールの投与を開始した。投与前から血小板数は|
|低めであったが、投与開始約10ヵ月後から血小板数がさらに低下したため、投与|
|を中止したところ、血小板数は回復してきた。 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| 血小板(x10000) |
| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− |
| 投与42日前 9.0 |
| 投与7ヵ月目 9.2 |
| 投与9ヵ月目 7.2 |
| 投与10ヵ月目 3.3 |
| 中止後4日目 4.5 |
| 中止後11日目 7.1 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:複合ビタミンB剤、デキストラン硫酸ナトリウム、 |
| 水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム、硫酸鉄、インスリン |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3 モニター報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 34 |
| 使用理由(合併症) 末梢循環改善(SLE、ループス腎炎、肺高血圧 |
| 症) |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・投与期間:200mg 4日間 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置 |
|3年前からSLE、肺高血圧症のため、入退院を繰り返していた。外来通院中、レ|
|イノー現象等末梢循環改善の目的でシロスタゾールの投与を開始した。投与開始後|
|4日目に鼻出血が発現し、血小板減少を認めたため、投与を中止した。投与中止後|
|、血小板数は回復した。 |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
| 血小板(x10000) |
| −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− |
| 投与20日前 21.7 |
| 中止後1日目 8.8 |
| 中止後3日目 10.2 |
| 中止後10日目 17.3 |
| 中止後27日目 21.8 |
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|併用薬:メチルプレドニゾロン、アルファカルシドール、ジピリダモール、 |
| ニフェジピン、フロセミド |
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(2)安全対策
抗血小板剤による血液障害は、これまでに本情報No.54(昭和57年4月号)
及びNo.81(昭和61年10月号)で塩酸チクロピジンによる無顆粒球症、出血
傾向等について情報提供を行っている。また、シロスタゾールについても「使用上の
注意」に出血傾向の記載を行い注意を喚起してきているが、今回の報告から、本剤投
与中は血小板減少の発現に十分注意する必要がある。このため、今回新たにシロスタ
ゾールの「使用上の注意」に、血小板減少があらわれることがある旨を記載し、注意
を喚起することとした。
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<シロスタゾール>
副作用
(6)血液:まれに血小板減少があらわれることがある。
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