2.カルボプラチン、シスプラチンとショック
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|成分名            |該当商品名               |
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|カルボプラチン        |パラプラチン(ブリストル・マイヤ−ズ  |
|               |               スクイブ)|
|シスプラチン         |ランダ(日本化薬)           |
|               |プラトシン(ファルミタリアカルロエルバ)|
|               |ブリプラチン(ブリストル・マイヤ−ズ  |
|               |               スクイブ)|
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|薬効分類等:抗悪性腫瘍剤                        |
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|効能効果:(カルボプラチンの場合)                   |
|     頭頚部癌、肺小細胞癌、睾丸腫瘍、卵巣癌、子宮頚癌、悪性リンパ腫|
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(1)症例の紹介
 カルボプラチン及びシスプラチンは、構造式中に白金を有する抗悪性腫瘍剤であり、
シスプラチンは昭和58年(1983年)に、カルボプラチンは平成2年(1990
年)にそれぞれ承認されている。その作用機序は、癌細胞内のDNA鎖と結合して
DNA合成及びそれに引き続く癌細胞の分裂を阻害するものと考えられている。
 カルボプラチン、シスプラチンの投与後に、全身発赤、呼吸困難等のアナフィラキ
シ−様症状を発現した症例については、すでに「使用上の注意」に記載を行っている。
最近、カルボプラチン、シスプラチン投与後におけるショックの発現症例が、カルボ
プラチンで5例、シスプラチンで4例報告されている。
 報告された症例は、男3例、女6例、年齢は24〜64歳で、50歳以上が7例で
あった。また、6例が単独使用例であり、3例がエトポシド、塩酸メトクロプラミド
など他の薬剤が併用されている症例であった。いずれも薬剤の投与直後に急激な血圧
低下等のショック症状を発現しており、うち6例では全身発赤、呼吸困難、そう痒感
等のアナフィラキシ−様症状を伴っていた。カルボプラチンの4例は承認された用法
の静脈内投与例で、残りの5例はそれ以外の動脈内、腹腔内、胸腔内等の投与例であ
った。
 報告された症例の一部を紹介する(表2)。
 
(2)安全対策
 カルボプラチン及びシスプラチンの投与に際してはショックが発現するおそれがあ
るので、十分な観察のもとに慎重に投与する必要がある。これまでも、すでにアナフ
ィラキシ−様症状については記載を行っていたが、今回新たに、ショックがあらわれ
ることがある旨を記載し、注意を喚起することとした。
 
<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>
「カルボプラチン、シスプラチン」
4 副作用
(1)ショック:まれにショックを起こすことがあるので、観察を十分に行い、異常
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 が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
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表2 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         63                     |
|   使用理由       卵巣癌                    |
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|投与量:カルボプラチン300mg                     |
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|副作用−経過及び処置                           |
|9年前からシスプラチン、カルボプラチンの治療を受けていた患者に対して、カル|
|ボプラチンを投与したところ、投与開始10分後に全身のかゆみ、さらに10分後|
|に脈微弱、血圧低下(52/40mmHg)が発現した。その後四肢冷感、チアノ|
|ーゼが発現したが、カテコ−ルアミン、副腎皮質ホルモン剤の投与により、徐々に|
|全身状態は回復した。                           |
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         57                     |
|   使用理由       卵巣癌                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量:カルボプラチン300mg                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|約2年前から計8回のカルボプラチンの投与を行い特に異常を認めなかったが、9|
|回目の静注を行ったところ、1〜2分後に咳、発汗、発赤が発現し、意識レベルの|
|低下を認めた。その後、血圧低下(収縮期血圧70mmHg)、意識喪失となった|
|。輸液、副腎皮質ホルモン剤等の投与等により、徐々に血圧は上昇し、当日のうち|
|に症状は回復した。                            |
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