1.フルルビプロフェンアキセチルと痙攣
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|成分名             |該当商品名              |
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| フルルビプロフェンアキセチル |ロピオン注(科研製薬)        |
|                |リップフェン注(ミドリ十字)     |
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|薬効分類等:非ステロイド性鎮痛剤                    |
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|効能効果:次の疾患並びに状態における鎮痛                |
|       術後、各種癌                       |
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(1)症例の紹介
 フルルビプロフェンアキセチルはプロスタグランジン生合成阻害作用を有する非
ステロイド性鎮痛剤であるフルルビプロフェンのプロドラッグで、脂肪乳剤化した
静注用製剤として、平成4年(1992年)3月に術後及び各種癌の鎮痛を効能・
効果として承認された。同年7月の販売開始後、現在までに本剤の投与により痙攣
を発現したとする症例が6例報告されている。
 報告された症例は男4例、女2例で、年齢は2例が10代であり、他は62〜
90歳と高齢者が多かった。
 発現までの投与回数は初回投与が5例で、投与38日目の症例が1例であるが、
症状発現の時期は、いずれの症例も投与とほぼ同時に発現しており、本剤の投与に
より発現したことが疑われる。
 また、報告された6例のうち5例でニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン3例、
塩酸ロメフロキサシン2例)が併用されている。過去に非ステロイド性消炎鎮痛剤
フェンブフェンとエノキサシンの併用による痙攣の発現報告等[本情報No.81
(昭和61年10月号)、No.98(平成元年9月号)]もあることから、今回
もニューキノロン系抗菌剤との相互作用により発現した可能性が考えられる。他の
1例ではイミペネム・シラスタチンナトリウム、フロモキセフナトリウム、トブラ
マイシンが併用されていた。
 報告された症例の一部を紹介する(表1)。
 
(2)安全対策
 今回報告された症例はいずれも投与中もしくは投与後直ちに発現している。投与
中、投与後は痙攣等の副作用症状が突然発現するおそれがあるので、患者の状態等
に十分注意し、異常が認められた場合に適切な処置をとれるよう準備する必要があ
る。
 また、ほとんどの症例で同時にニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン、塩酸ロ
メフロキサシン)が投与されており、これらの薬剤との相互作用により痙攣が誘発
された可能性がある。したがって、今回報告のあったエノキサシン、塩酸ロメフロ
キサシンをはじめ、すべてのニューキノロン系抗菌剤との併用は避ける必要がある
と考えられる。
 なお、本剤は術後及び各種癌の鎮痛を効能・効果として承認されており、「使用
上の注意」にはすでに解熱を目的として使用しないことを記載し、注意喚起を行っ
ている。しかしながら、今回の症例のなかに、承認された効能・効果以外の、腰痛
や解熱目的での使用例が3例報告されている。投与にあたっては、本剤の効能・効
果、用法・用量を厳守する必要がある。
 以上の点について「使用上の注意」に必要な改訂を行い注意喚起の徹底を図るこ
ととした。
 
 <<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<フルルビプロフェン アキセチル>
一般的注意
 (1)本剤の適用にあたっては、効能・効果(術後、各種癌の鎮痛)、用法・用
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    量を厳守すること。
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 (4)発熱を伴う患者に対する解熱や、腰痛症の患者に対する鎮痛を目的として
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    使用しないこと。
 (10)感染症を不顕性化するおそれがあるので、感染症を合併している患者に対
 〜〜〜
    して用いる場合には適切な抗菌剤を併用し、観察を十分行い慎重に投与す
    ること。なお、ニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン、ロメフロキサシ
           〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ン)との併用により、まれに痙攣があらわれるおそれがあるので、これら
    〜〜                   〜〜〜
    抗菌剤との併用は避けること。
副作用
 (6)精神神経系:まれに痙攣、頭痛、倦怠感、また、ときに熱感、眠気、悪寒
             〜〜
          等があらわれることがある。
相互作用
 (1)ニューキノロン系抗菌剤(エノキサシン、ロメフロキサシン)との併用に
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    より、まれに痙攣があらわれるおそれがあるので、これら抗菌剤との併用
                  〜〜〜   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    は避けること。
    〜〜〜〜〜〜〜
 
<エノキサシン>
相互作用 
 (1)フェンブフェン、フルルビプロフェンアキセチルとの併用により、まれに
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    痙攣を起こすことがあるのでフェンブフェン及びその活性体フェルビナク、
    フルルビプロフェンアキセチルとの併用を避けること。また、他のフェニ
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ル酢酸系又はプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤との併用により痙
    攣を起こすおそれがあるので、慎重に投与すること。
 
<塩酸ロメフロキサシン>
相互作用 
 (1)フルルビプロフェンアキセチルとの併用により、まれに痙攣を起こすおそ
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    れがあるので併用を避けること。
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表1 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          男                      |
|   年齢         62                     |
|   使用理由       術後疼痛                   |
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|投与量・投与期間:フルルビプロフェンアキセチル50mg1回        |
|         エノキサシン600mg 2日間             |
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|副作用−経過及び処置                           |
|背部アテローム切開排膿術後にエノキサシン、フロモキセフナトリウム、硫酸イセ|
|パマイシンを投与していたが、創部疼痛のためフルルビプロフェンアキセチルを生|
|理食塩液20mlにて静注した。静注30秒後にしびれ感を訴え、その直後に上肢痙|
|攣が発現し、全身強直性痙攣となった。意識喪失となり、一時呼吸が停止したが、|
|呼吸はすぐに回復した。約30分間もうろう状態で、呼名にかすかに返事をする程度|
|だった。投与後約1時間で意識が回復した。                 |
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|No.2                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         75                     |
|   使用理由       癌性疼痛                   |
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|投与量・投与期間:フルルビプロフェンアキセチル50〜100mg 38日  |
|         塩酸ロメフロキサシン400mg 約1ヵ月        |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|子宮頚癌の疼痛に対しフルルビプロフェンアキセチル、塩酸ブプレノルフィン坐剤|
|、ジクロフェナクナトリウム坐剤の投与を始めたところ、9日目にフルルビプロフ|
|ェンアキセチル投与直後に閃輝暗点が発現したが、すぐ回復したので投与を継続 |
|した。14日目の本剤投与後に胸部不快感、閃輝暗点が発現したがいずれも軽度です|
|ぐに回復した。その後も投与を継続し、38日目の投与後に痙攣様発作、胸内苦悶|
|が発現した。酸素吸入によりその日のうちに回復した。            |
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|併用薬:マイトマイシンC、シスプラチン                  |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          男                      |
|   年齢         76                     |
|   使用理由       発熱                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・投与期間:フルルビプロフェンアキセチル50mg1回        |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過及び処置                           |
|胃癌の手術後、感染症(肺炎)を併発し発熱を繰り返していたことから、フルル |
|ビプロフェンアキセチルを投与した。静注直後に全身痙攣、血圧低下が発現した。|
|補液の投与により直ちに回復した。                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|併用薬:イミペネム・シラスタチンナトリウム、トブラマイシン        |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
<参考文献>
 1)厚生省薬務局:エノキサシンとフェンブフェンの相互作用による痙れん発作、
   医薬品副作用情報 No.81、p1(1986)
 2)厚生省薬務局:ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤との相互作
  用(痙攣)、医薬品副作用情報 No.98、p2(1989)