4.[医療用具安全性情報] 発熱シートと低温熱傷
 
 血行の改善や、筋肉のこり、筋肉痛の緩解に用いられる発熱シートを使用した際に、
低温熱傷が発現した症例が3例報告されている。3例中2例は就寝時の使用の際に起
きたものであり、就寝時には使用しないこと、長時間使用する際には低温熱傷に注意
する必要があると考えられる。
 
(1)症例の概要
 発熱シートは、温熱効果により血行の改善や、筋肉のこり、筋肉痛の緩解に用いら
れている。今回、低温熱傷として報告のあった症例は、肩こり、腰痛の緩解のため、
就寝時等に発熱シートを使用したところ、翌日に低温熱傷が発現したもので、その程
度は1度から2度の軽度あるいは中等度の熱傷であった。報告された症例を紹介する
(表1)。
 
(2)発生原因
 発熱シートは、塩化ナトリウムを触媒とし、鉄粉と水および空気中の酸素との酸化
反応による発熱を応用したものであり、性能として発熱温度40℃以上50℃以下の
状態が5時間以上持続するものである。しかし、就寝時には患者の動きが少ないため、
シートがより皮膚に密着し、また、布団等により断熱効果が生じるため発熱温度が高
くなることが考えられ、さらに就寝時には血流量の低下により温熱の分布が不良とな
り、熱傷を起こす可能性が高くなることが考えられる。
 
(3)安全対策
 現在の使用上の注意には長時間の使用による低温熱傷についての記載があるが、発
熱シートによる熱傷を防ぐためには、就寝時の使用等、本人の意識のない状態での使
用を避ける必要がある。以上のことから、「使用上の注意」に低温熱傷が発現するお
それがあるため就寝時の使用を避ける旨、記載の追加を行い注意を喚起することとし
た。
 
表1 症例の概要
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|No.1                             企業報告|
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|患者 性          女                      |
|   年齢         72                     |
|   使用理由       腰痛                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                          |
|就寝時に使用したところ、翌日の夕方、入浴時にやけどに気づいた。水疱ができて|
|皮膚がめくれ、すこし痛みがあった。2ヵ月後に確認したところ、すでに回復した|
|とのことであった。                            |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         41                     |
|   使用理由       肩こり、筋肉痛、四十肩、寝ちがい       |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                          |
|就寝時(0時〜6時)に使用し、翌朝シートを剥離したところ皮がむけ、昼頃には|
|水ぶくれになって、ただれてきたため、夕方皮膚科に行き、診察を受ける。3週間|
|後回復。                                 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.3                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         55                     |
|   使用理由       腰痛                     |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                          |
|6時間貼付後剥離したところ、赤色の斑点ができており、水ぶくれの状態であった|
|。薬剤を塗布し、冷湿布で冷やした。10日後回復。             |
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