1.インタ−フェロン−α製剤及び小柴胡湯と間質性肺炎
 
 
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|成分名             |該当商品名              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| インターフェロン−α     |オーアイエフ(大塚)         |
|                |IFNαモチダ(持田)        |
|                 |スミフェロン(住友)         |
| インターフェロン−α−2a   |キャンフェロンA(武田)       |
|      (遺伝子組換え型) |ロフェロンA(日本ロシュ)      |
| インターフェロン−α−2b   |イントロンA(シェリング・プラウ)  |
|      (遺伝子組換え型) |                   |
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|薬効分類等:その他の生物学的製剤                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+
|                      商 |オ|I|ス|キ|ロ|イ|
|                      品 |||F|ミ|ャ|フ|ン|
|                      名 |ア|N|フ|ン|ェ|ト|
|                        |イ|α|ェ|フ|ロ|ロ|
|                        |エ|モ|ロ|ェ|ン|ン|
|                        |フ|チ|ン|ロ| |A|
|                        | |ダ| |ン| | |
| 効能効果                   | | | |A| | |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−+−+−+−+−+
|腎癌                      |○|○|○|○|○|○|
|多発性骨髄腫                  | | |○|○|○|○|
|ヘアリ−細胞白血病               | | |○| | | |
|慢性骨髄性白血病                | | |○| | |○|
|HBe抗原陽性でかつDNAポリメラ−ゼ陽性のB | | |○|○|○|○|
|  型慢性活動性肝炎のウイルス血症等の改善   | | | | | | |
|C型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善  | | |○|○|○|○|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−+−+−+−+−+
 
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|成分名             |該当商品名              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
| 小柴胡湯           |ツムラ小柴胡湯エキス顆粒(ツムラ)  |
|                |コタロー小柴胡湯エキス細粒(小太郎  |
|                 |                漢方)|
+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|薬効分類等:漢方製剤                          |
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|効能効果:(ツムラ小柴胡湯エキス顆粒の場合)              |
|     体力中等度で上腹部がはって苦しく、舌苔を生じ、口中不快、食欲不|
|     振、時により微熱、悪心などのあるものの次の諸症        |
|       諸種の急性熱性病、肺炎、気管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核など|
|       の結核性諸疾患の補助療法、リンパ腺炎、慢性胃腸障害、肝機能|
|       障害、産後回復不全                    |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
(1)薬剤性肺障害
 薬剤性肺障害のなかで重篤な進行性疾患として間質性肺炎がある。原因薬剤として
はブレオマイシン等の抗癌剤、ペニシラミン、金製剤、小柴胡湯などが知られている。
病変は進行性で胸部X線上びまん性の網状、線状陰影を呈し、息切れを訴える。胸部
X線上の変化に先だち乾性咳嗽、動脈血酸素分圧の低下等を認めることがあり、これ
らの所見は重要である。インタ−フェロン(IFN)や小柴胡湯の投与により間質性
肺炎が疑われた場合には投与中止等の措置をとる必要がある[本情報No.104(
平成2年9月号解説)、No.117(平成4年11月号解説)]。
 
(2)症例の紹介
 IFN製剤は多彩な生物活性を有することから、副作用についてもすでに多くの症
状が知られており、本情報でもNo.107(平成3年3月号)で「痙攣」、No.
115(平成4年7月号)で「自己免疫現象」について情報提供を行い、No.11
7(平成4年11月号)には専門家による副作用全般の解説も紹介している。
 これまでにIFN−α製剤の投与により間質性肺炎を発現したとする症例が31例
報告されている。報告された症例の一部を表1に紹介するとともに、以下に患者背景
等について示す。
 
表1 症例の概要
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.1                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         57                     |
|   使用理由       C型慢性活動性肝炎              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・期間:α−2a900万単位、14日間(連日)、48回(週3回間欠)|
|       小柴胡湯7.5g、約6ヵ月                 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                          |
|数年前から全身倦怠感の自覚があり、検査の結果高血圧症、眼底出血、肝機能障害|
|が認められた。その後小柴胡湯の投与を開始した。その後入院し、肝生検を行い、|
|C型慢性活動性肝炎と確定診断された。小柴胡湯に約2ヵ月遅れてIFN−α−2|
|aの投与を開始した。14日間の投与後、間欠投与に変更したところ、投与開始か|
|ら約4ヵ月後に発熱、呼吸困難が発現したため、全薬剤の投与を中止した。2日後|
|意識障害を伴ったため転院した。胸部X線にて全肺野に網状陰影が認められたため|
|、間質性肺炎の発現と判断し、副腎皮質ホルモン剤によるパルス療法を開始し、塩|
|酸ミノサイクリン、セフォタキシムナトリウムの投与を行った。転院4日後には発|
|熱、呼吸器症状が軽減し、その2週間後に軽快した。             |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2                             企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性          女                      |
|   年齢         64                     |
|   使用理由       C型慢性活動性肝炎              |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|投与量・期間:α−2b600万単位、12回(週6回)、2ヵ月(週3回間欠)|
|       小柴胡湯6g、2年前から                  |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                          |
|2年前から小柴胡湯の投与を開始していたが、IFN−α−2bの投与開始日より|
|、強度の発熱、全身倦怠感、食思不振が認められた。第3週目より週3回の間欠投|
|与に変更したが手の甲、下腿部に蕁麻疹が認められ、投与開始75日目に発熱があ|
|らわれた。その2日後急性上気道炎との診断で抗生物質及び感冒薬を投与しはじめ|
|たが、発熱が続くためIFNの投与を中止した。胸部X線にて左下肺野に湿潤像を|
|認め入院し、抗生物質の投与を行ったが、発熱が持続した。IFN中止後7日目に|
|スリガラス状の間質陰影が拡大したため、副腎皮質ホルモン剤の投与を開始したが|
|、咳嗽、呼吸困難等は増悪、胸部間質陰影の拡大を認めた。投与中止後16日目(|
|この時点で小柴胡湯の投与も中止)に平熱となり、自覚症状、胸部X線像の改善を|
|認めた。                                 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
 
1.年齢
 40代1例、50代11例、60代19例であり、50歳以上の症例がほとんどで
あるが、IFN−α製剤の適応疾患が中高年齢層に多いことを考えると特異的な要素
はないと考えられる。
2.性別
 男13例、女18例であった。
3.IFN−α成分別
 αが8例、α−2aが16例、α−2bが7例であった。
4.原疾患
 C型慢性活動性肝炎が28例と最も多く、以下腎癌1例、多発性骨髄腫1例、慢性
骨髄性白血病1例であった。大部分がC型慢性活動性肝炎での発現例であるが、これ
は平成4年(1992年)に入ってC型慢性活動性肝炎への適用が認められたことに
より、対象症例が著しく増加したことによるものと考えられる。
5.総投与量
 投与開始から咳、呼吸困難等の呼吸器症状発現までのIFN−α製剤の総投与量を
表2に示す。
 
 表2 総投与量
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  総投与量 (X1000000国際単位)    症例数
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  100未満                6
  100以上300未満          14
  300以上500未満           6
  500以上                5
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
6.投与開始から発現までの期間
 IFN−α製剤投与開始から咳、呼吸困難等の呼吸器症状発現までの期間を表3に
示す。
 
 表3 IFN−α製剤投与開始から咳、呼吸困難
    等の呼吸器症状発現までの期間
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    期間              症例数
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  1ヵ月未満              3
  1ヵ月以上2ヵ月未満         9
  2ヵ月以上3ヵ月未満         7
  3ヵ月以上4ヵ月未満         5
  4ヵ月以上6ヵ月未満         7
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
7.併用薬
 併用されている薬剤のうち、間質性肺炎の発現に関与したと考えられる薬剤として
は、小柴胡湯が最も多く20例(65%)で、同一の生薬成分を含有している類似の
漢方処方製剤である柴苓湯2例及び大柴胡湯1例を含めると23例(74%)となる。
他はジクロフェナクナトリウム3例、ファモチジン2例、インドメタシン1例であっ
た(同じ症例で併用薬が複数ある場合がある)。
 小柴胡湯と柴苓湯についてはすでに「使用上の注意」に間質性肺炎があらわれるこ
とがある旨の記載を行っている。なお、小柴胡湯と間質性肺炎については本情報No.
107号において情報提供している。
 
(3)安全対策
 IFN−α製剤投与による間質性肺炎の発現の特徴としては、すでに間質性肺炎を
起こすことが知られている小柴胡湯等の漢方製剤が併用されている症例が多いことが
あげられる。しかしながら、小柴胡湯等が併用されていた23例のうち、小柴胡湯等
の投与がIFN−α製剤の投与よりも1年以上前から継続していた症例が11例ある。
なかには数年間投与を継続している症例もあり、これら長期間服用されている症例に
ついては小柴胡湯等が単独で間質性肺炎の発現に関与しているとは考えがたい。また、
3例については間質性肺炎の発現後も小柴胡湯等は継続投与されていながらIFN−
α製剤の投与の中止により症状が回復している症例で、これらの症例に関しては小柴
胡湯等の関与はほとんどないと考えられる。一方、IFN−α製剤単独による間質性
肺炎の症例が4例(13%)あり、頻度はかなり低いと考えられるものの、IFN−
α製剤単独による間質性肺炎の発現は否定できない。
 しかしながらこれまでの報告からみると、併用期間の問題があるとはいえ、間質性
肺炎を発現することがすでに知られている小柴胡湯等の関与も発現や増悪についての
重要な要素と考えざるをえない。すなわち併用の報告数が多いことからIFN−α製
剤と小柴胡湯等との相互作用による発現・増悪の可能性がより強く疑われる。しかし、
メカニズム等については現段階では不明であり、今後の報告状況及び専門家による検
討を待つ必要があると考えられる。したがって、現段階では安全性の確保という点か
らIFN−α製剤の投与に際しては、小柴胡湯等との併用は避けることが望ましいと
考えられる。小柴胡湯等は一般用医薬品としても販売されており、患者の判断により
服用されている可能性もあるので、患者に対する服薬指導も必要になる場合があると
考えられる。
 間質性肺炎の発現はIFN−α製剤の投与1〜5ヵ月後くらいまでに咳、呼吸困難
等の症状が発現している症例が多いことから、IFN−α製剤投与直後にあらわれる
発熱等の副作用との鑑別は比較的容易であると考えられる。本剤の投与中及び投与後
は患者の状態を注意深く観察し、咳、呼吸困難等の呼吸器症状が認められた場合には
速やかに胸部X線、動脈血液ガス、肺拡散能力等の検査を実施し、本剤及びその他関
与が疑われる薬剤の投与を中止するとともに副腎皮質ホルモン剤の投与等適切な処置
を行う必要がある。
 今般、IFN−α製剤の「使用上の注意」の一般的注意と副作用の項に間質性肺炎
があらわれることがある旨の記載を行い、注意を喚起することとした。また、小柴胡
湯についてはすでに副作用の項に記載を行っているが、今回は肝疾患に対する適応を
有する製剤の一般的注意の項へ新たにIFN−α製剤との併用で間質性肺炎が多く報
告されている旨を記載することとした。
 また、最近、IFN−α製剤で急性腎不全、血糖上昇を発現したとする症例が報告され
たことから、因果関係については必ずしも明らかではないがこれらについても併せて
「使用上の注意」の改訂を行うこととした。
 
(4)報告のお願い
 IFN−α製剤投与による間質性肺炎については、小柴胡湯の関与等その発現につ
いていまだ不明な点が多い。他の同時併用薬剤での発現や、他のIFN製剤での発現
等、今後注目して情報収集を図る必要があると思われる。また、IFN製剤は多彩な
生物活性を有することから、今後も新たな副作用が発現する可能性があると考えられ、
同様の症例又は新たな副作用症状と思われる症例を経験した場合には、その因果関係
が明らかでない場合も含め報告をお願いしたい。
 
 <<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
<インターフェロン−α注射液、注射用乾燥インターフェロン−α、注射用乾燥インタ
ーフェロン−α−2a、注射用乾燥インターフェロン−α−2b>
 
一般的注意
 間質性肺炎があらわれることがあるので、発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状が
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あらわれた場合には、速やかに胸部X線等の検査を実施し、本剤の投与を中止すると
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ともに適切な処置を行うこと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 なお、間質性肺炎は小柴胡湯との併用例で多く報告されている。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
慎重投与
 糖尿病又はその既往歴のある患者
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
副作用
 腎臓:まれに急性腎不全等の重篤な腎障害があらわれることがあるので、定期的に
   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適
  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  切な処置を行うこと。(以下現行の記載)
  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 呼吸器:発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常を伴う間質性肺炎があらわれること
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  があるので、このような症状があらわれた場合には投与を中止し、副腎皮質ホル
  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  モン剤の投与等の適切な処置を行うこと。
  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 その他:(現行の記載に続いて)、血糖上昇があらわれることがある。
                 〜〜〜〜
 
 
<小柴胡湯(肝疾患に対する適応を有する製剤のみ)>
一般的注意
 間質性肺炎があらわれることがあるので、発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状が
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あらわれた場合には、速やかに胸部X線等の検査を実施し、本剤の投与を中止すると
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ともに適切な処置を行うこと。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 なお、間質性肺炎はインタ−フェロンαとの併用例で多く報告されている。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜