2.オメプラゾ−ルと血液障害
 
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|      |    成 分 名     |    該当商品名    |
|成分名   +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+
|該当商品名 |オメプラゾ−ル       |オメプラ−ル(藤沢薬品工業)|
|      |              |オメプラゾン(吉富製薬) |
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|薬効分類等 |消化性潰瘍治療剤                    |
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|効能効果  |胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、    |
|      |Zollinger-Ellison 症候群                |
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(1)症例の紹介
 消化性潰瘍についての最も確実な治療法は胃酸の分泌を抑制することであるとされ、
胃酸分泌の刺激経路の一つであるヒスタミンを介する経路を阻害するヒスタミンH2受
容体拮抗剤(H2-ブロッカー)が登場して、消化性潰瘍の治療は飛躍的に改善された。
その後、胃酸生成機構に関する研究の進展により、H2-ブロッカーとは異なる機序で
胃酸の分泌を強力に抑制するプロトンポンプ ・インヒビターが開発された。
 プロトンポンプ・インヒビターは胃酸分泌の最終過程において酸分泌酵素である
H+、K+-ATPase(プロトンポンプ)の活性を特異的に阻害することで酸分泌抑
制作用を発揮する。オメプラゾールはプロトンポンプ・インヒビタ−として我が国で
初めて承認された薬剤で、平成3年1月の承認以来現在までに約85万人に投与され
たと推定されている。
 オメプラゾールには重篤な副作用は知られていなかったが、現在までに汎血球減少
1例、白血球減少6例、血小板減少4例(うち2例は白血球減少を併発)の報告があ
る。これら9症例のうち汎血球減少を発現したとする1例を含めた5例では、すでに
血液障害を発現することが知られている薬剤等が併用されており、オメプラゾールの
関与については必ずしも明らかではない。しかし、その他の4例は本剤のみの中止に
より回復している症例であり、本剤以外に疑わしい薬剤がない症例であることから、
本剤の投与により白血球減少や血小板減少等の血液障害が発現した可能性は否定でき
ないものと考えられる。
 報告された症例の年齢は23〜79歳、性別は男4例、女5例、投与期間は4日〜
約2ヵ月で、投与量は開始時に1日40mgをしばらくの期間投与された症例が1例
あったほかはいずれも1日20mgであった。報告された症例の一部を紹介する(表
2)。
 
(2)安全対策
 消化性潰瘍治療剤の血液障害は、すでにH2-ブロッカーで最も注意を要する副作用
の一つとして知られており、本情報においてもNo.58(昭和57年12月号)で
シメチジンによる血液障害について、No.94(平成元年1月号)でファモチジン
による汎血球減少について情報提供を行い、また、No.106(平成3年1月号)
には解説も紹介してきた。今回報告されたオメプラゾール投与中の血液障害の症例は
必ずしも薬剤との関係が明らかなものばかりではなく、また発現頻度もきわめて低い
と推定されるが、本剤投与中は血液障害の発現に十分注意していく必要がある。この
ためオメプラゾールの「使用上の注意」に白血球減少、血小板減少があらわれること
がある旨を記載することとした。
 また、本年10月に我が国で二つめのプロトンポンプ・インヒビターとして承認さ
れたランソプラゾール(武田薬品)についても、薬剤との関係は必ずしも明らかでな
いものの、臨床試験において軽微な貧血、白血球数又は好中球数の減少傾向を認めた
症例があるので同様に注意を払っていく必要がある。
 
         <使用上の注意(下線部追加改訂部分)>
 <オメプラゾ−ル>
 副作用
  (2)血液:まれに白血球減少、血小板減少があらわれることがある。
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表2 症例の概要
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|No.1                            企業報告|
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|患者 性      女                         |
|   年齢     70                        |
|   使用理由   十二指腸潰瘍                    |
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|1日投与量・期間:オメプラゾール20mg、14日間           |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                         |
|十二指腸潰瘍に対し、オメプラゾ−ルの投与を開始したところ投与開始4日目に|
|白血球減少が発現したが、投与を継続した。その後は白血球数に大きな変動はみ|
|られず、14日間投与した。投与中止後15日目に白血球数は4400と回復した。|
|     投与8日前 投与4日目 6日目 11日目 中止後1日目 中止後15日目|
|赤血球         399        364    355     367      369          440    |
|  (×10000)                                                             |
|白血球        5600       2600   2800    3000     3000         4400    |
|血小板        44.2       29.2   24.7    26.9     25.8         27.6    |
| (×10000)                                                             |
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|併用薬剤:トロンビン、フマル酸第一鉄、水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグ|
|     ネシウム配合剤                        |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|No.2                            企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性      男                         |
|   年齢     79                        |
|   使用理由   胃潰瘍                       |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・期間:オメプラゾール20mg、21日間           |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置                         |
|胃潰瘍からの出血に対し、オメプラゾ−ルの投与を開始したところ、投与13日|
|目に血小板数が12.5万に減少し、20日目に8.9万に減少した。その2日|
|後に本剤の投与を中止し、塩酸ラニチジンに変更したところ、10日目に回復傾|
|向となった。                              |
|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−|
|    投与開始日 5日目 13日目 18日目 20日目 中止後10日 中止後12日|
|赤血球    170        284     287    285     296       329         340  |
| (×10000)                               |
|白血球   9900       3800    3900   4000    3600      4200        4700  |
|血小板  18.1       15.6    12.5   10.4     8.9      13.2        14.9  |
| (×10000)                               |
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|併用薬:水酸化アルミニウムゲル・水酸化マグネシウム配合剤、トロンビン  |
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