2.ニューキノロン系抗菌剤と偽膜性大腸炎
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|成分名 |該当商品名 |
| エノキサシン | フルマーク(大日本) |
| オフロキサシン | タリビッド(第一) |
| 塩酸シプロフロキサシン | シプロキサン(バイエル) |
| トシル酸トスフロキサシン | オゼックス(富山化学)、 |
| | トスキサシン(ダイナボット) |
| ノルフロキサシン | バクシダール(杏林) |
| 塩酸ロメフロキサシン | ロメバクト(塩野義)、 |
| | バレオン(北陸) |
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|薬効分類等:ニューキノロン系抗菌剤 |
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|効能効果 :ブドウ球菌属等のうち本剤感性菌による感染症 |
| 咽喉頭炎等(詳細略) |
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(1)症例の紹介
ニューキノロン系抗菌剤の消化器系の副作用としては悪心、下痢等がすでに知られ
ているが、偽膜性大腸炎を発現したとする症例が現在までに9例報告されている。
偽膜性大腸炎の主症状としては粘液・血液便を伴う激症下痢、白血球増多、発熱、
腹痛等があげられ、大腸内視鏡検査で粘膜の炎症と浮腫及び特徴的な偽膜の存在が認
められる。当初、リンコマイシンやクリンダマイシンがその原因薬剤として注目され
たが、現在ではほとんどの抗生物質でその発現が知られている。その発現機序として
は、抗生物質の投与により菌交代現象がおこり、腸内常在菌の一種で多くの抗生物質
に耐性を有するClostridium difficileが増殖し、これの産生するtoxinが腸管粘膜を
障害するとするC.difficile原因説が指摘されているが、必ずしもC.difficileまたは
そのtoxinが検出されるわけではないので、他の要因の関与も考えられている。
ニューキノロン系抗菌剤については、マウスへの投与実験や臨床第1相試験におけ
る検討で糞便中にC.difficileあるいはそのtoxinがほとんど検出されていないことな
どから、これまで偽膜性大腸炎を起こしにくいと考えられていた。しかしながら、報
告された9例のうち5例は他に抗生物質の併用もなくニューキノロン系抗菌剤が唯一
の被疑薬と考えられる症例であることから、その関係は否定できない。
報告された9例は男性4人、女性5人、年齢は33〜79歳、うち7例は60歳以
上であった。また、発現までの投与日数は確認できた症例で3日〜22日、中止後発
現した例で最も遅かった症例では投与中止後11日目に下痢が発現していた。
報告された症例の一部を表2に紹介する。
(2)安全対策
ニューキノロン系抗菌剤を使用する場合には、偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な
大腸炎が発現するおそれがあることに留意して患者の状態に十分注意し、発熱、腹痛、
頻回の下痢など異常が認められた場合には、直ちに薬剤の投与を中止するなど適切な
処置をとる必要がある。
ニューキノロン系抗菌剤の「使用上の注意」に偽膜性大腸炎があらわれることがあ
る旨を記載することとした。
《使用上の注意(下線部追加改訂部分)》
<オフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸ロメフロキサ
シン>
副作用
消化器:まれに偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることがある。
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腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を
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行うこと。
(以下現行のとおり)
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<エノキサシン、トシル酸トスフロキサシン>
副作用
(6)消化器:(現行のとおり)また、他のニューキノロン系抗菌剤で、まれに偽
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膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎があらわれることが報告されているので、
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腹痛、頻回の下痢があらわれた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を
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行うこと。
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表2 症例の概要
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|No.1 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 61 |
| 使用理由 呼吸器感染症 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・期間:ノルフロキサシン600mg、13日間 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置 |
|呼吸器感染症に対し本剤を1日600mg13日間経口投与した。投与終了後2日|
|目に腹痛、粘血便を認めたため大腸内視鏡を施行したところ偽膜性大腸炎像を認め|
|た。その後加療により回復した。 |
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|併用薬:プレドニゾロン、エラスターゼ、スクラルファート、ドンペリドン、 |
| ジギトキシン |
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|No.2 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 77 |
| 使用理由 尿路感染症 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|1日投与量・期間:塩酸シプロフロキサシン200mg、7日間 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置 |
|尿路感染症に対しセフテラムピボキシルを投与し、さらに他の抗生物質セフタジジ|
|ムを追加投与した。しかし、完全に治癒しないため、抗生物質投与開始14日目に|
|塩酸シプロフロキサシンに切り替え1日200mgを7日間経口投与した。本剤投|
|与終了後3日目に血便を認めた。腹痛や下痢はなかったが、その3日後に大腸内視|
|鏡を施行したところ白苔様の偽膜を認めた。何ら投与せず経過を観察したところ数|
|日後に軽快した。血便の発現から10日後には粘液便、血便は消失し、その後の大|
|腸内視鏡検査で偽膜の消失も確認された。 |
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|併用薬:セフテラムピボキシル、セフタジジム、塩酸ビフェメラン、トラピジル、|
| ニフェジピン、フロセミド、消化酵素剤、 |
| アズレンスルホン酸ナトリウム・L−グルタミン配合剤 |
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