5.[医療用具安全性情報]
核磁気共鳴CT装置の使用環境下での誘導電流による熱傷について
米国で、核磁気共鳴CT装置(MRI)の使用環境下で使用されるコイル、ケーブ
ル、リード線等が、同装置から発生する無線高周波(RF:radio frequency)による
誘導電流で発熱し、診断中の患者に熱傷が生じたという症例が報告されている。我が
国では1例の報告が確認されているが、米国食品医薬品庁(FDA)の医療用具放射
線局(CDRH)は、これらの報告症例を検討し、MRIの適正な使用方法について
指標を提示している。
(1)症例の報告
米国で報告された症例は、2度や3度の熱傷の報告も一部あるが、ほとんどが1度
の熱傷で発赤を生じた程度であり、重篤な症例は報告されていない。
我が国では現在までに1例の報告があり、表1にその概要を示す。
(2)発生原因
MRIから発生するRFにより、患者に接触しているケーブルやコイル等の付属器
具に誘導電流が生じて発熱するものである。
(3)米国の対応
FDAは、MRIの使用環境下で使用されるコイル、ケーブル等の器具を製造して
いる業者に、同装置の製造業者と同様に設計のチェック(絶縁等について)を行い、
ラベリングを行う前に試験を実施するよう求めた。また、MRIの使用者は同装置の
使用環境に適合しない器具は使用すべきでないとし、製造業者または輸入販売業者が
適合器具を販売する際は、販売前にFDAに適合していることを証明する情報を提出
したうえで、その旨のラベリングを行うべきであるとしている。
CDRHは、MRIの使用者が、熱傷の発現を最小限にとどめるため、以下のよう
な対処を提案している。
a.取扱い説明書をよく読み、厳守すること。不明の点は業者に問い合せること。
b.コイル、ケーブル等の付属器具は、核磁気共鳴CT装置に適合するもののみを使
用すること。
c.スキャンを開始する前に、マグネットボア内から不必要なもの(コイル、ケーブ
ル、リード線等)を取り除くこと。
d.絶縁部が擦り減っていたり、金属面がむき出しになっているコイル、ケーブル、
リード線等は絶対使用しないこと。
e.ケーブルとリード線は製造業者の説明書どおりに接続、配線がされているかどう
かを確かめること。また正しくケーブルにパッドをあてて、ループが形成されない
ようにし、患者に直接接触しないようにすること。
f.患者がインプラント、その他金属製のものを身に付けていないことを確認するこ
と。
g.もし患者がスキャン実施中に、熱感や刺されたような感じ等を訴えたら、直ちに
スキャンを中止し、患者の状態をチェックし、責任者に照会すること。
子供や鎮静剤を投与されている患者、その他会話がうまくできない患者には細心の
注意をはらうこと。
(4)安全対策
以上のような状況から、上記a〜gの内容を「使用上の注意」の記載事項に追加するよう、MRIの製造業者および輸入販売業者を指導した。
表1 症例の概要
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|No.1 企業報告|
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|患者 性 女 |
| 年齢 46 |
+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+
|副作用−経過および処置 |
|泌尿器疾患の診断のため、MRIを使用した。膀胱を撮影するため、サーフェスコ|
|イルを使用し、feetfirst の患者ポジションで約7分間にわたり、撮影を行った。|
|その際、マグネットボア内に立てかけていたサーフェスコイルのケーブルが倒れ、|
|接触していた部位に30mmX6mmの3度の熱傷を生じさせた(図1:省略。原報で|
|ご確認下さい)。 |
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