臨床スポーツ医学の現状と将来

臨床スポーツ医学の現状と将来

 

横浜市スポーツ医科学センター

高澤晴夫

 

近年、スポーツは広く行われるようになり、それにつれて臨床スポーツ医学の重要性がたかまってきた。その対象はスポーツ選手のみでなく、健康のために、あるいはリクリエーションとしてスポーツを楽しむ人たちまで、年齢も幼小児から中高年までと幅広くなってきた。

これまでの、我が国における臨床スポーツ医学はスポーツ選手の健康管理としての内科と、スポーツ外傷、障害の治療を主にした整形外科で行われているに過ぎなかった。それも、内科、整形外科のいずれもその専門領域のごく一部でしかなかった。しかし、東京オリンピック以降、スポーツが国民の間に広く浸透してきたことにより、スポーツ医学に対する期待も高まってきた。

昭和57年日本体育協会ではスポーツ選手の健康管理、治療、予防に携わる医師の研修を目的として日本体育協会公認スポーツドクター制度を発足させた。昭和61年には日本整形外科学会は専門的立場からのスポーツ医を認定した。日本医師会もスポーツを楽しむ人達の健康のための健康スポーツ医制度を設けた。このようにその目的が異なる3種類のスポーツ医がそれぞれの分野で活躍しているのが現状である。

ここにはまったく問題がないわけではなく、一つにすべきとの意見もある。

スポーツ医学の臨床面に深く関係するものとして、トレーナーがある、これは日本では明確な職種にはなっておらず、PT、柔道整復師、マッサージ師など資格を持った人達スポーツ現場でトレーナーの役割を果たしている。

日本体育協会ではアスレチックトレーナー養成講習会を行い始めた。

一方、スポーツ医学の研究面では日本体力医学会、日本整形外科スポーツ医学会、日本臨床スポーツ医学会があり、それぞれ 多くの演題を集め活発に活動している。

しかし、整形外科に限ってみれば、単に外傷,障害の治療だけでなく、予防に関わるところの基礎的な研究がよりなされることが望まれる。前十字靭帯はなぜ女性に多いか、靭帯、筋肉、腱などの軟部組織の修復過程はなどについてのバイオメカニカルな、あるいはバイオケミカルな研究がこれからの課題かと思われる。

臨床スポーツ医学は臨床の各科にまたがっているが、スポーツ科学との協力がなにより必要なことであり、これによってこれからの進歩、発展が期待されるところである。

 

 



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