教育講演
「熱
-体力、健康」
山村雅一
(東海大学医学部)
体温:
身体が産出した熱を体内に保温できるように、生物が進化し恒温生物が誕生した。熱
を逃さないための心臓血管系、肺、皮膚の整備を行ってきた。体温があることは気温
に左右されずに生化学反応が起こり、従って身体が活動できる長所がある反面、変温
動物のように寒いときに休むことはできず、死を迎えるまで身体を動かし続けなけれ
ばならない短所がある。生物の進化から考えると長所が短所を上回っている故まだ恒
温動物が生き延びているのであろう。
体温が一定にすることは一見なんでもないことのようであるが、実際実験すると大変
労力が必要であることがわかる。やかんに水をいれ摂氏
37度に保とうとすると熱を与えて
37度以上になると、電源を消し、そして37度以下になると熱を与える。この操作をくりかえし続けなければ
37度に保温できない。私達の身体はなにげなくこのような操作をし体温を維持している。
体温が
からだ動かす
場を与え
自由熱
-流出熱身体を動かすと暖かくなり、熱は生まれる。生まれた熱の一部は体内に残り体温とな
る。それ以外の熱は体外へ放出され、自由熱となる。自由熱が多すぎると水の蒸発を
利用し、発汗をうながし熱の放出を助ける。自由熱がいつまでも体内に残りうまく放
出されず体温が上昇することを発熱といい、重症になれば熱中症と呼ぶ。
からだから
解き放たれた
自由熱
熱産生
産生される熱は体温に必要な熱と自由熱の和、あるいは身体を動かす結果。身体も機
械と一緒で熱産生は速度に依存する。速く動かすと多く熱が産生され、遅いと少い。
但し体温を維持する程度の熱は産生されているので、身体が表面的には全く動いてい
ないように見えても(例えば熟睡中)身体のどこかでは動きがあり、従って速度があ
る。がどうしても若干不足するので、身体を保温するため身体を被う。
年をとると身体の動きが遅くなる結果熱産生が悪くなる。特に睡眠中は体温の維持す
ら困難となるとき、外からの熱の供給(電気毛布)が必要となることもある。
熱産生
身体の動きに
依存する
身体の速度と状態(体力、健康状態)
毎時
4kmで歩くとすればあるいは毎時10kmで走るとすればと想像を働かせると自分は運動していると自覚できる速度である。日常生活の速度は
4km以下。身体が動いていない睡眠状態でも速度は
0にならない条件をいれて、毎時1km程度と予想する。従って身体の状態は速度で決まる。
健康は
動きの速度に
依存する
身体の動きから熱力学へ
動きが速度にとして把握されると、速度に隠れている加速度が設定できる。この加速
度が地球の重力加速度の影響を弱める効果を持つ。速度と加速度と自分の体重との積
は力学上仕事率と言う。言い換えるとある人が行う単位時間あたりの仕事になる。仕
事率
(ワット)に依存し熱(単位はワット)が産生される。速度があまりに遅くなると仕事率が減り、熱産生も減り、体温維持ができない。
速度を速くすると仕事率が増え、熱産生も増え、自由熱が増え、汗がでる。
仕事が停止しているにもかかわらず、熱産生が継続すると熱中症が起る。
動かして
熱を作って
また動く
熱はもともと無駄となったエネルギー。
無駄部分を体温とし利用できた生物の代表が哺乳動物。
動ける代償が、寿命。
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