【番号】     0145  大分類     除草剤  タイトル    パラコート、ジクワット  分類番号    U021  小分類     商品名           パラコート単剤・・グラモキソンS グラモキソン100                    パラゼットDC パラゼットSC(24%含有)           ジクワット単剤・・レグロックス(30%含有)           パラコート(10%)+ジクワット(14%)合剤・・プリグロックス           パラコート(5%)+ジクワット(7%)合剤・・プリグロックスL                                 マイゼット           パラコート(3%)+ジクワット(4%)合剤・・ウィドール  性状・成分   主成分:パラコート、ジクワット          その他:界面活性剤、催吐性物質、色素、臭気性物質、苦味物質を              添加   【作用の概要】  *  薬理作用    *  毒作用     体内で生成した活性酸素による細胞障害(壊死)          表皮・粘膜の刺激・腐食作用  体内動態    *          吸収     胃から吸収せず、腸から徐々に吸収(腸肝循環は                 少ない)                 吸収率=10(5〜15)%、6時間で40%                 Tmax=約60分                 吸入および経皮吸収性(24時間で0.3%)は低い                 (ただし創傷皮膚では吸収しやすい)          分布     分布容量=603.2(ラット)、組織分布が早く、                 血中への再排出が遅い、とくに組織細胞膜成分と                 強く結合するため、組織とくに肺内蓄積が大          代謝・排泄  肺でパラコートまたはジクワットラジカルとなる。                 服用6時間後に80〜90%が、24時間までに100%が                 尿中へ排泄される          半減期    90〜150分          蛋白結合   ほとんどなし  中毒量     血中濃度 4  6  10 16  24 (服用後経過時間)               2.0  0.6 0.3  0.16  0.1  (mg/L)  致死量     パラコート:ヒト経口推定致死量・・原液10〜15ml                ヒト経口最小致死量・・30mg/kg                ヒト推定経口LD50・・約60〜80mg/kg(3〜5g/人)          ジクワット:ヒト経口最小致死量・・20%液20ml  死因      大量服用時:ショック(副腎壊死)、アシドーシス          小量服用時:腎不全、肝不全、呼吸不全  その他     致死率:90%以上   【症状の概要】  1.パラコート            第1期(摂取直後〜1日目)             ・激しい嘔吐、腹痛、下痢             ・局所刺激からくる粘膜の炎症、びらん、疼痛(口腔、              咽頭、食道、胃など)             ・口腔粘膜欠損、黄白色潰瘍形成             ・多量服用の場合の意識障害、ショック            第2期(2〜3日目)             ・肝・腎・膵障害、肺水腫、肺出血             ・循環器障害(血圧上昇、頻脈、上室性不整脈が出現し、              のちに血圧低下を起こす)            第3期(3〜10日目)             ・間質性肺炎、肺繊維症に至る             ・肺機能障害(咳嗽、喀痰、呼吸困難など)            その他:皮膚炎、爪変色、結膜炎、角膜炎、鼻出血          2.ジクワット            ・一般に致死が早く(数時間〜数日間)、肺繊維症がなく、             消化管液消失と脳内出血が特徴、パラコートに比べて             急性腎不全がおこり易い            ・常用の散布濃度(100〜500倍、0.04〜1.0%):全身的                                影響ほとんどなし            ・長時間大量吸入:鼻粘膜炎症、鼻出血、咽頭痛、                     ときに全身性症状            ・原液眼入:徐々に激しい炎症を起こし、12〜24時間後に                  角膜・結膜の上皮剥離、激痛、角膜浮腫、                  角膜混濁などがみられる、ときに視力低下、                  像不鮮明が約1カ月続くことあり            ・原液の皮膚付着:炎症、水泡、乾燥やひび割れをともなう                     皮膚炎および爪割れや剥離、                     大量長期接触によりときに死亡  中枢神経    昏睡、痙攣、意識障害  瞳孔      *  呼吸器     服用後24時間頃より肺水腫をおこし、1週間目頃より間質性陰影          増強、肺繊維化へと進行          肺繊維症、肺水腫、呼吸不全  循環器     不整脈、循環不全、ショック、脱水症状  消化器     悪心、嘔吐、下痢(血便)、腹痛、口腔、食道の腐食による疼痛          (びらん、ときに潰瘍、食道穿孔)、          肝障害(一過性・・摂取1〜4日後に発症)  電解質・代謝  大量服用時に代謝性アシドーシス  肝       2〜3日目頃より肝障害(胆汁うっ滞型)  腎・泌尿器   急性腎不全、急性尿細管の壊死(無尿・・摂取1〜4日後に発症)  体温      *  皮膚      *  神経・筋    *  血液      *  その他     *   【治療の概要】  初期症状が無いか、あるいは軽くても直ちに処置を行う  全身管理    対症療法:消化管粘膜のびらん、炎症→粘膜保護剤、抗生物質               呼吸器症状→ステロイド剤のパルス療法、免疫抑制剤               (アザチオプリン、シクロホスファミド)  催吐      摂取後30分以内なら有効(嘔吐が激しいので通常は必要ない)  胃洗浄     1.充分行う(咽頭、食道などがびらんしているこたがあるので、           これらの粘膜を損傷しないよう注意すること)          2.多量に嚥下した後、時間が経過しているときは食道穿孔による           縦隔炎を併発することがある          3.激しい嘔吐が続き、処置に支障がある場合は、ノバミン注を           投与する  吸着剤     1.10%天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン)           懸濁液200〜500mlまたは活性炭(40〜60g→水200ml)          2.ケイキサレート(50〜100g)またはカリメートは上記のものより           有効である。           ただし電解質バランスに注意すること           投与法:ケイキサレート20gを20%ソルビトール100mlに懸濁させる  下剤      1.硫酸マグネシウム(30g→水200ml)またはマグコロール250mlを           3〜4時間毎に反復投与          2.腸洗浄は、胃チューブ、十二指腸造影用カテーテルを幽門下部           まで挿入し、繰り返し、注入することが望ましい  強制利尿    大量輸液(腎機能が正常な場合はKを補給しながらフロセミド注を          加える)  血液浄化法   1.血液潅流(DHP)+血液透析(HD):             尿中パラコート定性反応が陽性の場合は早期に必ず行うこと          2.活性炭吸着型血液浄化法(DHP):             血流量、250ml/分(小児150ml/分)で8時間、5〜10日間             尿中パラコート定性反応が陰性化するまで行う。             (血中パラコートまたはジクワット濃度が0.01μg/ml以下に              なるまで2〜3週間施行し救命した症例あり)  拮抗剤・解毒剤 *  その他     1.ビタミンE(ユベラ注またはユベラ錠)は脂質の過酸化反応を           抑制するので有効と考えられている          2.酸素吸入は出来るだけ遅らせ、必要最小限の濃度または流量で           行う          3.尿中パラコート定性の測定は患者の予後や適切な処置への指標と           なるため必ず経時的に行うこと   【その他一般】  *  禁忌      酸素投与は禁忌、PaO2 50mmHg、PvO2 35mmHgまでは          酸素投与はしない  合併症の処置  急性腎不全:HD          急性肝不全:肝庇護剤、血漿交換          呼吸不全:初期にはPEEPが有効  その他     肺の繊維化予防にステロイド投与   【参考文献】   急性中毒情報ファイル          急性中毒処置の手引          北里大中毒ファイル   【参考症例】   *