【番号】     0021  大分類     防虫剤  タイトル    ナフタリン  分類番号    G021  小分類     ニューモスビーズ ネオパース モスハンガー わらべ  性状・成分   比重:1.152 水に沈む 飽和食塩水に浮く   【作用の概要】  *  薬理作用    *  毒作用     溶血作用 腎・膀胱障害作用 眼・粘膜刺激作用  体内動態          吸収     経皮・吸入により吸収される。                 ナフタリン防虫剤とともに保存されていた衣服や                 おしめを身につけ、肌にオイルを塗られた小児での                 致死的中毒例あり          分布     *          代謝・排泄  肝臓でα−ナフトール、α−ナフトキン、                 β−ナフトキノンに代謝。                 経口摂取後ナフトールやグルクロン酸抱合体として                 尿中に排泄          半減期    *          蛋白結合   *  中毒量     G6PD欠乏の人は中毒が起き易い  致死量     小児経口最小致死量 100mg/kg          ヒト推定経口最小致死量(小児) 2g          (正常成人致死量は 5〜15gと推定されるが、          glucose-6-phosphate dehydrogenase 欠乏の小児では          250〜500mgで毒性発現、個体差は大)  死因      急性溶血性貧血、腎不全  その他     水に沈み、60℃で溶けない   【症状の概要】  1.摂取後1〜2日間:胃腸症状 発熱          2.摂取後3〜5日後:溶血 メトヘモグロビン血症 肝・腎障害                   大量で痙攣・昏睡  中枢神経    頭痛 めまい 失神 痙攣 昏睡 錯乱  瞳孔      *  呼吸器     *  循環器     頻脈 心雑音  消化器     嘔吐 嘔気 食思不良 下痢 腹痛(経口摂取後48時間まで発症          する可能性あり)  電解質・代謝  *  肝       まれに 黄疸(3日目頃より出現) 肝腫(新生児では核黄疸に          よる致死率が高い)          高ビリルビン血症(新生児では毒性が強く発現する可能性あり)  腎・泌尿器   尿意頻迫 排尿障害 タンパクや円柱を含む暗褐色尿の排泄          (数日間続く) ヘモグロビン尿 腎障害  体温      発熱(3日目頃より)  皮膚      顔面紅潮 皮膚接触:表皮剥離性接触皮膚炎 おびただしい発汗  神経・筋    *  血液      溶血 3日目頃より:貧血、白血球増加  その他     眼に蒸気暴露時:視神経炎 角膜損傷 ナフタリン白内障   【治療の概要】  経口:1.催吐(少量でも行う)             2.胃洗浄、活性炭・塩類下剤投与および対症療法          吸入:1.新鮮な空気下に移す             2.対症療法          眼に入った場合:1.大量の微温湯で少なくとも15分以上洗浄                  2.化学物質による角膜損傷の一般的処置          経皮:付着部分を石鹸と水で完全に洗浄。汚染された衣服は廃棄             対症療法          ナフタリンの吸収は油性の食物をとったときや、油を塗った          皮膚では吸収が促進されるため、摂取後2〜3時間は牛乳および          油性の食物は避けさせる。          一般的初期治療の他に、溶血に対する治療が中心。溶血は遅発生で          あるから、初回検査で異常がなくても5日間程度の観察が必要。  全身管理    痙攣:ジアゼパム静注          溶血:コルチコステロイドで軽減          メトヘモグロビン血症:メチレンブルー静注          著しい貧血:輸血  催吐      牛乳を飲ませての催吐は禁忌          防虫剤を丸ごと飲み込んだときは、胃チューブを通過しないので          催吐の方が良いかも知れない。食道にひっかかっている場合は、          Foleyバルーンカテーテルで吊り上げ除去を試みる。  胃洗浄     施行する(催吐の項を参照)  吸着剤     *  下剤      ヒマシ油は禁忌 塩類下剤を投与  強制利尿    溶血の兆候が少しでもある場合はアルカリ化強制利尿を行う  血液浄化法   重症時には、血液透析や交換輸血を行う  拮抗剤・解毒剤 *  その他     *   【その他一般】  *  禁忌      油性食物(牛乳も)摂取やヒマシ油投与は禁忌、          脂肪食は3日間禁忌  合併症の処置  溶血:1%メチレンフルー静注、交換輸血  その他     予後:5〜6日後に溶血が始まり、急性腎不全がなければ回復は早い   【参考文献】   急性中毒処置の手引   【参考症例】   *