遠隔医療実験
遠隔医療実験
目次
1.実験の概要
1−1 実験の目的
1−2 実験システム
1−3 評価項目
1−4 実施計画
1−5 実験の評価方法
1−6 調査票
1−6−1 医療用調査票
1−6−2 在宅療養生活支援用調査票
1−6−3 利用者用調査票
2.実験の結果
2−1 医療用・生活支援用共通
2−2 医療用
2−3 生活支援用
2−4 利用者用
1.実験の概要
1−1 実験の目的
独居老人や在宅療養患者が、離れたところにいる専門医の診療が受けられたり、自
宅にいながらにして健康相談を受けられる。このような在宅での医療や介護、生活支
援サービスは、来るべき「情報長寿社会」においてインフラとなるべきものである。
これまで情報通信メディアや通信技術はそのようなサービスを実現するには貧弱な
ものしかなかったのが現実である。しかし今後は光ファイバーや双方向CATV等次
世代の情報通信網の整備や画像圧縮等の技術開発によって、マルチメディアの通信分
野は飛躍的な機能向上が期待できる。今回の実験では現状の技術レベルでどのような
遠隔医療や遠隔福祉等のサービスが提供可能かを明らかにし、その必要な機能の分析
やサービス面での問題点、技術的課題を抽出することを目的としている。
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1−2 実験システム
今回「遠隔健康相談システム」として実験を行ったものは、基本的にはTV電話あ
るいはTV会議システムを用いて、遠隔で医師が診察を行ったり、ソーシャルワーカー
(以下ワーカーと略す)等が生活支援を行うものである。
本実験システムは実現性をより高いものとするため、一般に市販されているテレビ
電話やテレビ会議システムを使用し、通信回線も一部CATV網を使っているが、主
にNTTのINSネットを利用している。構成する機器類は一般への普及が進んでい
ないためやや割高な価格設定になっているが、新たに開発する要素は少なく、システ
ムの構築は比較的容易である。システムの概念図を図1、提供された機器の一覧を表
1に示す。
図1 遠隔健康相談システムの概念図
表1 提供を受けた機器の仕様
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1−3 評価項目
評価は漠然と行うのではなく、「この点はTV電話等で十分だが、この点は不十分
である。」ということが明確にできるような評価を目指した。そのため、以下の2つ
の項目を柱として、実験関係者に評価してもらった。
- どの症状の問題点(プロブレム)でTV電話等が有効だったか
- 診察や生活支援に必要な情報をどれだけ得られたか
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1−4 実施計画
平成6年4月に関東逓信病院で最初の実験が行われたのを皮切りに、以降全国各地
の病院、医院等9機関で実験(第1次)が行われた。
これらの実験は各地で大きな反響を呼び、実験の希望が寄せられた。そこでより幅
広い医療分野・症例についても調査するため、平成6年10月から新たに全国19カ
所で実験(第2次)を行うこととした。
本調査報告はこの中から16機関21名の医師、看護婦、保健婦、ソーシャルワー
カー等から29人の患者(在宅療養患者18人、入院患者3人、通院患者8人)の症
例について意見、要望等、また19人の患者や介護者からも意見や感想を収集してま
とめている。
表2 第1次遠隔健康相談システム等の実験実施者等
表3 第2次遠隔健康相談システム等の実験実施者等(1/2)
表4 第2次遠隔健康相談システム等の実験実施者等(2/2)
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1−5 実験の評価方法
実験の評価は、実験の関係者に対する意見、要望等の収集によって行った。それぞ
れの立場により、システムに関する評価基準は異なるため、3種類の調査票を用意し
た。医師を代表とする医療関係者のための医療用調査票、患者や介護家族等の生活を
支援する立場にあるワーカーのための在宅療養生活支援用(以下生活支援用と略す)
調査票、そしてこのシステムを通じて各種のサービスを受ける人のための利用者用調
査票である。
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1−6 調査票
1−6−1 医療用調査票
(1)実験の実施状況
医療用調査票の設問項目は大きく4つの部分に分かれている。最初に質問している
のは、使用した機種や通信回数等実験を評価するにあたって基礎となる情報である。
これらは、実験がどのようにして行われたかを整理するための設問である。
(2)プロブレム別の評価
ここでは該当の患者が、どのような問題を抱えているかを抽出している。今回の実
験では多種多様な患者が存在しており、ひとくくりにして評価できないため、患者に
関する基礎的な情報と、診断の際に注意している患者の抱えている問題点(プロブレ
ム)をリストアップしてもらった。このリストをもとに、どのプロブレムでは、どの
程度TV電話等が有効なのかについて評価をしている。
(3)チェック項目別の評価
ここでは医師が診察の現場においてどのような情報を収集しているかという観点か
ら抽出したチェック項目(身体の運動、皮膚の色調等)別に、それらがTV電話等で
どの程度伝達できたかを、患者と直接接して診察した場合と比較して評価をしている。
本調査票では、全身の状態、皮膚の状態、眼の状態、口腔の状態、頚部の状態、胸
部の状態、腹部の状態、上肢・下肢の状態、問診の計9つに情報を分類した。
(4)在宅医療におけるTV電話等に対する意見・感想
最後にTV電話機等の機器そのものに対する感想や、システムに対する総合的な評
価を訊いている。この中では往診や通院の代わりとしてTV電話等を扱うことの可能
性についても言及している。
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1−6−2 在宅療養生活支援用調査票
- (1)実験の実施状況
- 生活支援用調査票でも、基本的な考え方は医療用と同じである。ただしこの調
査票の対象はワーカー等の生活支援をする立場にある人なので、患者だけにとどまら
ず、介護者等からの相談にも対応する必要がある。そのため重点的にみた項目には身
体の状態、精神の状態に加えて生活環境の状態、介護の状態、家族の状態の5つをあ
げている。
- (2)プロブレム別の評価
- 生活支援用の観点からも回答者からプロブレムを抽出してもらい、それぞれ個
別に評価を行った。医療用の場合と重複する部分も見受けられたが、集計は分けて行
った。
- (3)チェック項目別の評価
- ワーカーも医師同様、患者や介護家族等と接する場面において様々な情報を
収集している。しかしそれらは医師の視点とは(1)で述べたように明らかに異なる
ものであるため、特に精神面を中心に項目を抽出した。評価方法は医療用と同じく、
直接接する場合と比較した。
- (4)在宅療養生活支援におけるTV電話等に対する意見・感想
- 最後にTV電話等の機器そのものに対する感想や、システムに対する総合的な評価
を訊いている。ここでの設問項目は医療用とほぼ同じである。
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1−6−3 利用者用調査票
(1)プロフィール
今回の実験に参加した患者について基礎となる情報を収集するための設問項目であ
る。
(2)実験の実施状況
ここでの設問項目の一部は医師やワーカーを対象とした調査票のものと一部重複す
るが、患者の感想等の設問を追加しており、実験に対する満足度を測ることを目的と
している。
(3)TV電話等を使って得られる効果
遠隔健康相談システムが、患者にとってどの程度効果的に感じられたかを、電話と
比較して5段階で評価してもらった。医療者側の体制も含めたシステム全体に対する
満足度を測ることを目的としている。
(4)機器を利用してみた感想
TV電話等機器に対する満足度を測ることを目的としている。
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2.実験の結果
2−1 医療用・生活支援用共通
(1)実験の時期・通信の頻度・通信時間
通信の頻度は平均して1週間当たり 3.5回となっている。通信を行ったトータル回
数は実験期間の長さによって異なり、まだ1回しか行っていないところから60回に
及ぶものまでかなり幅がある。
一回あたりの通信時間は正確な計測ではないが、だいたいの目安を質問し回答を集
計したところ、平均約13分という結果が出た。
表
(2)時間帯
日常生活の支援や診断が主な用途であったため、通信した時間帯は日中の時間帯に
集中している。就寝後の通信は行われなかったが、このような時間帯に使用するのは
緊急通報的な使い方に限られる。
表
(3)重点的にみた項目
医療用調査票では、全身の状態、顔面の状態、上肢・下肢の状態、問診の4項目に
ついて、重点度を質問した。全般的に「よくみた」という回答が得られたが、特に顔
面の状態や問診については、ほぼ全員が最重点にみているとの結果が得られた。これ
はTV電話等が顔の表情を読みとることに主眼をおいた使われ方をされた結果と言え
る。
生活支援用では、身体の状態、精神の状態、生活環境の状態、介護の状態、家族の
状態の5項目について、重点度を質問した。ワーカーの立場では特に精神状態の確認
に重きをおいてTV電話等を使ったことがわかった。
表
(4)価格に関する意見・感想
価格については、高いという回答が圧倒的に多く、個人レベルで導入できる金額で
はないことが明らかになっている。行政の援助や保険制度の見直し、共同利用やリー
ス等の解決策がいくつか意見として出されている。
表
(5)音声の性能に関する意見・感想
音声については、意見がやや分かれた。聴診情報がとれるような性能向上のニーズ
がいくつか出された。
表
(6)画像の性能に関する意見・感想
画像についても、意見が分かれた。特に詳細な画像情報を必要とする分野の医師か
らは、より一層の性能向上を望む声が強かった。
表
(7)操作性に関する意見・感想
操作性に関しては、カメラのリモート操作について要望が強かった。
表
(8)往診、通院、訪問看護等の補完
TV電話等を導入することによって、往診、通院、訪問看護等がどの程度減らせる
かについて質問をした。
TV電話等の使用頻度は実施機関によってばらつきがあるので、TV電話等は週に
2回程度使用すると仮定して試算すれば、往診が一月あたり約2.3回必要なケースが
約1.3回に、通院は約2.2回が約1.2回に、訪問看護は約6.9回が3.8回に削減可能とい
う結果が得られた。
表
(9)病状の変化への対応に関する意見・感想
病状の変化に対して、TV電話等は非常に有効であるとの評価が得られた。利用者
の側からの意見でも同様の結果が得られている。
表
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2−2 医療用
(1)プロブレム別の評価
患者の病名は以下の通りである。
表
これらのケースから、54のプロブレム(在宅患者以外のケースも含む)がリスト
アップされた。回答者の専門が違うため、プロブレムの種類、数ともにばらつきがあ
る。ただし精神面のフォローに関するもの、日常生活動作の確認等は病名と関係なく
リストアップされている。
表
(2)診断機器としての利用価値
各プロブレム毎に、TV電話等が往診や電話と比較して、診断機器としてどのレベ
ルにあるか評価してもらった。結果としては、往診と同レベルであるという評価の「
1」が最も多くなった。このことは往診時においては患者との会話とその際の表情か
ら得る情報、すなわち問診の重要性が非常に高く、TV電話等は問診情報の取得が十
分に可能であることを示している。
「4」と評価されたのは慢性気管支炎の患者に対して、聴診ができなかったケース
などである。特定の病気に依存するプロブレムの場合、より一層高い音声や画像の性
能を求められることがわかる。
今回は1機関のみ、INSネット1500(他はINSネット64)を利用した実
験も行った。INSネット64を利用した場合では、表情の読み取りが時々困難になっ
たり、歩行の様子を見る場合に画像が乱れたりすることがあったが、INSネット
1500ではまったく問題がなかったとの報告がなされている。特に動画像に関する
性能において、INSネット1500を利用すれば、TV電話等の診断機器としての
価値は高まる。
表
(3)チェック項目別の評価
調査票の様式では、記号で記入する方式をとったが、これらを得点に置き換えた。
配点は、直接接するのと同等レベルである◎は3点、診療可能なレベルである○は2
点、診療は不可能だがある程度確認はできたというレベル△は1点、それ以外は0点
とし、評価対象外のものはカウントせず、分野別に平均をとって、どの分野がTV電
話等による遠隔医療に適しているかの評価を行った。
全身、皮膚、問診、眼、口腔、頚部、胸部、腹部、上肢・下肢の9分類で平均得点
を集計した結果、一番高い得点を得たのは問診で、全身状態がこれに続く形となった。
前項での評価にもある通り、医師が診断する場合に問診が占める比重は高く、そのた
めの機器としてTV電話等が有効であることが明らかになっている。
これに対して、口腔、頚部等は得点が低く、対照的な結果となった。現在のテレビ
電話等の画像や音声の処理能力が、これらの診断に必要な情報を伝えるのにはまだ性
能不足であることを示していると言える。
グラフは準備中
表
(4)改良すべき点
医療用調査票であげられた改良すべき点は以下のようなものである。
- リモート及び遠隔カメラで歩行の状況等の運動を全て観察できることが必要である
- 操作性の向上
- ライティング技術とのタイアップで、鮮明度を補完でき、解像度や識別度があがる
- 色調がもう少し良くなって欲しい
- 微細な運動を評価できる画質が必要
- 在宅医療専門の機器として別途設計を行い、双方がもっと利用しやすいよう必要機能に絞るべきであるが、但し、家庭用テレビ電話、会議用テレビ電話との併用を考えるなら、現在の機能のままでも仕方がない
- 患者は寝たきりに近く、ベッドの足元にテレビを置き、足元から顔までカメラで収まるように設置したが、顔の表情などは十分に読み取れなかった(日中一人でベッドにいることがあり、その際は患者一人では動けないため)
- 受話器を持たずに会話ができるようにして欲しい
(5)追加機能として必要な点
以下のような意見があげられた。
- 書画機能;患者へ教科書の写真を通して説明するため
- FAX機能を連結;病名と処方内容の伝達するため
- 画面の明るさを調節できるようにする
- ペンライト風のカメラ
- コンピュータシステムとの連結
- 聴診に必要なマイクの開発
- 体温、呼吸、血圧etc.センサーの同時モニター、カメラを手持ちし(ズーム機能をつけて)患者に迫れるようにすると良い
- 録画機能を持たせ、必要に応じて後から医療スタッフと相談できるようにする
(6)活用すべき分野
以下のような意見があげられた。
- 皮膚科専門医のいない離島や山間部には良い
- 在宅患者、独居老人とのコミュニケーション
- ターミナル患者の訪問看護の補助
- 遠距離間の家族コミュニケーション
- 在宅人工呼吸機器療法中の対応
- リハビリ分野においては専門医不足解消に役立たせるため、老人保健施設、老人ホーム、リハビリ機能を有しない老人病院などでのリハビリ診療や訓練に利用できると思われる
- 問診、患者の心理的な満足の充足
- 教育用のテープ、CD−ROM等を患者に送って、病状の説明ができる
- 高齢者(独居及び高齢者世帯)の福祉
(7)普及させる上での課題
以下のような意見があげられた。
- 経済的有用性としては診療報酬と機器価格、維持管理費が採算が合うかどうか不明で、そのための法の整備が必要
- 社会的有用性としては、福祉医療の面からの検討が必要になる
- 画面の鮮明さ(自然な動きにより近づけること)
- コストが安くなること(通常の電話ぐらいになると良い。)
- 医療者側のバックアップシステム(24H体制)
- 操作性を易しくすること
(8)その他気づいた点
以下のような意見があげられた。
- 飲水量が少なく、どのようにしてヘルパー、家政婦などに飲み込みの訓練指導を行えるかが切実な課題であったが、テレビ電話によって解決された
- 使い方によっては十分に活用される機器である
- 他科のドクターのX線診断装置や内視鏡機器のようなもので、皮膚科医の目も訓練により習熟してきて正診率が向上する
- 相手先医療機関では、周辺地区に口コミで来院する人が多い
- 医師も安心でき、治療が向上している
- 画面に映るからお互いきちんとした格好で電話をしないといけないと思っているのではないだろうか。特に、患者側からすれば電話の相手以外にも自分を見ている人がいるのではと思うと体を露出するということに対して抵抗があるのではないだろうか。話している相手の後ろを人が通っているのを見るとその場の雰囲気が気になるのではないだろうか。
- 1.5Mの伝送速度をサポートするテレビ会議システムは、診断機器としては不十分だが、精神的な満足を与えるコミュニケーションツールとしては大変優れている。今後の高齢化社会における問題は、
- 監視の必要な高齢者を誰がどこで監視を行うか
- 監視や生活支援は必要ないが、何となく不安、何となく寂しい高齢者の精神的な満足をいかに満たすか
の2つだと思うが、これらの問題解決の糸口がテレビ電話システムだと思われる。しかし例えば「バーチャル・同居」のような環境を実現(テレビ電話回線を常時開放)するためには電話料金体系の大改革が必要になる。
- カラーTV電話は白黒TV電話(静止)より格段機能的に高く、有用性が極めて高い
- 2ヶ月弱の借用期間であったが、もっと長く使ってみたかった
- 在宅援助を行う上で、このような問題点をいくつか抱えているケースは多く、家庭での直接指導を行うため、リース制でもテレビ電話の設置が有効であると考える
- 非常に興味深いシステムとして注目しているが、あまりにも高価なので普及させるには対象 を限定しなければ予算が組めないのが残念である。
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2−3 生活支援用
(1)プロブレム別の評価
患者の病名は以下の通りである。
表
生活支援の立場からは17のプロブレムがあげられた。ワーカー等が在宅療養生活
を支援する上で意識するプロブレムは精神面の問題に特に重点が置かれている。
表
(2)生活支援機器としての利用価値
各プロブレム毎に、TV電話等が往診や電話と比較して、生活支援機器としてどの
レベルにあるか評価してもらった。往診と同レベルという「1」の評価こそ少ないが、
「2」「3」に集中しており、生活支援のための機器として利用価値は高いという評
価になっている。往診と同レベルと評価されたのは「生活上の問題の有無の確認」に
使ったケースであった。サンプル数の差もあり、医療用との単純な比較はできないが、
生活支援の場合には、医師の問診よりカウンセリングに近いので、より高度な精神状
態の読み取りが要求されるものと考えられる。
表
(3)チェック項目別の評価
医療用と同様、記号を得点に置き換えた。
集計は、身体、表情、生活環境、介護、家族の5分類で平均し得点を集計した。結
果としては、生活環境の確認や介護状況の確認にはやや難しいとの評価になっている
が、全般的に評価は高い。
グラフは準備中
表
(4)改良すべき点
以下のような意見があげられた。
- 尿量、混濁の状態が観察できる程度の画質がほしい
- 動画像の流れをスムーズにする
- 画質の色調を鮮明にする
- 聴診も可能なように音声性能を上げる
- ボタン操作の簡素化等の操作の利便性向上
- 電源のON、OFFは1つのボタン操作でできるようにしてほしい
- 価格を下げる
- 音声の立ち上がりの改善
- 本体のカラーを明るい色にしてほしい
(5)追加機能として必要な点
以下のような意見があげられた。
- ズーム機能
- 回転台の開発
- 心電図、バイタル(T、P、BP)等のデータも同時に送られると良い
(6)活用すべき分野
以下のような意見があげられた。
- 保健・福祉分野(障害者、高齢者を中心として)
- 一人暮らしの高齢者の安否の確認、心理サポート、孤独感の解消
- 病人を抱えている家族の心理サポート、及び病人の病状把握
- 救急車に備えると患者の状態が分かりやすくなり、移動しながら処置ができる
- 一人暮らし、寝たきり、人工呼吸器使用中など通院が困難な人
- 交通の便が悪く医療機関のないような地域での利用
- 耳の不自由な人
(7)普及させる上での課題
以下のような意見があげられた。
- 費用(機器、回線設置料など)
- 操作性
- まだ病院や地域で今回の実験でのやり方等につき、その必然性の認識・意識の欠如がある為、普及以前の問題がある
- 一般の電話回線には接続できないこと(新たに工事が必要なので面倒)
- 光ファイバーの電話回線の普及(高画質)
- 24H対応できる場所(例:病院)
- プライバシーをどのように保護していくかが問題
(8)その他気づいた点
以下のような意見があげられた。
TV電話では話せないこと、家族の関わり方、介護負担の軽減を計るため、ケアを家族と一緒に行うこと、時には愚痴を聞くことや訪問も必要と思われる
- プライバシー保護のため、観察が困難なことがある
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2−4 利用者用
(1)利用者のプロフィール
回答者は在宅療養者本人が7名、在宅療養者を介護をしている人が12名となって
いる。
表
(4)話したい相手
話したい相手として最も多くあがったのは「家族」であった。その他以下のような
名前があがっていた。
表
(5)通院、往診、訪問看護等の回数を減らせるか
電話と比較するとやはり相対的に、「効果がある」という回答が多い。しかしこの
後に出てくる他の効果と比較すると、若干通院、往診、訪問看護の回数削減効果に対
して、それほど期待は大きくないと考えられる。
またサービス提供者側がかなりこの効果を強調していたのに対して、利用者側の意
識はそれほどではなかった。往診や訪問看護が減ることに対する患者の不安感が読み
とれる。
表
(6)健康に対する不安感を軽減できるか
この効果については、はっきりと読みとれる結果となった。電話と比較して、かな
りの安心感が得られることが強調されている。
表
<自由意見>
- 体調が悪く心配なとき安心
- 診察を受けている感じがする
- 先生に毎日のようにお会いできるので大変心強い
(7)社会からの疎外感・孤独感の解消になるか
効果については肯定的な意見が多いものの、前の設問と比較するとやや評価は低い。
これはまだ通信先が病院等の施設に固定されており、アクセスできる先が限られてい
るためと考えられる。
表
<自由意見>
- TV電話では相手の人の表情が画面に出て、応援していてくれる安心感がある
- 先生から頂く電話が楽しみで、ベルが鳴ることで非常に安心する
- 安心感はある
(8)病状の変化への対応を早められるか
この効果についても、有効性を高く評価する回答が多かった。症状の変化に対して、
往診や通院を待つまでもなく、医師が対応できるメリットはやはり非常に大きいと言
える。
表
<自由意見>
- 電話より先方の姿が見えるので安心感がある
- 一日の状態が家にいても話が出来るのは大変心強い
(9)その他の効果に関する意見・感想
<電話の場合>
<TV電話等の場合>
- 具合の悪い時、テレビ電話だと顔色が見ていただける
- 顔(主治医)がみれることの安心感
- 上下肢の運動が見てもらえる
- えん下など直接の訓練指導をしてもらえた
- 自力で自分の顔色等もよくわかる
- 視力が弱いため写真など拡大して見ることが出来る
- 使用期間が短く、判断しかねる
- もっと長い期間使ってみたかった
- 今後も是非活用したい
(10)操作性に関する意見・感想
操作性については意見が分かれた。患者の症状の重度や実際に操作するのが患者か
介護者かによってかなり状況が異なるようである。
表
<自由意見>
- 必要な操作は何とか出来る
- 操作について多少心配であったが、マスターすることが出来た
- 急を要するときは操作が出来るかわからない
- 患者本人には困難が多かった
- ボタンを一つ押すだけなら、簡単でよい
(11)画像の鮮明度に関する意見・感想
画像に関しては、比較的良好な印象を与えている。
表
<自由意見>
- 画像は割合良かった
- もう少し明るさがあったらいい
- 映像がきれいでよく見える
(12)動画像のなめらかさに関する意見・感想
動画像については、やはりコマ数に関する注文があげられた。INSネット
1500での実験では、この問題はかなり解消されたとの、医師からの意見もあった。
表
<自由意見>
(13)画面の大きさに関する意見・感想
画面の大きさについても特に不都合といった意見は出されなかった。
表
<自由意見>
- 先方の顔がハッキリと見えるので良い
- 操作により大きくも小さくもなるので特別支障はないと思う
(14)機器の重さに関する意見・感想
今回の実験で使用した機器の中で、TV会議システムの場合は特に重いものなので、
設置場所等に苦労したケースもあった。D及びEの回答のうち2件はTV会議システ
ムである。
表
<自由意見>
- 機器の重さは丁度良い
- 永久的に使用したいが、設置場所について考えたい
(15)音質に関する意見・感想
音質については、基本的に話が出来ればよいというスタンスであったため、医療の
立場からの評価に比べると高い評価になっている。
表
<自由意見>
- 直接話すのと変わらない
- 受話器を使用せずに会話が出来て良い
- はっきりと聞き取れる
(16)追加機能に関する意見・感想
特にこれ以上の機能は希望しないという意見もいくつかみられた。在宅での療養生
活に対する不安感の強さを反映してか、緊急通報の機能については希望する人が非常
に多かった。
表
<自由意見>
(17)継続利用の希望
今後の引き続き利用したいと考える人がほとんどであった。しかし使いたくないと
答えた人も1名いた。理由としては操作が煩わしく、それに見合うだけの効用も得ら
れないということであった。この患者は社会からの疎外感、孤独感の解消効果につい
ても評価が低く、また操作性に対する評価も極めて低かった。また医師とのつきあい
の長さも他のケースと比較すると短い。
このようにすべての患者にとって、TV電話等は手放しで歓迎されるものではなく、
ひとりひとりの身体の状況等によっても差異があることを示している。
表
<自由意見>
- これより先も引き続き利用したい
- 状態の悪いときは面倒と思うことがある
(18)その他自由意見
- 呼出し音が小さく、聞き取りにくい
- 移動に対してのズーム機能があると良い
- 急に具合が悪くなったときに操作が難しい
- 必要なときに利用できるリース制の導入
- 不自由な体にはとても有り難い
- 先生に大変お忙しい思いをかけており心苦しいが、心の支えとして今後ともよろしくお願いしたい
- (医療者側の)バックアップシステムを充実させて欲しい
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