「21世紀に向けた大学病院の在り方について」

(21世紀医学・医療懇談会第3次報告)の概要

戻る


T 経 緯
大学病院における医療提供、臨床医学研究、医師やコ・メディカル・スタッフの教育研修のそれぞれについて、時代の変化に対応した在り方の検討が必要であるため、平成8年10月から、21世紀医学・医療懇談会に教育病院部会を設けて議論を進めてきたが、現時点までの議論の結果をとりまとめ、報告するものである。

U 報告の概要
1.大学病院に期待されるもの

医療の質の向上や患者本位の医療の提供への要請、これらを担う医療人の育成やチ−ム医療への要請、高度医療の開発・提供への期待、国際化の進展、医療構造改革の動向等の状況の中で、大学病院に次のような役割が期待されている。
(1) 教育・研修について
医療人育成における実習・研修の充実を図ること。
(2) 研究について
難治性疾患の原因解明や新しい診断・治療方法の開発、既存の診断・治療方法の科学性、有効性の検証等の研究を一層進めること。
(3) 医療について
患者本位の立場に立ちつつ、地域の中核的医療機関として高度医療・先端医療の提供に努めるとともに、地域医療機関との連携を進めること。

2.21世紀に向けた大学病院の基本的な考え方
(1) 「教育病院」としての大学病院

大学病院は、医師・歯科医師の卒後臨床研修について中心的な役割を果たすとともに、コ・メディカル・スタッフの実習にも積極的に対応すべきであり、広く医療人育成を行う「教育病院」として従来の教育・研究・医療の機能に加え、医療人に対する研修・実習機能を新たな柱として充実を図ることが必要であり、必要な経費等の措置について検討するべきである。
さらに、関係各方面の理解を求めつつ、大学病院を医療制度上「教育病院」と位置付けるとともに、研修・実習経費について保険制度上配慮することも検討する。
(2) 高度医療の研究・提供に当たる病院としての大学病院
高度医療の開発・提供の機能を充実するため、研究費の充実や医療保険上の「特定機能病院」制度における一層の配慮が望まれる。

3.大学病院への期待に応えて−現状と当面の課題
(1) 教育・研修について

@ 医師・歯科医師について卒前実習の改革を行うとともに、卒後臨床研修 について、ロ−テイト方式の導入等のプログラム改善と公表、各種施設と の連携、病院内の実施・評価体制の整備等を行う。
A コ・メディカル・スタッフについては、実習についてすでに相当の受入 れが行われているが、養成数増や期間延長等に対応した受入れに努めると ともに、卒後研修についても要請に応えていく。
B これらの対応に当たっては、指導体制、施設、指導に要する経費、医 師・歯科医師における研修医の処遇等の条件整備や大学病院とコ・メディ カル・スタッフ養成学部の連絡・協力体制の整備を図ることが必要。

(2) 研究について

@ 大学病院では、疾患の原因解明、新しい診断・治療方法の開発など活発 な臨床研究活動が行われているが、引き続き推進することが必要。特に先端的な医療研究の推進のため、国立大学における高度先進医療開発経費の充実や科学研究費補助金における配慮が望まれる。
A 医薬品等の臨床研究(治験)については、大学病院の社会的使命として 実施する必要があり、近時整備された基準に従い、必要な体制も整え、適 正に実施することが必要。
(3) 医療について
@患者本位の医療の推進
患者本位の医療の実現のため、以下の点について引き続き推進すべき。
・ 診療科の系統別又は臓器・疾患別の再編成や総合的診療部門の設置
・ インフォ−ムド・コンセントや服薬指導での情報提供
・ 医療情報システムの充実による病院業務の合理化、効率化、正確化、 患者の待ち時間の短縮
・ 他の医療機関との間の患者紹介などの連携
・ 施設面における患者アメニティ−の改善に配慮した整備
・ その他、ボランティアの参加も得た相談・案内体制、院内学級開設、 入院患者への図書サ−ビスなど
A高度医療の提供と先端医療の導入
・ 引き続き地域医療の中核として高度医療・先端医療の開発・提供に努める。
・ 難病対策の拠点としての役割も引き続き重要。
B地域医療への対応
・ 地域医療機関と情報ネットワ−ク化等による協力が望まれる。
・ 老人保健施設等の設置による長期療養者等のケアや終末期患者の緩和 ケアなど新しい分野を開拓する多様な在り方も検討されてよい。

(4) 大学病院の運営について

病院長の任期の長期化・専任化の検討や多様な人材の登用による補佐体制の整備、医療技術職員の業務の検討、経営専門職員の養成、マルチメディアを活用した管理システム構築などが課題。

(5) 大学病院の特性等に関する広報等について

教育・研究機能を有する大学病院の特性等について、患者や国民の理解を 得るため広報活動が必要。また、本報告提言事項の実施状況等について、大学病院として適切な評価 を行うことが望まれる。
戻る