衛星を通じて日本全国に医療の画像、それも高精彩のハイビジョン画像を送り、大学病院間で相互に検討できる時代がやってきた。
MINCS−UH、大学病院衛星医療情報ネットワークは、世界で初めての衛星通信とデジタルハイビジョンによる大学病院間のコミュニケーションシステムである。
MINCSの設備は、まず全国8大学病院に導入された。その設備は衛星への送受信のための機器をはじめとして、
手術撮影用ハイビジョンカメラ
画像を記録するためのビデオなどの機材
ビデオモニター
大型のハイビジョンプロジェクター
鮮明な画像で大勢の人々が一度に画像を見ることができる。
そのコントロールパネル
X線写真やスライドなどをプロジェクターに投影する書画カメラ
撮影したハイビジョン映像を編集する編集機
移動型のカメラ
マイクロサージェリー用のカメラ
各病院毎の目的に応じた機器が納入されている。
MINCSのシステムでは、ハイビジョン画像は暗号化されて、衛星に打ち上げられる。暗号解読用の鍵の配布は制御用コンピュータが行うので、制御用コンピュータに接続されていないと暗号を解読することはできない。
医療にかかわるプライバシーの保護にも十分な配慮がなされているのである。
またMINCSは、双方向のシステム。従って、遠隔地から質問をする等のやりとりも可能である。
毎日、衛星放送されているハイビジョン番組。これはアナログ方式である。
一方、MINCSに導入されたハイビジョンはデジタル方式。デジタル信号になったハイビジョン画像はコンピュータで処理することができる。
例えば、MINCSなら大容量、高精彩度の画像情報を高速で送受信できる。今後、充実していくに違いない医療画像データベースの利用も容易になるだろう。
MINCSは大学病院間コミュニケーションにまったく新しい時代を開いていくであろう。MINCSによって何が可能になるだろうか。
例えば、遠隔講義。どこの大学で行われる講義にも各地の大学から受講ができるしくみができたことになる。
最新の術技による手術
MINCSによって中継された画像。
ハイビジョンの高精彩な画像によって、遠く離れていても、その場にいるような効果で手術を学ぶことができる。
遠隔地合同カンファランス。
MINCSなら高精彩な画像によって行うことが可能になる。
同様に病院長会議、事務部門の会議なども各大学病院にいながら行うことが可能になる。
阪神大震災のような災害はいつどこでもおこりうる。大学の多くは、災害時の非難先に指定されており、地上の通信回線が被害をうけても、MINCSなら緊急時の重要な情報手段となるだろう。
これは遠隔病理診断の一コマ。病理画像は遠く離れた病院から病理の専門医のいる病院へ通信回線を通して送られてきたものである。このような遠隔医療は、専門医の少ない地域医療に大きく貢献すると期待されている。MINCSが今後もっと多くの大学病院に普及していけば地域医療に対して大いに力を発揮するに違いない。
MINCSは当面8大学病院から出発したが、やがては全国の国立大学病院へと広がっていくことになるだろう。
その時、大学は横断的な1つのキャンパスを実現することになる。