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UMINの20周年に寄せて

奈良県立医科大学健康政策医学講座教授
元東京大学医学部附属病院企画経営部長
今村 知明


 UMINの設立から20年を経たと聞いて感無量です。また、木内先生や歴代の担当者の方々のご努力に心から敬意を表したいと思います。
 私がUMINと出合ったのは、平成元年に当時、開原先生が部長をされていた中央医療情報部に大学院生でやってきたときでした。まさに、そのときには木内先生も同じ大学院におられまして、これが奇遇にも同じ部屋でしたので、毎日夜遅くまでご一緒させていただいておりました。その様な折、「UMIN」というものがあるらしい、それも卒業写真とかを歌ったユーミンとは何の関係もなくシステムの名前らしいとの噂を耳にしました。そのころ専任としておいでになったのが、北海道大学医療情報部にて教授をなさっていた櫻井先生でした。それはそれは温厚な先生でして、世の中にはこんなに「良い人」がいるんだなあ、と感動しておりました。さらに櫻井先生のところのスタッフで、渡さん、松本さんなどの優秀な方々が加わり中央医療情報部が大変にぎやかになっていったのを昨日のことのように覚えております。
 ちなみに、渡さんは現在もUMINのスタッフとして頑張っておられますし、松本さんも名前は変わりましたが、旧中央医療情報部(現UMINセンターと企画情報運営部)とは知る人ぞ知るただならぬご縁になっておられます。
 その後、私は、大学院を卒業して、当時の厚生省へ医系技官として入省しましたので、もうUMINと接点も無いかなと思っていましたら、意外や意外、10年ほどしましたら東大病院へ舞い戻ってきました。そのときの東大病院は、法人化、研修医の義務化、包括医療の導入で大学始まって以来の未曾有の大混乱の時期でもありました。その中で私は病院の経営財政を担当させて頂きまして、法人化に伴って、東大はどうなるんだ、病院はどうなるんだ、UMINはどうなるんだとの調整を行うことになりました。何故、UMINが問題になったかというと、法人化に伴い、特に大学病院は事実上の独立採算を求められることになった訳ですが、UMINのように東京大学のためというよりは日本全体のためにやっている事業はどうするのかとの問題が生じました。さらに、UMINの予算は大学病院に所属していたのですが、この頃東大病院は資金繰りが極めて悪く、いつ倒産状態に陥ってもおかしくない状況でした。その様な状況ですので、病院の他の予算を査定しまくっていたのですが、当初、文部科学省はUMINのような全国への貢献事業は「全額、国持ちだ」と言っていたので、減額の対象外として別枠扱いをしていました。それがその予算が、直接の補助金ではなくなり大学への運営費交付金へまとめられてしまって、さらに運営費交付金の削減の対象にもなってしまいました。これも複雑だったのですが、国からは「この費用は削減の対象外だ」と聞いていたのですが、実際の削減式ではどう考えても削減の対象に入っていて、最後は「この費用は削減の対象外のつもりで積算しているので他のものを削減してくれ」との意見に変りました。すると他のところは、何でUMINだけが査定の対象から外れるのかとの不満が続出し、「ついに減額やむなし」との結論に至り、木内先生にお伝えすることになりました。UMINの運営費は大半が開発費と人件費で成り立っているので、減額は即、開発をやめるか、生首を飛ばすかの話に直結するので酷い話です。そのときの木内先生の困りきった顔を今も忘れることが出来ません。(木内先生すいません。先生が憎くてやったわけでも、私が望んでやったわけでもありませんので、平にご容赦を) その後、木内先生と長く暗いトンネルをともに歩いて行くことになりました。復活交渉、挫折、復活交渉、挫折を繰り返すこととなり、当時の東大病院の予算係長だった比田井さんと木内先生と私と3人で黙って腕組みをしたまま、永遠とも思える沈黙の時間をどれだけ過したことか。正味隠れたUMINの存亡の危機だったと思います。それから木内先生をはじめとする、様々な努力と工夫の結果、何とかその年度内の運営費を確保し事なきを得ました。その後、東大病院の運営も持ち直し、あまり硬いことを言わなくなったことと、予算としては医学部側との調整予算となったことなどから、この危機はなんとか乗り切ることができました。
 いま、思い返してみるとなんと罪深いことをしたことかと思いますが、東大病院そのものが法人化という新しい時代を迎えた黎明期だったと思いますし、苦しんだ分、大きく飛躍することができたと信じております。
 私は今、地方の県立医科大学におりますが、ここでもUMINの存在感の大きさをひしひしと感じております。また、既に無くてはならない存在なんだとの実感があります。
 これから、UMINが更なる発展を遂げられることを期待します。