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看護小委員会活動報告

UMIN看護小委員長
東京大学医学部附属病院看護部長
榮木 実枝

1.はじめに

 大学病院医療情報ネットワーク(以後 UMIN)は平成元年3月に発足し、平成2年から看護小委員会は活動を開始している。
 UMINのサービスは、1.最新の医学・医療事情の提供 2.大学病院間の作業の共同化 3.医学・医療上の交流の支援 4.医学研究の支援 5.データの標準化と諸統計の整備の5つの目的が掲げられている。その目的に基づき「国立大学病院の看護業務の効率化と質向上に資するためUMINを利用することにより、各大学看護部間での情報交換をスムーズにできる可能性を検討し実施への準備を行う」事を看護小委員会の活動目的とした。そしてUMINの利用方法として 1.各大学看護部の実態調査をUMIN上にのせる。2.国内看護文献データベースを提供する。3.標準看護計画を提供する。4.看護技術システムを開発する。
 5.物流システム等事務部門等の他部門との関連事項について協力する。の5項目について取り組むこととなった。
 平成4年度以降は、各大学病院の看護情報の電子化が急速に進み看護業務の電子化が定着した。それに伴い国立大学病院医療情報処理部門連絡会議への看護職の参加が増加していった。平成8年度にはUMIN看護小委員会ホームページが開設され、看護部長会議の年間行事予定、特別委員会の課題等を公開し看護関連サイトを設け関連省庁や看護協会にアクセスできるようにもなった。
 当委員会が活動を開始した平成2年から10年までの活動報告はUMIN10周年記念誌に纏められていることから、平成11年から20年までの活動を報告する。


2.平成11年度から20年度までの活動状況及び内容

(1)看護小委員会ホームページ
 平成8年度より開設され、看護部長会議の年間行事予定、特別委員会の課題及び委員名簿等を公開するとともに、看護関連サイトを設け文部科学省、厚生労働省、看護協会のホームページにアクセスできるようになっているが、看護部長会議の年間行事予定、特別委員会の課題等の看護部長会議関連の内容は平成15年度以降更新されていない。ホームページは掲載する内容の確認・更新等の管理運営について責任の所在を明確にしないと維持が困難であることを実感している。
 各大学看護部長及び副看護部長毎に官職指定アドレスを設定し、情報伝達やメール交換を容易にするためのUMIN利用環境の整備は、毎年東京大学が事務を担当し更新しており、種々の情報を全国の看護部長に発信し、メーリングリストの活用はできている。

(2)看護部関係データ収集システムの運用
 毎年7月1日に国立大学病院看護部実態調査(常置委員会担当)を実施しているが、平成10年度からこの調査を各大学の端末からUMIN上で直接データを入力する事とした。このことにより集計作業の省力化とUMIN利用がより実用化された。しかし、この調査結果を看護部長会議としてあまり活用してこなかった経緯があった。そこで平成16年度の国立大学の法人化を契機に、法人化が国立大学病院の看護の質にどのように影響していくかを、国立大学病院独自の質評価指標として継続調査していくこととなった。看護の質評価指標とする内容は、平成15年度まで実施していた看護部実態調査の項目を見直し構造指標とし、アウトカム指標には診療報酬に組み込まれ測定基準のある褥瘡の発生率を位置づけた。調査の表題は「看護の質評価指標の測定調査」とした。目的を「国立大学法人化や包括評価が看護の質にどのような影響を及ぼすかを継続的に調査し、各国立大学病院及び国立大学病院全体の看護の質改善に資する」とし、平成16年度から新たな調査を開始した。
 16年度の調査から、これらのデータは国立大学病院の看護の質改善にとどまらず、看護体制に関する診療報酬上の評価や、日本看護協会、厚生労働省等が主催する看護・保健医療制度等の検討会や委員会等に本会から参加した時に、国立大学病院看護管理者として公に提供できる資料となること、タイムリーに正確なデータを提供していくことが将来の看護制度や医療制度改革に貢献できることであるとの共通認識を図り、調査項目・内容の見直しを行った。この結果、平成18年度の診療報酬改定で新設された看護師配置基準7:1取得のための全国立大学病院の看護師必要数がタイムリーに算定でき、第58回国立大学病院看護部長会議(平成18年5月18日開催 当番校 高知大学)で提起されたアクションプランの決議に繋がった。
 平成17年度から、常置委員会担当の特別委員会は廃止され、関東甲信越地区が特別委員会B委員会のなかで継続して調査していくことになり、東京医科歯科大学が委員長となった。
 平成19年度からは、文部科学省高等教育局医学教育課大学病院支援室が実施していた調査や病院長会議で実施していた調査の一元管理を図る目的で、国立大学附属病院長会議の下にデータベースセンターが設置され、看護の質評価指標の測定調査もそのデータベースセンターの管理となりUMIN上でのデータ収集は中止となった。データは、タイムリーに要望等へつなげられるように早い時期での実施が必要となり、調査日は7月1日から6月1日に変更になった。 18年度までの各大学の調査結果と全国の集計結果はUMINで参照できるようにな   っている。

(3)MINCSの積極的利用
 国立大学病院では、各大学病院間で診療・教育・研究の推進を図るために平成8年度にMINCSを導入し、最先端のハイビジョン映像によるネットワークを構築した。順次導入大学病院が整備され、平成11年度に30大学に拡大されたことを契機に看護小委員会でも看護職員の教育等に積極的に活用することが検討された。看護部関連の番組件数は平成10年度6件、11年度6件、12年度8件、13年度3件、14年度1件、15年度3件の合計27件であった。具体の番組名と主会場は以下のとおりである。


平成10年度
6月22日 「クリティカルパスウェイ(総論)」(東京大学)
6月30日 「クリティカルパスウェイ(導入と評価)(東京大学)
10月29日 「大学病院を巡る社会の動向と看護の課題」(東京大学)
12月18日 「看護と薬剤部の連携」(金沢大学)
1月 7日 「治験と看護」(東京大学)
1月 8日 「患者看護支援システム」(北海道大学)
平成11年度
7月28日 「情報開示と看護」(東京大学)
11月15日 「感染コントロールの重要性と看護管理システムの構築」                          (東北大学)
12月 8日 「ネットワーク社会への看護のチャレンジ」(鹿児島大学)
3月 1日 「診療情報開示と看護記録監査の取り組み」(筑波大学)
3月14日 「病院再開発計画に沿った看護業務の変革」(徳島大学)
3月21日 「地域に根ざした継続看護の実践活動」(弘前大学)
平成12年度
10月24日 「徳島大学医学部附属病院におけるクリティカルパスウェイについて」(徳島大学)
11月22日 「看護記録のシステム化とその評価」(高知大学)
 12月 7日 「国際看護学セミナー」(三重大学)
1月29日 「看護情報における画像情報の役割と色の重要性」(鹿児島大学)
3月 7日 「メイヨークリニックにおける医療事故防止と質改善の取り組み」                                (東北大学)
3月23日 「病院内における感染管理システムの構築と看護部の果たす役割」                                (東北大学)
3月27日 「地域とともにおこなう臨床看護研究の試み」(岡山大学)
3月29日 「看護の実践が見える記録の取り組み」(島根大学)
平成13年度
9月27日 「徳島大学医学部附属病院における目標管理の実際」(徳島大学)
12月10日 「PPC看護体制における看護業務の特性分析」(筑波大学)
2月19日 「医療福祉支援センターを基点とした医療連携と看護」(信州大学)
平成14年度
12月13日 「検査部と看護部の業務連携」(金沢大学)
平成15年度
2月13日 「看護支援システム全面導入の経過」(金沢大学)
2月23日 「ISOで看護が変わる」(徳島大学)
3月30日 「北大病院における患者看護支援システムについて」(北海道大学)

 当時の番組を見ると各年代の課題を思い出すことができる。MINCSの活用で各大学の看護部の活動が共有化できたと同時に、大学独自の取り組みを発表しあい、各大学が切磋琢磨し、国立大学病院看護部の質向上に努める事ができた。
 また、東京大学主催で著名な講師の講演会等を開催し全国の国立大学病院間で共有できたことは大きな成果であった。
 しかし、そのMINCSもインターネットの急速な普及、機器の老朽化、多大な経費負担、操作性の困難さにより、平成17年度にその役割を終えた。MINCSに代わる国立大学病院間のネットワークとして、インターネットによるテレビ会議システムの導入が平成18年度から国立大学附属病院長会議で検討され、平成20年4月

(4)国立大学病院看護部長会議ホームページの開設
 平成16年度から国立大学病院は法人化され、各法人の裁量で定員管理が行われることになった。その後、平成18年度に診療報酬の改定があり、急性期入院医療の実態に即した看護師配置の適正な評価として看護師配置基準7:1が新設された。その取得のためには42国立大学病院で4,611人の看護師が不足であったが、急性期医療を担っている国立大学病院だからこそ、この看護師配置基準の取得は必要であった。国立大学病院が良質の医療・看護を提供していくためにも看護師の質・量の確保に向けて国立大学病院看護部長会議として組織的な広報活動を行い、全国の学生や社会に向けて看護部の組織をアピールするとともに、理解が得られるように努めていく必要があることが議論され、第58回国立大学病院看護部長会議で看護師確保のための5項目のアクションプランが決議された。そのアクションプランの一つである広報活動として、国立大学病院看護部長会議の外向けのホームページを立ち上げる事を決定し、そのサーバーをUMINに置くこととなった。このホームページの管理・運営については関東甲信越地区担当の特別委員会B委員会で担当することになり、千葉大学が委員長となった。アクセス件数は、18年度(6月〜3月)46,266件、19年度(4月〜3月)85,117件と件数は年々増加している。


3.歴代委員長

 平成10年度から看護部長会議常置委員会が看護小委員会を担当し、常置委員長が委員長となることが全国国立大学病院看護部長会議の申し合わせで承認された。

 歴代委員長は以下のとおりである。

    平成 2年5月4年6月 小島 通代看護部長(東京大学)
    4年7月 6年3月 中原 千恵子看護部長(京都大学)
    6年4月 10年3月 森山 弘子看護部長(東京大学)
    10年4月 16年3月 入村 瑠美子看護部長(東京大学)
    16年4月 榮木 実枝看護部長(東京大学) 

4.今後の課題

 UMINを活用して実施していた看護の質評価指標の測定調査が、国立大学病院長会議の下に設置されたデータベースセンターに移行したこと、MINCSの利用が終了しインターネット会議システムに変更になったことにより、UMINの利用がやや低迷している。今後は各大学がインターネットテレビ会議システムを積極的に導入し活用するための取り組みが必要と思われる。操作は簡単であり看護部長間でも顔を見ながらの打ち合わせ等が気軽にできるようになると思われる。カメラ、マイク等の備品の整備を各大学が行い、各大学内でも積極的な活用が望まれる。
 また、今後は広報活動への取り組みが重要な課題であり、第58回国立大学病院看護部長会議で決議されたホームページの充実にむけて、国立大学病院長会議とも連携をとりながら、広く社会へ向けて国立大学病院の存在と活動等をアピールするための取り組みが必要と考える。
 当委員会発足当時のUMINの利用方法として掲げられた5項目については、現在利用されなくなっているが、大学の法人化により各大学の独自性が求められたことやインターネットの普及でUMINの利用も変化していくものと考える。