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祝 辞

日本医学会会長
自治医科大学学長 
高久 史麿

 大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)設立20周年を迎え、心からお祝いを申し上げます。UMINは、当初国立大学病院のネットワークとして、設立されましたが、現在では、事実上、すべての医学・医療関係者にそのサービスが開放されており、その便利な情報サービスを活用するために非常に多くの医学研究者、医療従事者がUMINに利用登録しています。私が会長を務める日本医学会加盟の学会の他、多くの学会がUMINの御世話になっていることは皆様ご存知の通りです。現在では、医学・医療関係者には、UMINの名前を知らないものはいないと言っても過言ではないと思います。
 思い起こせば、20年前のUMINの設立時に、私は、当時東大病院中央医療情報部におられた開原成允教授に依頼され、東京大学医学部長として、設立記念式典で関係者にご挨拶を申し上げました。このことを昨日のように思い出すとともに、月日の過ぎることの早さをあらためて感じています。私たちの世代が若い頃はコンピュータを日常的に使う習慣もなく、コンピュータが苦手の人が大半でした。私もご他聞に漏れずコンピュータはあまり得意ではありませんで、UMIN設立当時は、私自身UMINの役割や意義、ましてやその将来性について、必ずしもよく理解していたとはいえませんでした。また情報システム、インターネットが今日のように広く普及し、UMINが日本の医学界において、現在のような大きな役割を果たすようになるとはまったく予想していませんでした。あらためて、設立者の開原先生の先見の明に驚いている次第であります。
 UMINといえば、多くの人が思い浮かべるのが演題登録システムです。年間500以上の学会が御世話になり、累積演題数が120万件以上に達しているとお聞きして、驚いています。諸外国でも、同様のインターネットの演題登録システムがありますが、多数のシステムが並立しており、ひとつのサイトだけで、国内の大部分の学会演題登録システムを運用するUMINのようなシステムは類例がないそうです。UMINの演題登録システムにより、演題は登録時点で即時に電子化されます。また演題採択時には即時に電子的な検索が可能になります。このようなインフラは他のどこの国も持っていません。UMINが演題登録システムを稼動させた1997年以降、日本の医学系学会の多くは、同じ電子化フォーマットで大量の抄録・書誌情報を蓄積しています。紙に印刷されたデータを電子化する為の手間・経費を考えるとUMINの演題登録システムは医学界への莫大な貢献だと私は考えています。このことに対して、日本の医学会を代表して、UMINに感謝の意を差し上げたいと思います。
 又最近話題になっている卒後の臨床研修ではその評価が重要ですが、このための情報システムとして、オンライン臨床研修評価システム(EPOC)が幅広く使われています。非常に大規模なシステムですが、これが安価な料金で高い信頼性で使えるのも既存のUMINのサーバ、ID、運用・管理体制等のインフラを活用することのメリットであります。歯科の臨床研究においても、UMINを用いて同様な臨床研修評価システムを運用中と聞いていたく感服しました。
 国立大学の法人化、運営費交付金削減等で国立大学は揺れています。情報システムの運用には、安定したインフラが必要であり、こうしたインフラの構築・維持には、期限付きの研究費・一時的な外部資金等はなじみません。今後全大学が必要とするような情報システムの構築には、UMINのインフラの活用が一層望ましいと思います。こうしたインフラの維持のため、文部科学省、東京大学を始めとする関係者の方々の一層の尽力をお願いして、祝辞とさせていただきます。