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ご挨拶

東京大学医学部附属病院長
武谷 雄二

 本院大学病院医療情報ネットワーク研究センター(以下UMINセンター)で御世話させていただいておりました大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)が、本年度で20周年を迎えることになりました。国立大学病院は、原則として自分の病院のための診療科・診療部門しかもっておりませんが、例外として、本院UMINセンター、名古屋大学医学部附属病院中央感染制御部、大阪大学医学部附属病院中央クォリティマネージメント部の3つの部門が全国の国立大学病院の共同利用のために存在しています。後二者は、自分の大学の業務を実施する役割と、全国国立大学病院の共同利用部門としての役割を両方持っています。全国の国立大学病院の共同利用専門の部門は、本院UMINセンターが唯一の存在となっています。 UMINは当初国立大学病院用の専用ネットワークとして発足しましたが、現在では、インターネットを介して、研究、教育、診療、病院運営・管理を広くカバーする40以上もの多種類の情報サービスの運用を行うセンターに成長しました。その利用登録者数は30万名を超え、月間のWebアクセス件数も4,000万件を超える等、アカデミックな医療情報サービスとしては、世界でも類をみない規模に成長しております。私は、偶然にも前回10周年の記念式典の際も本院の病院長としてご挨拶をさせていただきました。その時点での利用登録者が約2万名、月間のWebアクセス件数が約200万件と聞いて、当時、UMINのサービスの規模や利用の多さに驚いた記憶があります。今回、10年前と比較して、利用登録者数が約10倍、月間Web件数で約20倍となったとお聞きし、その驚異的なまでの利用の拡大に再び驚かされました。このような大きな発展を遂げることができたのは、ひとえに多くの医学・医療関係者の皆様の暖かいご支援・ご協力のおかげと感謝しております。
 UMINは、国立大学病院の共同利用施設として設立されましたが、現在では幅広く多くの医学・医療関係者にサービスを実施しています。各大学毎、研究施設毎にバラバラに各自のサーバを設置し、システム・データベースを開発するよりも、全大学病院が共同して、情報サービスの運用・構築を行う方がはるかに効率的です。またセキュリティ保護、信頼性の確保の点でも、小さな情報センターはコスト的に不利です。UMINの医学研究データセンター、演題登録システム、医科及び歯科のオンライン臨床研修評価システム、臨床試験登録システム等のサービスの多くは、UMINという1つの大きなセンターがインフラとして存在していたからこそ、初めて可能となったサービスです。勿論、各大学病院等で独自で知恵を出して、独自の情報センターということも可能ではありますし、学問の自由というのも大学ならではの特長です。しかしながら、効率性、運用の信頼性・安定性においては、デメリットがあります。各大学で知恵を出しつつ、協調して、共同利用の情報システムの構築・運用ができるのであれば、それは全大学病院のメリットとなります。こうした全国共同利用情報サービスのプラットフォームとして、UMINをご活用いただければ幸いと存じます。私の専門とする産婦人科領域でも、UMINで癌や出産等の症例登録を実施しています。このプロジェクトは、前向きに半ば永久的に該当の症例データ収集を行い、経時的な変化等を分析するものです。通常の研究費は、3年、5年という期間を区切られ、長期の継続的なデータ収集には向いていません。10年、20年という中長期的なデータ収集に際して、公的なデータセンターとしてのUMINのメリットを痛感しています。またUMINの医学研究データセンターでは、80-90程度の運用中のプロジェクトで月間2-3万例の症例登録があるそうですが、これを1名のオペレータと1名のシステムエンジニアで運用しているということで驚きました。ITに素人の私が必ずしもよく理解できているわけではありませんが、IT分野ではシステム構築に労力・費用がかかるけれど、一度システムが安定稼動してしまうと運用コストはあまりかからないということです。郵便やFAXでデータを処理していたら、2名で月間2-3万例もの症例数を処理できるはずがありません。IT活用というのは、こういうことなのかと感じ入った次第です。
 UMINへの医学界における期待については、十分承知しているつもりでおります。今後も、本院として、全国の医学・医療関係者を支援するという活動に最大限のバックアップをはかっていく所存でおります。医学・医療関係者各位からも一層のご指導・ご協力をお願いいたします。