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東京大学よりのご挨拶

東京大学総長
小宮山 宏

 大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)設立20周年本当におめでとうございます。UMINについては、東京大学医学部附属病院の中に設置された全国共同利用施設で、多くの利用者があることは存じ上げておりました。今回、その具体的な活動内容等について、関係者よりお話をお聞きして、その利用者・利用件数の多さと研究、教育、診療等に渡る情報サービスの提供範囲の広さに改めて敬服の念を抱きました。運用開始から20年に渡る東京大学医学部附属病院関係者の努力に敬意を表するとともに、今まで暖かいご支援をいただいた文部科学省、全国国立大学病院関係者をはじめとする全国の医学・医療関係者の皆様に、東京大学として大きな感謝の意を表したいと思います。
 少子高齢化が進む中で、社会保障、医療、介護の充実の必要性が高まっていますが、これらを含め、高齢者がよりよく過ごせるような社会をつくることが、国にとっての大きな政策的課題となっています。これに伴い、多くの学問分野で、高齢者の住みやすい社会を円滑に効率よく実現するための方策が重要な研究課題となっています。具体的には、年金や医療・介護保険制度のための政策・法整備に関する研究及びそれらの経済学的評価、慢性疾患を中心とした疾病の診断・治療法及び医療機器の開発研究、介護用機器・住居設備等の開発研究、老年心理学・社会学、死生学、診断・治療法開発の基礎となる分子生物学研究やトランスレーショナルリサーチ等が挙げられます。東京大学としても各研究科及び複数の研究科にまたがって様々な研究を実施していく必要があると考えています。私は工学部の出身です。現在、前述の社会の状況もあり、医療・介護の領域への関心が工学部でも高まっています。先端診断・治療用機器の開発、介護用機器・住居設備の開発、人工臓器等、医工連携で一緒にやっていけることは非常に多いと考えています。今後、一層の医工連携が進展し、その結果として大きな研究成果が生まれることを希望します。このため、工学系の研究者の1人として、医学・医療関係者に、医工の連携強化、医工共同研究への参加を呼びかけたいと考えています。
 私は、東京大学において、「知の構造化」を全学的な研究テーマにして、様々な研究科をまたがって、連携研究を進めています。「知の構造化」とは、自律分散的に創造される知識を構造化することによって、新たな知的価値、経済的価値、社会的価値、文化的価値を創生することにあります。UMINにおいて、毎年500以上の医学・医療系学会の学術集会の演題抄録が蓄積し、累積100万件以上に達していること、常時100近い臨床・疫学研究プロジェクトがオンラインで実施され、毎月2万から3万例もの患者の新規登録があること、200以上の医学・医療系学会等の会員制ホームページが集積していることをお聞きしました。私は、「知の構造化」という枠組みからも、UMINという仕組みに興味を持ちました。今後、集積された大量の医学・医療情報の一層の有効活用と新たな価値の創生を期待しております。
 将来に渡って、UMINが医学・医療界の情報インフラとしてますます発展を遂げることを祈っております。東京大学としてもUMINの活動についてできるだけの支援をさせていただく所存でおりますので、今後も全国の医学・医療関係者の皆様のご支援、ご協力、ご鞭撻のほどよろしく御願い申し上げます。