国立大学病院における
看護記録の開示に関する指針(ガイドライン)

平成12年5月
全国国立大学病院看護部長会議

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国立大学病院における看護記録の開示に関する指針(ガイドライン)

1.はじめに

 平成9年7月に、厚生省の「カルテ等の診療情報の活用に関する検討会」が設置され、特に患者への診療記録の開示が重点的に検討された。その結果、平成10年6月に出された報告書の中では、法制化によるカルテ等の診療記録の開示が提言されたが、現在、日本医師会の反対で法制化が遅れている。

 大学病院においては医師の個人的な判断で処理されているところが多く、患者の請求に基づく診療情報の提供が、公正かつ適切に、また円滑に行われるために、国立大学病院を対象とした統一的なガイドラインが必要であるという共通の認識に基づき、国立大学医学部附属病院長会議常置委員会広報問題検討小委員会で検討を行い、平成10年度にガイドラインが作成された。

 当ガイドラインの作成にあたっては、診療情報を医療提供者と患者が共有することによって、良好な医療提供者・患者関係を構築し、患者が自分自身の疾病を十分に理解した上での意思決定に役立て、治療効果の向上を図り、より質の高い医療の実現を目指すことを唯一かつ最優先の目的とされている。

 当ガイドラインにおいて、看護記録は患者の診療を目的として医療従事者が作成した診療情報であるため、「診療諸記録」と位置付けられた。

 全国国立大学病院看護部長会議は、看護記録の情報開示に関する検討を行うために、平成11年度に情報開示に関する特別検討委員会を設置し、担当を関東・甲信越地区看護部長会議とした。

2.検討の進め方と作成までの経緯

 平成11年度は情報開示に関するガイドラインを作成することに向けての活動を展開し、平成12年度に看護記録に関する情報開示を支えるもの、例えば、インフォームドコンセントやクリテイカルパス、看護計画立案の方法などの確立・充実について検討することとした。

 初年度の検討の進め方としては、関東・甲信越地区の国立大学医学部附属病院において入院患者の10%にあたる看護記録について現状分析を行い、情報開示にむけた課題と方向性等を検討し、その結果の集約と先駆的病院の調査結果を統合したうえで、「看護記録の情報開示に関するガイドライン」を作成した。

 本ガイドラインは、平成125月松本で開催された第52回全国国立大学病院看護部長会議で報告し、周知を図ることとした。

3.開示にあたっての看護記録のありかた

 看護記録の情報開示の目的、提供の範囲、対象者、提供方法、その他については、「国立大学附属病院における診療情報の提供に関する指針(ガイドライン)」に準じてとりくむ必要がある。

1)開示にあたっての課題

開示にあたっての課題として、現状分析から6つの項目が抽出された。

  1. 患者の人格・人権を尊重した看護記録である。
  2. 求められる看護記録の内容を明確化する。
  3. チーム医療を推進する看護記録である。
  4. 看護記録を適正に管理する。
  5. 教育と業務を統合した視点で常に看護記録を再構築していく。
  6. 看護の専門性の発達と確立に貢献する。

上記の6つの項目を具体化するためのビジョンの明示を目指して、現状の課題認識から分析された方向性を統合した。

2)看護記録を見直す方向性

開示にあたっては、下記の項目にしたがって点検改善する必要がある。

(1)患者の人格・人権を尊重した看護記録である。

  1. 患者中心の医療である。
  2. 患者の自律への支援をする。
  3. 患者が自己決定できるようなインフォームドコンセントの充実を図る。
  4. 患者の参加による看護計画の立案をする。

(2)求められる看護記録の内容を明確化する。

  1. 法的根拠(事故の記録等法的対応のできるもの)に基づいている。
  2. 事実が記載されている。
  3. 必要かつ十分な内容であり、効率性の観点からも最低限必要なことが盛り込まれた記録である。
  4. 解かり易く、読み易く、正確に表現されている。
    正しい日本語、文字で書かれている。
    統一した用語集に基づいている。
    略語が統一されている。
  5. 適切なアセスメントがなされている。
  6. 看護サマリーが活用し易く作成されている。
  7. 看護の全体像が見える実証的な記録である。
  8. 看護の質が評価できる記録である。
  9. 看護記録マニュアル・手順を整備し、周知する。

(3)チーム医療を推進する看護記録である。

  1. 医師と看護婦で情報の共有化がなされている。(患者の問題、看護計画、治療計画)
  2. 医師と看護婦で紙面を共有する。
  3. 医療チームカンファレンス(癌告知問題、事例の検討とその記録)を実施する。
  4. 医療チーム内で共有できる指標(インデイケーター)を用いて記録する。
  5. クリテイカルパスを作成し活用する。

(4)看護記録を適正に管理する。

  1. 院内における記録の統一化をはかる。

 2.診療記録が適正に保管され、活用しやすいシステムを構築する。
 3. 患者のプライバシーを保護するために、情報の漏洩の危険がない管理システム(リスクマネージメント)を構築する。
 4.看護記録の電子化を促進する。

(5)教育と業務を統合した視点で常に看護記録を再構築していく。

  1. 基礎教育における看護記録トレーニング(教育、経験による能力の差)と実務との関連における問題を検討する。
  2. 看護記録に関する現任教育、訓練を実施する。
  3. 看護記録監査システムを構築する。
  4. 看護記録システムを見直す。
  5. 情報開示に向けて看護記録マニュアルを整備する。
  6. 開示を前提として、看護チーム全体で看護記録の検討を行う。
  7. 担当ナース制等の導入を推進する。
  8. 看護記録に要する時間を適切に管理(記録時間の短縮=効率性)する。

(6)看護の専門性の発達と確立に貢献する。

  1. 更なる知的領域を確立するため、情報を蓄積する。
  2. 看護記録を研究に活用する。

4.おわりに

 本ガイドラインの運用にあたっては、各病院において定期的な会議を設置して、ガイドラインに基づいた看護記録マニュアルを作成し、運用上の問題点を検討されることが必要である。

 また、今後、全国国立大学病院看護部長会議において看護記録の運用や改善について情報交換を図りながら、本ガイドライン運用上の問題点を把握し、適宜見直しをすると同時に、情報開示が推進できるよう検討を重ねていきたい。