保健医療福祉サービスの情報化に関する懇談会報告書

〜健やかで豊かな暮らしを支える情報化〜 平成7年7月18日
目次 1 いま何故情報化か(はじめに) (1) 高度情報通信社会の建設 (2) 保健医療福祉サービスの情報化推進への期待 (3) 最近の厚生省の情報化への取組み (4) 保健医療福祉サービスの情報化に関する懇談会の開催 2 情報化とは何か(基本理念) (1) 情報の活用にこそ価値がある (2) 利用者の立場に立って考える (3) 自分の情報へのアクセスを確保する (4) 情報化の基本理念 (5) 情報化を進める3条件 3 情報化によって何が変わるか(意義) (1) 少子・高齢社会に対応した保健医療福祉サービスシステムの確立  〈1〉少子・高齢社会への各分野の対応  〈2〉保健、医療、福祉の連携 (2) 情報化により期待できる21世紀初頭の保健医療福祉サービスのイメージ 4 どのように情報化を進めていくか(現状と課題) (1) 個別施策の現状と今後の課題  〈1〉サービスの質の向上  〈2〉サービスの効率的な提供  〈3〉公平なサービスの提供  〈4〉生活に役立つ情報の提供  〈5〉緊急時の健康や安全の確保  〈6〉障害者等の生活の支援  〈7〉人材の養成・確保 (2) 情報化推進のための共通課題  〈1〉システム等の標準化  〈2〉関連制度の点検  〈3〉費用負担と公的助成  〈4〉個人情報の保護  〈5〉情報の活用の促進  〈6〉研究開発体制の整備充実 5 厚生省は何をなすべきか(情報化の推進体制等)  (1) 公民の役割分担  (2) 厚生省の果たすべき役割  (3) 実施計画の策定 (4) 厚生省等における推進体制の整備  (5) 関係省庁、関係団体等との連携  (6) 諸外国との連携、協力 (別紙1)保健医療福祉サービスの情報化のイメージ (別紙2)厚生省の主要な情報化関係施策の概要と課題 (別紙3)関連制度の点検について
1 いま何故情報化か(はじめに) (1)高度情報通信社会の建設 ・ 近年における情報処理や情報通信の技術の進歩は目ざましく、この分野の技術革  新は人間の様々な社会活動を時間と空間の制約から解放するとともに、情報の高度  利用による新しいサービスを生み出すなど、21世紀に向けて国民の生活を大きく  変えようとしている。 ・ このような状況の中、政府の高度情報通信社会推進本部は、本年2月21日に  「高度情報通信社会の実現に向けた基本方針」をとりまとめ、高度情報通信社会  (人間の知的生産活動の所産である情報・知識の自由な創造、流通、共有化を実  現し、生活・文化、産業・経済、自然・環境を全体として調和し得る新たな社会  経済システム)の実現に向けて、今後2000年までに主要地域の光ファイバー  網の整備と公的アプリケーションの導入に取り組んでいくこと等を決定した。 (2)保健医療福祉サービスの情報化推進への期待 ・ 21世紀の我が国は世界のどの国も経験したことがない少子・高齢社会が到来す  る。人口の少子化、高齢化の進行により生産年齢人口が減少し、かつてのような経  済の著しい発展も見込み難い状況の中で、保健医療福祉サービス分野をはじめとし  た社会保障施策の充実を図り、すべての国民が健やかで豊かな生活を送ることがで  きるようにしていくことが重要な課題になっている。  保健、医療、福祉各分野の連携を図りながら、国民が住み慣れた家庭や地域社会  の中で、これらのサービスをニーズに応じて総合的に受けられるシステムの整備が  求められている。  情報ネットワークの連携等における情報処理技術や情報通信技術の活用こそ、こ  れらの政策目標を実現する有力な手段である。 ・ また、上記高度情報通信社会推進本部決定や昨年5月の産業構造審議会及び電気  通信審議会の意見にもあるとおり、今後我が国において高度情報通信社会を実現し  ていくためには、光ファイバー網等の基盤整備とともに、これを活用した公的アプ  リケーションの開発普及が強く求められている。  特に、保健医療福祉サービス分野については、情報化への国民のニーズも高く、  その積極的な展開が期待されている。 ・ しかしながら、保健医療福祉サービス分野の情報化はこれまで保健医療を中心に  取組みが行われてきているが、必ずしも総合的、計画的に進められてきたとは言え  ない状況にある。 (3)最近の厚生省の情報化への取組み ・ こうした状況を踏まえ、厚生省においては平成6年5月に省内に情報化推進連絡  本部(本部長:官房長)を設置して、保健医療福祉サービス分野における情報化を  総合的に推進していくための体制が組まれるとともに、同年7月には保健医療分野  の情報化の推進をめざした「保健医療情報システム検討会中間報告」がとりまとめ  られた。さらに、本年3月には「厚生省行政情報化推進計画」を策定し、効率的な  行政の推進と行政サービスの向上を図るための努力が行われようとしている。 (4)保健医療福祉サービスの情報化に関する懇談会の開催 ・ 21世紀に向けて保健医療福祉サービス分野の情報化を総合的に進めていくため  には、何故情報化を進めていく必要があるのか、情報化により国民の生活がどのよ  うに変わるのか、情報化を進める上で何をしなければならないのかを明らかにして、  国民をはじめ医療機関、福祉施設、地方公共団体、関係団体、民間企業等の理解と  協力を求めていくことが何より重要である。  このような趣旨から、本懇談会は、厚生大臣の要請により、保健医療福祉サービ  ス分野における情報化施策の在り方について総合的な検討を行うために開催された  ものである。 ・ 本懇談会では本年2月より、情報化についての理念や意義を中心に、現行施策の  評価やシステム等の標準化、費用負担等の共通課題等幅広い分野について計8回に  わたって意見交換を行った。本報告書はその結果をとりまとめたものである。
2 情報化とは何か(基本理念) (1)情報の活用にこそ価値がある ・ 情報処理や情報通信の技術は、国民の社会経済活動を大きく変え得る可能性をも  っており、21世紀において発展が期待される重要な科学技術である。  特に、産業経済の面ではバブル崩壊後の我が国の経済をリードしていく新産業と  して大きな期待が寄せられている。  こうしたことから、情報機器や情報システムの開発普及、情報通信インフラの整  備といったことが注目を集め、そのことが情報化であるとの考え方も強い。 ・ しかしながら、国民の健康や福祉にとって最も重要なことは、それらの機器やシ  ステムによって、どのような情報、サービスが得られるか、どのように健康や福祉  の向上が図られるかということである。 ・ すなわち、サービスを利用する国民の立場に立てば、情報機器や情報システムに  よって処理され、あるいは伝達される情報そのものに価値があり、情報の活用にこ  そ意義がある。  特に、保健医療福祉サービスは人間の生命や健康、福祉に直接関係するため、こ  れらに関する情報は様々な情報の中でも国民が生活していく上で最も価値のある情  報の一つである。保健医療福祉サービス分野の情報化を考えていく場合、情報その  ものに最大の価値があり、情報機器や情報システムはその手段であるという考え方  を基本とすべきである。  このことは一見自明のことではあるが、現実には必ずしも重視、徹底されてはい  ない。多くの場合、機器やシステム本位の考え方で情報化が進められている。 ・ 21世紀の我が国が高度情報通信社会として着実に発展を遂げていくためには、  いま一度この原点を確認し、必要な施策を講じて行くことが重要である。 (2)利用者の立場に立って考える ・ 情報の活用にこそ価値があるという考え方は、言い換えれば、その情報の活用に  よりサービス利用者の便益をいかに高めるかということを意味することから、利用  者の立場に立って情報化を考えていくことが重要になる。  また、サービスの利用者の立場から情報化を進めていかなければ、情報化を国民  生活に定着させ、社会システムとして組み込んでいくことは困難であろう。 ・ しかしながら、現状においてはこうした観点から、十分な取組みが行われている  とは言い難い状況にある。国民のニーズを踏まえて、情報の一層の活用が図られて  いると評価できるサービスは少ない。 ・ また、利用者の立場という視点が弱いという問題は、情報機器や情報システムの  面でも該当する。例えばパソコンやワープロ等の情報機器を例にとっても、基本的  な操作手順が複雑で多種多様になっている、情報の互換性が十分に確保されていな  いなど、利用者にとって使い勝手が悪いものとなっている。 ・ なお、サービスの利用者には、国民はもとより、医療機関や福祉施設、各種団体  や企業、行政機関等も含まれる。   保健医療福祉サービス分野について言えば、サービスの最終利用者である国民と  ともに、例えば医療サービスを提供する医療機関も情報機器や情報システムを利用  して診療を行うという面ではやはりサービスの利用者である。  したがって、保健医療福祉サービスの情報化を考える場合、個々の施策毎に、誰  がサービスの利用者であるか、あるいは誰のための情報の活用かということを念頭  において進めていく必要がある。 (3) 自分の情報へのアクセスを確保する ・ サービスの利用者の立場にたって情報の活用を図っていくということは、逆に言  えば、サービスの利用者本人の意思に反してその者に係る情報が利用されてはなら  ないということになる。 このような事態が生じないようにするためには、サービスの利用者にとって自分  の情報にはいつでもアクセスできるようにし、自分の情報は自分で管理できるよう  にしていくという考え方が重要になる。 ・ 今後情報ネットワークの連携が進み、情報の高度利用が図られるようになると、  それだけ個人のプライバシーをはじめとする情報の保護対策が問題となってくる。 自分の情報へのアクセスを確保しておくという考え方は、このような情報の安全  性の確保にとって基本となる理念である。 (4) 情報化の基本理念 ・ 以上から、情報化とは、サービスの利用者の立場から、情報処理や情報通信の技  術を活用して、情報の高度利用を図ることであり、保健医療福祉サービスの情報化  は、このような基本理念に立って、進められて行くべきである。 ・ 保健医療福祉サービス分野における情報の高度利用の方法としては、大きく次の  2つがあげられる。  第一は、例えば情報通信ネットワークのように、画像や音声等の大量の情報を遠  くまで高速に伝えるということである。これにより、サービス提供における時間的、  空間的な様々な制約を克服することができる。 第二は、例えばコンピュータによるデータベースの作成のように、大量の情報を  正確に蓄積し活用できる環境を整備するということである。これにより、正確な事  実の分析の上に公正な判断が可能となり、サービスの質を向上させることができる。 (5) 情報化を進める3条件 ・ 情報化の基本理念が情報の活用であるとするならば、保健医療福祉サービスの情  報化を進めて行くに当たっては、情報機器や情報システムについて、保健医療福祉  分野の情報の特性を踏まえた、以下の3つの条件が満たされていることが必要であ  る。 (ア) 情報の共通利用性の確保 ・ 保健医療福祉サービスは、国民の誰もが生涯を通じて利用する身近なサービスで  ある。特に、国民が生活をしていく上で必要不可欠な基本的なサービスについては、  すべての国民に公平に提供されなければならない。国民の誰もがいつでもどこでも  必要なサービス(情報)を受けられることが求められる。  このような意味で、保健医療福祉サービスの情報化には普遍性が求められるが、  それを可能にしていくためには、情報機器や情報システムについて情報の共通利用  性が確保されなければならない。 例えば、医療施設間等での情報の交換を可能にし、公平なサービスの提供を実現  していくためには、情報機器や情報システムの互換性を図り、ネットワークを介し  て容易に情報が入手、処理できるようにしていくことが必要である。 (イ) 情報の再現性の確保 ・ 保健医療福祉分野の情報は、国民の生命や健康等に係わる情報であるため、極め  て正確な情報の保存、再現、伝達等の処理が求められる。 特に、医療は、情報の種類が多く専門性も高いため、些細な情報の変化がその意  味内容を大きく変化させることにもなりかねない。 このような意味で、情報機器や情報システムには情報の再現性の確保が求められ  る。  例えば、医療機関間でネットワークを介して医療情報が流通しても、その情報が  誤りなく再現されなければ、所期の目的は達成されない。情報の改ざん防止のシス  テムや情報が流通の途中で劣化しないシステムを開発していく必要がある。 (ウ) 情報の安全性の確保 ・ 保健医療福祉分野の情報は、国民一人一人の情報に係わるものが多い。個人の健  康状態や過去の病歴、家庭生活の状況など、個人のプライバシーに密接に関係して  くる。したがって、情報システムについて技術的なセキュリティー対策を講じると  ともに、法制度における守秘義務等の措置も必要となってくる。 このような意味で、情報機器や情報システムには情報の安全性の確保が求められ  る。例えば、ハッカー等による情報の改ざんや不正利用を防止するとともに個人の  プライバシーを保護するための技術的なプロテクトを開発していく必要がある。
3 情報化によって何が変わるか(意義) (1) 少子・高齢社会に対応した保健医療福祉サービスシステムの確立 〈1〉 少子・高齢社会への各分野の対応 ・ 今日、我が国は少子化と高齢化の進行、家族の小規模化、共働き世帯の増加等、 社会経済の大きな転換期を迎えている。   21世紀の少子・高齢社会においても、すべての国民が健やかで豊かな生活を送  ることができるようにしていくためには、こうした構造変化に対応した保健医療福  祉サービスの供給体制の再構築を進めていく必要がある。 (保健) ・ 健康はあらゆる人間活動の源泉であり、保健サービスは活力ある地域社会を築い  て行く上で基本となる重要な分野である。 このため、従来より、若い時からの健康づくりや病気の予防をきめ細かく支援す  る地域の保健サービス体制の充実や保健福祉事業の効果的な展開が図られてきたと  ころである。平成6年に公布された地域保健法により、平成9年からは地域住民に  最も身近な市町村を中心とした保健サービス体制が整備されていこうとしている。 ・ このような状況の中で、保健所は市町村を支援する専門機関として、また地域に  おける保健医療福祉のシステムの構築等について重要な役割を担っている。 このため、保健所の役割である地域の人と生活環境に関する健康問題の調査研究  や疫学評価等の結果に基づく保健医療計画等の策定、直接又は市町村を介した住民  の健康生活に関する情報の提供や総合相談の実施等について、情報化を進めていく  必要がある。 ・ また、地域保健に関する情報の収集、整理、活用を行う保健所を核として、市町  村保健センター等を含む情報ネットワークを構築する等、保健サービス分野の情報  化は、地域における住民の健康づくりに大きな効果をもたらすことが期待できる。 (医療) ・ 医療サービス分野においては、我が国は医療供給体制の量的な整備がほぼ終わり、  今後は国民のニーズの高度化、多様化に対応した、質の高い医療サービスをいかに  効率的に供給していくかが重要な課題となっている。 医療の質の向上のためには、医学医術の進歩はもとより、医療施設設備の近代化  や患者の療養環境の改善、資質の高い人材の養成確保、医療機関の連携、健全かつ  効率的な医業経営の確保等を図っていくことが必要である。 ・ 遠隔医療技術の開発や医療機関のインテリジェント化等の医療サービス分野の情  報化は、こうした課題解決の支援になるとともに、在宅医療等患者の多様なニーズ  にも応えていくことができる。 (福祉) ・ 福祉サービス分野については、人口の高齢化の急速な進展等に伴い、介護サービ  スを中心に国民のニーズが高まっており、早急なサービス供給体制の整備が求めら  れている。 このため、平成元年には高齢者保健福祉推進十ヵ年戦略(ゴールドプラン)が策  定され、平成6年にはその見直し(新ゴールドプランの策定)と少子化に対応した  エンゼルプランが策定された。また、平成2年の福祉8法の改正をはじめ、福祉サ  ービス業務の市町村への一元化が進められている。さらに、国民の誰もが身近に必  要な介護サービスを受けられるよう、新しい高齢者介護システムの検討が進められ  ている。 一方、障害者施策については、平成5年11月の障害者基本法の制定をはじめと  してライフステージを通じた総合的な施策の展開が図られている。 ・ このような状況の中で、一部の地方公共団体や福祉施設等で、事務処理等の面で  情報化の取組みが見られるものの、総体としては保健医療分野に比べ、情報化が遅  れている現状にある。 しかしながら、21世紀に向けて、国民の福祉ニーズは質量ともに増大していく  とともに、保健医療分野との一層の連携が求められることから、今後福祉サービス  の情報化を推進し、新ゴールドプラン等の実施の支援に努めていくことが重要であ  る。 ・ 今後、地域福祉情報システムの展開が求められる分野として、1、介護サービス、  2、各種地域計画の策定、3、サービス利用促進(情報提供、ニーズの把握等)、  4、参加とコミュニケーション(地域における情報交流や情報発信等)の4分野が  考えられる。 ・ 例えば、介護を受ける高齢者等と老人福祉施設、医療施設等との連絡調整等を行  う在宅介護支援センターや特別養護老人ホーム、保育所等、住民に身近な地域の機  関の情報ネットワーク化や増加する福祉業務への情報処理システムの導入は、福祉  サービス体系の改革に大きく貢献することが期待できる。   また、障害を有する人もそうでない人も同じ社会の構成員として普通の生活を営  むというノーマライゼーションの観点から、障害者等の社会参加と自立を確保する  上で、情報機器や情報システムが果たす役割は大きく、障害者等が利用可能な技術  の開発と利用の促進策が求められている。 〈2〉 保健、医療、福祉の連携 ・ 家庭や地域社会において国民にきめ細かなサービスを効率的に提供していくため  には、これら保健、医療、福祉の各サービスの連携が必要不可欠であり、市町村保  健センターや在宅介護支援センター等を拠点とした情報ネットワークやデータベー  スの整備は、保健、医療、福祉の各分野間における情報の交換や活用を進め、質の  高い総合的なサービスの提供を実現する。 ・ このように、情報化は21世紀の少子・高齢社会に対応した我が国の保健医療福  祉サービスシステムの構築に大きく寄与するものである。 (2) 情報化により期待できる21世紀初頭の保健医療福祉サービスのイメージ ・ 以上のように、情報処理や情報通信の技術の発達、情報通信インフラの整備等に  より、国民生活に密接な保健医療福祉サービスの一層の充実が期待できる。  また、これらの情報化によって、全体として保健医療福祉サービスの効率化が図  られ、国民の費用負担の軽減が期待できる。 ・ 情報化により、いつでも、どこでも、だれでも質の高い保健医療福祉サービスが  利用できる社会を実現していくことが必要である。 こうした社会をイメージすると、例えば別紙1のようなものが描けるであろう。
4 どのように情報化を進めていくか(現状と課題) (1) 個別施策の現状と今後の課題 ・ 施策の意義や国民のニーズという観点から見た場合の個別施策の現状と今後の課  題については、別紙2のとおりであるが、特に以下の点に留意していく必要がある。 〈1〉 サービスの質の向上 (サービスの高度化) ・ 情報化がもたらす大きな効果の一つとして、サービスの内容の高度化があげられ  る。 ・ 例えば、がん診療総合支援システムの構築により、国立がんセンターと全国の地  方がんセンターとの間において、がんの予防、研究及び診療に関する各種データベ  ースの構築や、テレビ会議、テレ・パソロジー(病理組織情報の交換)、テレ・ラ  ジオロジー(放射線診療情報の交換)等を行い、がんに関する診断や治療方針決定  が困難な症例等の診療支援を実施している。これにより、将来は全国で高度ながん  診断治療のサービスを受けることも可能となろう。 循環器疾患についても、平成7年度より国立循環器病センターを核とした循環器  疾患に関する情報ネットワークの構築が始められるが、今後とも他の重要な疾患に  ついて同様なシステムが導入されていくことが期待される。 ・ 保健医療カードシステムは、ICカード等に個人基本情報や既往歴、投薬歴、健  診情報等を記録し、個人が保管管理するシステムであるが、平成6年7月には ガイ  ドラインが制定されるなど、全国的な普及に向けた取組みが始まっている。   これにより医療機関における診断治療や保健所や市町村における個別相談指導等  の支援につながるとともに、個人情報の安全性が確保される。 また、現在検討が進められている高齢者介護システムにおいて、ICカード等を  利用して、寝たきり老人等のADLや介護の状況等を記録管理することにより、公  平で効率的なサービスの提供に資することが期待できる。 (サービスの複合化・総合化) ・ 情報通信システム間の接続や新しい技術の組み合わせにより、新たなサービスの  提供が可能となる。 ・ このような観点から、既に厚生省において実施されている多数の情報システム  (別紙2)の一元化や整合性に配慮したシステムの高次化の実現を図るべきである。 ・ 診療録や処方せんの電子化は、医療情報が発生する段階で入力することにより、 診断治療等のサービスの向上、事務の効率化につながるとともに、他の情報システ  ムとの結合や新たな情報システムの開発を容易にする等、保健医療分野における情  報化推進の基盤となる。 厚生省は平成7年度より、診療録の電子保存についての標準規格の作成に取り組  んでいるが、レセプト電算処理等の院内システムとの連携に留意していくことが必  要である。 (データベースの構築) ・ 大量の情報を正確に蓄積し、整理、検索を容易にするデータベースの構築は、情  報の高度利用を図り、サービスの質の向上や総合的なサービスの提供を実現してい  く上で極めて重要である。  例えば、薬剤情報、医学文献情報、がん治療の最新治験情報、特定疾患について  の大規模疫学調査の結果等の蓄積、活用は、国民の健康や福祉の確保、医学や医療  の発展にとって有益である。 ・ また、データベースの構築を容易にし、幅広く活用を図るためには、調査票や申  請書等の各項目の記述様式の標準化を進めるとともに、常にデータベースの内容を  最新のものにするよう努めることが重要である。 (新しいニーズへの対応) ・ 高齢化の進展や疾病構造の変化、国民のニーズの高度化、多様化等により、在宅  医療や在宅ケアに関するサービスへのニーズが大きいが、精細な画像や音声等を高  速に伝送する技術の開発は、これら在宅医療や在宅ケアの支援となる。 ・ 特に、地域の住民が自宅においても在宅介護支援センターや市町村保健センター  等の地域の身近な機関から手軽に保健医療福祉に関する情報を入手したり、相談が  できるようにするとともに、施設利用等のサービスの申込み等を可能にするサービ  ス利用相談支援のための情報ネットワークの構築が望まれる。 このため、措置制度等のサービス利用方法の在り方についての検討においても、  情報化について配慮していく必要がある。 〈2〉 サービスの効率的な提供 (サービス供給サイドにおける事務の効率化) ・ コンピュータ等の活用により、サービスの向上と事務の効率化が図られる。これ  により、コストの軽減も期待できる。 ・ 医療機関のインテリジェント化は、医療サービスの高度化や患者の待ち時間の短  縮、経営コストの削減による医療機関の経営の健全化等に大きな効果をもたらすこ  とから、その開発普及を図っていくことが必要である。 (行政の情報化) ・ 行政の情報化は、効率的、効果的な行政の実現にとって重要な手段であるととも  に、住民に対する行政サービスの向上をもたらすものである。保健福祉サービスの  供給主体が国や地方公共団体等の行政機関であることが多いことからも、その意義  は大きい。 ・ このため、厚生省行政情報化推進計画や地方公共団体等の行政情報化の進展に留  意しながら、行政の情報化を計画的に推進していくことが必要である。 ・ また、行政サービスの情報化は、行政サービスの効率化のみならず、行政サービ  スの自己評価や的確性の確保にも資する。 特に、国、都道府県及び市町村間の行政に関する情報交換や指示伝達等の面でも  情報化のもたらす効果は大きく、地方分権化の流れの中で、国と地方をはじめ行政  機関間の連携にも資することとなる。 このような観点から、保健医療福祉行政分野における国、都道府県及び市町村等  の広域的なネットワークの整備等を内容とする双方向の行政支援システムを構築し  ていく必要がある。 ・ なお、行政サービスの情報化を進めるに当たっては、その他の保健医療福祉サー  ビスの情報化との連携を図っていくことが必要である。 〈3〉 公平なサービスの提供 ・ 情報化は、サービスへのアクセスを改善するとともに、サービスの地域格差を是  正する。  特に、遠隔医療技術の進歩によりへき地離島等の医療過疎地区の医療を確保する  とともに、臓器移植等の専門医療の公平な提供という面でも大きな役割を果たすこ  とができる。 〈4〉 生活に役立つ情報の提供 (健康や安全に関する情報の提供) ・ 健康や安全に関する情報に対する国民のニーズは大きく、民間の情報も含めて幅  広く、かつ、正しい情報を総合的に提供していくことが求められている。 特に、地域の身近な保健所や市町村保健センターあるいは医療機関等で、病気の  予防や健康増進、高度な診断治療等の健康情報が手軽に利用できる総合的なネット  ワークの整備が必要である。 ・ なお、活用されない情報や誤った情報が社会に氾濫するような事態は、かえって  国民の意思決定を混乱させるなど、マイナスとなる。特に、保健医療福祉の情報は  その内容の正確性が問われるとともに、それをどう評価するかという面が大きいの  で、情報提供者においては、情報システムの整備とともに情報のスクリーニングが  必要である。 (サービス選択への支援) ・ 多様なサービスの提供と利用者による選択ということが、21世紀に向けての我  が国の社会保障サービスの課題の一つであり、この面での情報化の果たす役割は大  きい。 〈5〉 緊急時の健康や安全の確保 (大規模な災害時における保健医療福祉情報の連絡体制の確立) ・ 先般の阪神大震災における経験を踏まえ、国立病院や公立病院等において大規模  な災害に強い情報連絡システムを整備するとともに、地上系の通信手段の他に人工  衛星等の無線通信の活用等複数の通信体系を確保しておくことが重要である。 (緊急時における情報連絡体制の整備) ・ 高齢化の進行等により一人暮らし老人等が急激に増加しており、こうした老人等  の緊急時における健康や安全を確保するため、情報通信技術を活用した緊急通報連  絡システムの整備普及を図っていく必要がある。 なお、こうした情報連絡システムは、24時間対応の在宅介護等増大する介護ニ  ーズへのきめ細かな対応にも活用することができる。 ・ 救急医療情報システムは、患者の生命に係わる重要なシステムであり、空床情報  の迅速かつ正確な入力体制の整備や全国への普及拡大に努めていく必要がある。   また、信頼性の高い無線通信系の導入等により、搬送途上の患者に対する救急医  療支援システムの開発も望まれる。 〈6〉 障害者等の生活の支援 (情報福祉機器の開発・普及等) ・ 視覚や聴覚などの身体の障害のために情報の伝達、確保に困難を伴う障害者、寝  たきりの高齢者あるいは子供等が生活していく上で必要不可欠な情報の伝達、確保  のための手段として、情報福祉機器の開発・普及は、最も基礎的なニーズを満たす  重要な施策である。 ・ また、情報福祉機器は、そのような人々の行動範囲や意思伝達範囲を広げ、社会  参加を促進する上でも、重要な役割を果たすことが期待される。 〈7〉 人材の養成・確保 ・ 少子・高齢社会においては保健医療福祉サービス分野において、ボランティアを  含め数多くの人材を必要としている。 このため、情報ネットワークシステムをマンパワーの需給の調整に活用するとと  もに、専門職種等の養成、研修にもバーチャルリアリティ技術の活用やマルチメデ  ィア教材の導入等が求められる。 (2) 情報化推進のための共通課題 ・ 保健医療福祉サービス分野の情報化を総合的かつ円滑に進めていくためには、国  民のニーズに応じた各分野における取組みとともに、以下に掲げるような、これら  に共通するいくつかの課題を解決することが重要である。 〈1〉 システム等の標準化 (標準化の意味) ・ 情報機器や情報システムについて標準化が行われていないと、各々の機器やシス  テムの間で情報のやりとりができず、情報の活用が図られないことになる。また、  情報機器や情報システムについて技術的な互換性が確保されていたとしても、用語  の意味内容や表現方法が標準化されていないと、同様にその情報を活用することは  できなくなる。 ・ したがって、情報化の円滑な進展、普及を図っていくためには、情報システム等  (コード、機器の仕様等を含む)について規格・基準を定め、明らかにしていくこ  とが必要である。 言い換えれば、標準化とは、これらにより、望ましい情報システムの普及を図る  ことである。 特に今後は、ネットワーク間の接続等情報システムの複合化が進み、情報の高度  利用が図られていくことが予想され、標準化への早急な対応が求められている。 (望ましい情報システム) ・ 普及させていくべき望ましい情報システムとは、どのようなものであろうか。そ  れは、情報そのものに価値があるという考え方に基づけば、2の(5)で述べたよ  うに、保健医療福祉分野の情報の特性を踏まえた次の3つの条件を満たすシステム  である。  ア. 情報の共通利用性が確保されていること。 イ. 情報の再現性が確保されていること。 ウ. 情報の安全性が確保されていること。 (標準化の考え方) ○用語・コードの標準化 ・ まず、用語の定義、用語が示す事象についての概念を明確化するとともに、用語  と用語の関係や全体の相互関係を整理した体系を明らかにすることが重要である。 ・ また、情報のコードについては、現在どのようなコードが保健医療福祉サービス  分野において存在するのかを明らかにするとともに、コードが異なるシステム間に  おいて情報の交換を行うに当たっては、片方のシステムのコードを他 方のシステムのコードに置き換えるソフトを開発していくことが適当である。 ・ 各種システムのコードは、それぞれのシステムの目的に応じて設定されているの  で、すぐには一元化は困難であろうが、できるだけ統合、整理し、将来に向けて統  一化を図っていくことが望ましい。 また、特に、福祉分野のような今後コード設定を行うものについては、関連する  保健や医療のコード体系に十分留意してコードを設定していくべきである。 ○ハードウエア・ソフトウエアの標準化 ・ 保健医療福祉サービスに高度の情報処理技術や情報通信技術を活用していくため  には、パソコンやワークステーション等のハードウエアとそれを作動させるソフト  ウエアが欠かせない。 厚生省は、国際的な標準化団体や国内の標準化団体、関連業界や関係省庁等に対  して、利用者の立場から、ハードウエアやソフトウエアの標準化に関して積極的に  意見、提言等を行っていくべきである。 ・ 特に、診療録や医用画像の電子保存の規格等保健医療福祉サービス分野に特化さ  れる規格・基準については、厚生省自らが中心となって定めていくべきである。 (標準化推進のための方策) ・ 標準化を進めていくためには、望ましい情報システムの規格・基準を定めていく  とともに、これらを周知させ、適宜メンテナンスしていくことが重要である。 このため、産学官一体となった標準化機関を設置するなどして、標準化を進めて  いく体制を整備すべきである。 ・ また、標準化されたシステムについては、補助金等の公的支援を行う等、何らか  の普及のインセンティブを付与することが適当である。 〈2〉 関連制度の点検 (いくつかの指摘事項に対する考え方) ・ 保健医療福祉サービスの情報化を進めて行く上で、法制度がそれを阻害している  との指摘がある。  これらの指摘に対する厚生省の現段階における考え方は別紙3のとおりであり、 指摘の中には誤解を生じているものも見受けられたが、引き続き技術及び制度の両  面からの研究、検討に取り組んでいく必要がある。 ・ なお、遠隔医療については、今後、遠隔地において診察治療を行うのに十分な情  報が得られるような情報通信技術の開発状況を考慮していく必要がある。特に、初  診時に必要とされる情報、触診で得られる情報の取扱いについて、関係者における  研究、検討が期待される。 (制度や規制の継続的な点検) ・ 何が情報化を阻害しているのかは、その情報化の具体的な内容を踏まえてはじめ  て議論できる性格のものである。 したがって、今後における情報化の進展を踏まえて、厚生省は省令、通知レベル  のものを含めて、継続的な制度や規制の点検に努めていくべきであり、その結果、  情報化によっても所期の目的が達成される制度や規制については積極的に見直しを  行っていくべきである。 ・ なお、地方自治体の中には、条例で、他の地方自治体等とのオンライン結合を一  律に禁止しているところがあるが、こうした措置は情報の活用の障害となることか  ら、制度及びシステム・技術の両面から情報の安全性の確保を十分図った上で、条  例の見直しが行われることを期待したい。 〈3〉 費用負担と公的助成 (費用負担の基本的考え方) ・ 保健医療福祉サービスは国民にとって必要不可欠な公共的サービスが多いことか  ら、その情報化に伴う費用負担については、他のサービスと異なり、税や保険料等  の公的費用を中心とすることが適当である。 ・ 一方、今後は高度情報化の進展等により、個人の個別のニーズに対応した各種の  サービスの提供が予想される。こうした個別のニーズに対応するサービスの部分に  ついては、公平性や公的財源の有効利用、財源の確保という観点から利用者個人の  負担を導入していくことが適当であるが、その際サービスに対するニーズを抑制し  ないように配慮していくべきである。 なお、利用者負担の導入を図る際には、応能負担と応益負担を適切に組み合わせ  る工夫が必要である。 ・ 公的費用負担と利用者負担の関係をどう考えるかについては、提供するサービス  の性格、種類や内容に応じて、個々に適切な水準が決められるべきである。 (情報化普及のための経済的インセンティブの付与) ・ 費用負担の在り方で考慮しなければならないのは、国民の負担とともにサービス  提供者側の負担の在り方である。特に、保健医療福祉サービスのうち、市場原理に  はなじみにくいものについては、その普及を図るため、公的助成等の経済的インセ  ティブを付与していくことが適当である。 また、情報システムは社会情勢の変化を踏まえ、常に見直しをしていく必要があ  り、こうした情報システムの更新に対しても同様な配慮が望まれる。 具体的には、補助金、税制、出融資、診療報酬等の方策を、それぞれの機能や目  的により、必要に応じて講じていくべきである。 ・ また、公的助成の導入に当たっては、情報化により社会コストが逓減するとの指  摘もあり、国民の理解にもつながることから、今後この点についても調査研究を進  めていくことが適当である。 ・ なお、特に公共性の高いサービスについては、通信回線の利用料金負担の軽減等  の措置が講じられることが望ましい。 また、情報化の普及により情報機器や情報システムの費用は逓減していくことか  ら、こうした効果が利用者の費用負担の軽減につながるよう、関係者の努力が期待  される。 〈4〉 個人情報の保護 ・ 情報ネットワーク社会が進むにつれて問題となってくるのが、個人情報(個人の  プライバシー)をいかに保護していくかということである。 このため、情報システムのセキュリティー対策の確保と個人情報の保護のための  法制度の整備が重要である。 ・ 法制度面においては、行政機関が保有する電子情報については、昭和63年に  「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が制定  され、地方公共団体によっても類似の条例が制定されて、個人情報保護のための措  置が講じられている。また、公務員や医師等の特定の職種、特定の業務についても  法律により、業務上知り得た秘密について守秘義務が課せられている。 しかしながら、民間が保有する電子情報については、原則として法制度上特別な  措置が講じられていないのが現状である。 ・ 今後、保健医療福祉サービスにおける民間事業の在り方等も踏まえ、法制度にお  ける個人情報の保護の在り方について幅広い検討が行われる必要がある。 〈5〉 情報の活用の促進 ・ 情報はそれが活用されてはじめて意味がある。情報システムの整備とともに、そ  の利用により、情報の活用の促進を図っていくことが必要である。 ・ このため、情報システムを誰にでも使いやすいものとするような配慮が必要であ  る。特に、障害者はもちろん高齢者や子供にも使いやすいシステムや端末を開発、  整備していくことが求められる。 ・ また、サービスの利用者においても、自らの情報活用能力の向上を図ることがで  きるよう、学校教育や職場、地域における研修等の充実に努めるとともに、保健医  療福祉サービス分野における情報活用の支援という観点から、必要に応じて、専門  的な知識を有する人材の育成確保について検討を行うことが必要である。 〈6〉 研究開発体制の整備充実 ・ 公民の役割分担の下、公的研究機関における調査研究体制の整備、充実を図ると  ともに、民間企業に対する出融資制度の活用等による支援を行っていくことが必要  である。
5 厚生省は何をなすべきか(情報化の推進体制等) (1) 公民の役割分担 ・ 保健医療福祉サービス分野の情報化を進めていくに当たっては、公民の役割分担  を明確化した上で、両者の連携の下に総合的に推進していくことが必要である。 ・ 保健医療福祉サービスの多くは医療機関や社会福祉法人等により提供されている。 これらのサービスは基本的には国民の生命や健康、福祉に関する専門性、公共性  の高いサービスであり、今後ともサービスの一層の向上と安定的な提供が確保され  ていく必要があることから、情報化を進めて行く上で、医療機関や社会福祉法人等  の果たす役割は極めて大きい。 ・ また、国や地方公共団体等の公的機関の役割は、情報システム等の標準化やそれ  らの普及のための助成等、情報化推進のための共通課題に積極的に取り組むととも  に、以下のような民間では取り組み難い事業について自ら実施していくことが必要  である。   ア 公的機関が運用に関与する必要のあるもの(例:救急医療情報システム)   イ 民間が行ったのでは不採算となるもの(例:へき地医療支援システム) ・ さらに、情報機器や情報システムに係る技術の開発普及を担う民間事業者の役割  も重要である。これらの事業者においては、上記保健医療福祉サービスを提供する  機関や法人等と連携を図りながら、利用者本位の望ましい情報機器や情報システム  の開発普及が行われることを期待したい。 ・ なお、福祉サービスの領域では、今後地域において行政や民間などの様々な主体  が福祉サービスを提供するとともに、地域住民の自発的な福祉活動への参加も重要  な役割を果たす。このような福祉サービスの特性に配慮した情報化を進めていく必  要がある。 (2) 厚生省の果たすべき役割 ・ 厚生省は、利用者の代表という立場から、情報化を総合的、計画的に進めていく  とともに、関係機関や関係業界等に対し積極的に意見、助言等を行っていくべきで  ある。 ・ 特に今後は、情報システムの標準化等情報化推進のための共通課題について積極  的に取り組んでいくべきである。 (3) 実施計画の策定 ・ 厚生省が自らの役割を適切に果たしていく上で、そのための具体的な実施計画を  策定し、対外的に明らかにしていくことが、国民の理解を得る上でも、また民間の  力を導入する上でも有益である。 ・ 実施計画は、政府の高度情報通信社会推進本部決定(平成7年2月)等を踏まえ、  当面2000年までを具体的視野に置いた計画とすることが適当である。 (4) 厚生省等における推進体制の整備 ・ 保健医療福祉サービスの情報化を総合的に推進していくため、それぞれの分野の  政策を調整し、総合的な企画を行う担当部門を厚生本省内に設置することが必要で  ある。 ・ また、以下のような調査研究体制等の整備充実を図っていく必要がある。   ア 研究資源や研究成果の共有化を図るため、試験研究機関やナショナルセンタ   ー、臨床研究機能を有する国立病院・療養所の研究情報ネットワークの整備。   イ 保健医療福祉サービスの情報化に関する調査研究組織の整備。 ウ 情報政策研究及び情報技術研究の推進やその効用についての客観的評価のた     めの研究費の増額。 ・ さらに、厚生省における情報政策に関する重要事項を審議するための専門審議会  を設置する必要がある。 ・ 財団法人医療情報システム開発センター等関係団体の強化、充実を図るとともに、  そのメリットを活かした活動の推進を図っていくことが必要である。 とりわけ福祉分野の情報化への対応について早急に検討を行うべきである。 (5) 関係省庁、関係団体等との連携 ・ 情報化を円滑かつ着実に進めていくためには、関係省庁や地方公共団体等との連  携、協力を進めるとともに、産学官一体となった取組みが不可欠である。 ・ なお、民間における情報化事業の円滑な推進と行政機関との連携の確保等を図る  観点から、保健医療福祉サービスの情報化に関係する民間事業者が共同組織を設立  し、連絡調整や共同研究等を行うことも有益である。 (6) 諸外国との連携、協力 ・ 現在、先進諸国7か国会議(G7)が中心となって進めている情報化に関する国  際共同プロジェクトについて、厚生省としても、世界保健機関(WHO)等の関連  の国際機関との連携の下、保健医療アプリケーションの分野を中心に可能な協力を  行っていくことが必要である。 ・ また、開発途上国等を中心に、国際協力にも努めていくべきである。
保険医療福祉サービスの情報化のイメージ(別紙1
 厚生省の主要な情報化関係施策の概要と課題 (別紙2) サービスの質の向上 施策の意義  (1)専門的なサービスを身近なところで受けたい。  (2)診断や投薬の記録管理をきちんとして、無駄や事故を防いで欲しい。  (3)在宅で専門の医師等の診断や助言を受けたい。  (4)身近なところでサービスの情報の入手や利用の申込ができるようにして欲し     い。 該当する(考えられる)施策  (1)  がん診療総合支援システム  (2)―1  保健医療カードシステム  (2)―2  診療録等の電子化  (3)―1  在宅医療支援システム  (3)―2  在宅介護支援システム※  (4)  保健医療福祉サービス利用支援システム※ 施策の実施状況等  (1)  国立がんセンターと4つの国立地方がんセンター(札幌病院、呉病院、四国がんセ  ンター、九州がんセンター間において、X線画像、CT画像、病理画像等の医療情  報を伝送することにより、診断や治療方針決定が困難な症例などの診療支援を実施。  平成7年度から地方中核がんセンターにネットワークを拡張。  (2)―1  ICカード等に個人基本情報、既往歴、投薬歴、健診情報等を記録・蓄積し、個人  が保管管理するカードシステムを兵庫県の姫路市及び五色町で試行。平成6年7月  にはカードシステムの全国的な普及に向けガイドラインを策定。  (2)―2  医用画像の電子媒体による保存のための技術的基準を明示するとともに、診療録等  の電子媒体による保存のための技術的基準について研究。  (3)―1  国立小児病院を拠点として在宅の患者及び介護者と医師の間でテレビ電話、ポケッ  トベルを利用し、医療機器の作動状況の点検や問診等による健康相談を行うモデル  事業を実施。  (3)―2  テレビ電話等を通じて在宅介護支援センター等の福祉機関の専門家から介護指導を  受けたり、相談等が行えるシステムを整備。  (4)  自宅や在宅介護支援センター、市町村保健センター等の地域の身近な機関で保健医  療福祉に関する情報を入手し、相談等が行えるとともに施設利用の申込ができるシ  ステムを整備。 主な課題  (1)  ネットワークの拡張。  国立以外の医療機関にネットワークを拡張する場合のアクセスの公平性の確保。  (2)―1  入力の容易化。  住民が自分の情報を簡単に見ることができない。  (2)―2  診療録等の電子媒体による保存のための技術的基準の確立。  (3)  精細な画像の高速な伝送。  標準システムの開発。  操作の簡便化。 サービスの効率的な提供 施策の意義  (5)もっと行政サービスをよくして欲しい。 該当する(考えられる)施策  (5)―1  厚生行政総合情報システム  (5)―2  地域保健医療福祉行政支援システム※  (5)―3  結核・感染症サーベイランス  (5)―4  年金相談システム  (5)―5  基礎年金番号の導入  (5)―6  レセプト電算処理システム  (5)―7  被保険者証機能を有するICカードの開発  (5)―8  輸入食品監視支援システム  (5)―9  食品保健総合情報処理システム  (5)―10  医薬品副作用情報処理システム  (5)―11  医薬品等申請審査システム  (5)―12  研究情報ネットワーク 施策の実施状況等  (5)―1  国と地方の行政活動を支援するため、厚生省と地方公共団体等関係機関との間をオ  ンラインで結び、様々な厚生行政情報の相互交換を実施。現在、全国の国立病院・  療養所や検疫所等の国の行政機関や、都道府県・政令市、保健所等を結んでおり、  このネットワークを利用して結核・感染症サーベイランスシステム、輸入食品監視  情報システム、地域保健医療計画支援システム、国立病院等運営管理情報オンライ  ンシステム等を稼働。  (5)―2  上記厚生行政総合情報システムの拡張を通して、国、都道府県、保健所、市町村等  の保健医療福祉行政機関について全国的なネットワークを整備し、双方向で施策決  定の支援や行政情報の高度利用を図るシステムを構築。  (5)―3  地域における結核・感染症の予防・治療活動を支援するため、全国約4000の保  健所、病院等の定点機関における結核・感染症情報等を都道府県に収集し、保健所  等に還元。  (5)―4  社会保険業務センターと社会保険事務所をオンラインで結び、様々な年金相談に対  応するとともに、簡単な年金相談に自動回答する端末を都市部に設置。  (5)―5  年金制度事業運営の一層の適正化を図るとともに、加入者サービスの向上を図るた  め、全年金制度共通で一人一番号である基礎年金番号を平成9年1月を目途に設定。  (5)―6  診療報酬請求に係る事務処理の迅速化を図るため、診療報酬請求明細書(レセプト)  を磁気媒体化。現在、特定の地域でパイロットスタディを実施中。  (5)―7  紙の被保険者証の機能を有するICカードを発行し、基本情報(被保険者証情報)  や健診情報、健康づくり情報を収録・蓄積。被保険者及びその家族一人一人に交付  し、導入効果や保険者との連携の在り方、事務処理体制等について調査研究するた  め、熊本県八代市において平成7年4月から3カ年間モデル実験を実施。  (5)―8  食品等の輸入手続の簡素化・迅速化を図るため、届出の自動審査等検疫所における  一連の事務手続きを電算化するとともに、税関の通関情報処理システムと連携して  検疫の待ち時間を大幅に短縮。  (5)―9  厚生省において食品等に係る国内外の規格基準、試験検査結果等のデータベースを  構築。  (5)―10  製薬企業及び全国約3000のモニター病院・薬局等からの副作用情報を医薬品副  作用被害救済・研究振興調査機構に集積し本省での迅速な分析、評価に活用。  (5)―11  医薬品などの承認、許可について平成7年6月よりフロッピーディスクを利用した  申請システムを導入。  (5)―12  研究の高度化、効率化等を図るため、厚生省の試験研究機関の研究情報を他の国内  ・国外研究機関と交換し必要に応じて国民にも提供。 主な課題  (5)―1  市町村等へのネットワークの拡張。  情報内容の充実。  担当者の研修  (5)―3  利用できる機種の拡大。  国民への情報提供。  (5)―4  システムの強化。  (5)―6  医療機関の参加促進。  (5)―8  ネットワークの拡大。  (5)―9  都道府県等とのオンライン化。  国民への情報提供。  (5)―10  データベースを活用した情報提供システム、ネットワークの構築。  (5)―11  申請処理手続の迅速化。  (5)―12  ネットワークの拡大。 公平なサービスの提供 施策の意義  (6)どこにいても同じようなサービスを受けたい。  (7)専門的なサービスを迅速・適切に受けたい。 該当する(考えられる)施策  (6)  へき地医療支援システム  (7)  臓器移植情報ネットワーク 施策の実施状況等  (6)  離島等のへき地の診療所と専門病院間で静止画像等を交換し、へき地診療を支援。  (7)  公平・適正な腎臓移植を実施するため、ドナー・レシピエント等の移植情報を一元  的に管理し、全国5ケ所のブロックセンターでレシピエントを選択する分散型の情  報システムを平成7年4月から構築。 主な課題  (6)  通信衛星の利用。 ※については未実施 生活に役立つ情報の供 施策の意義  (8)保健、医療、福祉サービスに関する様々な情報を知りたい。  (9)食品等の安全性等に関する情報を身近に知らせて欲しい。 該当する(考えられる)施策  (8)―1  福祉・保健情報ネットワーク  (8)―2  児童関連情報24時間ネットワーク  (8)―3  健康に関する情報を総合的に提供するネットワークシステム※  (9)―1  食品等の安全性に関する情報を提供するシステム※  (9)―2  中毒情報ネットワーク 施策の実施状況等  (8)―1  社会福祉・医療事業団において施設利用情報、福祉機器情報、シルバーサービス情  報等をデータベース化して都道府県の高齢者総合相談センターに情報を提供。  平成7年度から市町村等にネットワークを拡張。  (8)―2  (財)こども未来財団において、働く女性がいつでもどこでも自由に、必要な出産  ・育児関連の情報を引き出せるようコンビニエンスストア等に端末を設置し、市役  所等の公的機関の利用ができない休日・祭日や深夜等にも情報を提供する事業をモ  デル的に実施。  (8)―3  地域の身近な保健所や市町村保健センター、医療機関等で病気の予防や健康増進、  高度な診断等の健康情報が手軽に利用できる総合的なネットワークを整備。  (9)―1  現在厚生省等においてデータベース化している食品や医薬品等の安全性情報等を地  域の身近な機関において提供するシステム。  (9)―2  (財)日本中毒情報センターにおいて化学物質等の誤飲等による急性中毒の治療に  役立てるため、成分や毒性治療法等の情報を集積、提供。 主な課題  (8)―1  情報内容の充実。  (8)―2  利用頻度等実施状況の調査。  (9)―2  サービス拠点の増加。  情報入手の簡素化。 緊急時の健康や安全の確保 施策の意義  (10)緊急時に医療機関等に連絡がとれるようにして欲しい。 該当する(考えられる)施策  (10)―1  大規模災害時における保健医療福祉の情報連絡システム※  (10)―2  高齢者等緊急通報システム  (10)―3  救急医療情報システム  (10)―4  救急医療支援システム 施策の実施状況等  (10)―1  国立病院等において大規模な災害に強い情報連絡システムを整備するとともに、地  上系の通信手段の他に人工衛星等の無線通信の活用等複数の通信手段を備えたシス  テムを整備。  (10)―2  一人暮らし老人等の緊急時の連絡を確保するため、日常生活用具給付事業により通  報装置を給付するとともに、緊急時の協力員の確保など対象者の支援体制を整備。  (10)―3  全国33の救急医療情報センターにおいて救急医療施設における(1)診療科別医  師の存否(2)診療科別の手術及び処置の可否(3)病床の空床状況等の情報をコ  ンピュータにより収集し、医療施設、消防本部及び地域住民等からの問合わせに対  して受入施設を選定、回答。  (10)―4  救急車等で搬送途中の患者に対して通信衛星を利用して診断・治療の支援を行う実  験を実施。 主な課題  (10)―2  通報後の迅速な派遣体制の確保。  (10)―3  空床情報の迅速かつ正確な入力体制の整備。  ネットワークの拡大。  (10)―4  救急車等からの画像の送信等の技術の向上。 障害者等の生活の支援 施策の意義  (11)健常人と同じように生活したい。(視覚や聴覚に障害を持つ者や寝たきり      高齢者等の情報の確保・伝達) 該当する(考えられる)施策  (11)―1  情報福祉機器の開発・普及  (11)―2  点字情報ネットワーク  (11)―3  障害者情報ネットワーク 施策の実施状況等  (11)―1  (財)テクノエイド協会において防水型補聴器、音声案内付電子体温計、発声・筆談  が困難な者の意志伝達装置等の情報関連福祉機器を開発。また身体障害者の日常生  活用具給付事業において、重度障害者用意思伝達装置、ワードプロセッサー、携帯  用会話補助装置、文字放送デコーダー等の情報関連機器を給付。  (11)―2  (福)日本盲人連合会において点訳化した新聞情報などをパソコンネットワークを通  じて全国36の点字図書館に送り、点字プリンターで出力して視覚障害者に情報を  提供。  (11)―3  (財)日本障害者リハビリテーション協会において障害者の社会参加に役立つ各種情  報を収集・提供するとともに、障害者の情報交換の場を提供する障害者情報ネット  ワークを構築。 主な課題  (11)―1  研究開発体制の確立。  給付品の範囲の拡大。  (11)―2  未加入点字図書館等へのネットワークの拡大。  自宅へのネットワークの拡大。 人材の養成・確保 施策の意義  (12)保健、医療、福祉の人材を養成、確保して欲しい。 該当する(考えられる)施策  (12)―1  ナースセンター事業  (12)―2  福祉人材情報システム  (12)―3  バーチャルリアリティ技術等を利用した医療・福祉研究システム 施策の実施状況等  (12)―1  各都道府県のナースセンターで人材情報を収集し、提供。中央センターで情報を一  元的に集積し、提供。  (12)―2  各都道府県の福祉人材センターで、福祉人材の求人・求職情報を収集、提供。  (12)―3  国立がんセンター等でバーチャルリアリティ技術を用いた研修手法を開発中。 主な課題  (12)―2  情報内容の充実。  (12)―3  研修の拡大。 ※については未実施
関連制度の点検について (別紙3) 指摘されている事項 (1)遠隔医療が可能となるよう医師法第20条の規定を見直すべき。 指摘事項に関連する法令等 ・医師法第20条  「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、  自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をし  ないで検案書を交付してはならない。…」 厚生省の考え方及び今後の取り組み方針 (医師法第20条について) ・医師法第20条の規定の趣旨は、患者にとって適切な医療を提供するため、問診、  視診、触診、各種検査(血液検査、エックス線検査等)などの各種診察行為を現代  の医療水準から見て適切に組み合わせ、総合的に実施した上で、診断・治療を行わ  なければならないとするものであり、必ずしも対面による診療を求めているもので  はない。 ・現時点での情報通信の技術や基盤整備の状況では、初診時や症状の変化がある場合  などについては、対面により診断・治療を行う必要があるが、既に診断・治療を行  ってきた患者で、特に症状の急変が認められないような場合には、対面によらない  診断・治療が行われているところである。したがって、情報通信システムを介して  も、その時の医療水準からみて十分な診察が担保できるのであれば、医師法第20  条の無診察治療には当たらない。それが担保できる技術的基準について今後明らか  にしていく必要がある。 (遠隔医療について) ・厚生省としては、従来よりへき地や離島における医療の確保に努めるとともに、人  口の高齢化や患者のニーズの多様化等を踏まえ、今後は在宅医療についても積極的  に推進していく方針である。 ・情報通信技術の進展を踏まえた遠隔医療の技術、システムの開発・普及は、こうし  たへき地医療や在宅医療等を推進する上で重要な手段の一つであると考えており、  国として必要な施策の実施に努めていくこととしている。 指摘されている事項 (2)電子化された処方せんを「処方せん」として認めるべき。    (記名押印又は署名の廃止) 指摘事項に関連する法令等 ・医師法第22条 「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、  患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならな  い。…」 ・医師法施行規則第21条  「医師は、患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、  用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及び所在地又は医  師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。」 ・薬剤師法第26条  「薬剤師は、調剤したときは、その処方せんに、調剤済みの旨(螂螂)調剤年月日  その他厚生省令で定める事項を記入し、かつ、記名押印し、又は署名しなければな  らない。」 厚生省の考え方及び今後の取り組み方針 ・処方せんについては、  (1)処方せんの交付は医行為であり、医師のみが行いうるものであるため、処方     せんの交付者を特定する必要があること、  (2)処方せんは診療内容に関する重要な記録であり、適正に記載され、改ざんの     おそれがないよう保存されなければならないことから、  記名押印又は署名のなされた書面により交付するものとされている。 ・処方せんの電子化は、診療録等の電子化と相挨って医療機関や薬局の事務の効率化、  患者サービスの向上につながるものと考えているが、処方せんの交付者の特定やセ  キュリティ対策の標準化等の技術的課題の解決が必要であるだけでなく、関連制度  との整合性の確保、患者に対する処方せんの内容の開示の確保、特定の院外薬局へ  の患者の誘導の排除等について慎重な検討が必要であり、これらの課題について厚  生省として今後研究していく。 指摘されている事項 (3)医用画像や診療録の電子保存を認めるべき。 指摘事項に関連する法令等 ・医師法第24条  「診療録は、・・・5年間これを保存しなければならない。」 ・医療法第21条  「病院は、厚生省令に定めるところにより、…記録を備えておかなければならな  い。…」 ・医療法施行規則第20条  「診療に関する諸記録は過去2年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記  録、検査所見記録、エックス線写真並びに入院患者及び外来患者の数を明らかにす  る帳簿とする 」 ・平成6年3月健康政策局長通知  「エックス線写真等の法令に保存義務が規定されている医用画像情報については、  今般その電子媒体による保存に関して、技術的基準を別紙のとおり定め、これに適  合している画像関連機器を用いる場合には、エックス線写真等に代わって、光磁器  ディスク等の電子媒体に保存しても差支えないこととしたので、貴管下の関係者へ  の周知徹底を図られたい。」 厚生省の考え方及び今後の取り組み方針 ・検査所見記録等の諸記録については、これまで紙やX線フィルム等に限定して運用  してきたところである。 ・しかしながら、これらの諸記録の電子保存は医療機関等のインテリジェント化が進  む中で、病院事務の効率化、診断治療への支援等につながるものと期待される。 ・平成6年3月の健康政策局長通知により医用画像の電子媒体による保存の際の技術  的基準を明らかにするとともに、同年5月には「医用画像情報の電子保存のあらま  し」として解説書を発行した。 ・医用画像情報の電子保存については、通知の技術的基準に沿った共通規格を開発し  た。 ・診療録については、改ざんの恐れがないことが担保される必要があり、基本的には  書面による保存が必要であると解してきたところであるが、平成7年度から(財)  医療情報システム開発センターにおいて、その電子保存についての技術的課題等に  ついて研究を行っている。 指摘されている事項 (4)医薬品の店舗販売の原則を緩和して通信販売を認めるべき。 指摘事項に関連する法令等 ・薬事法第37条  「薬局開設者又は一般販売業の許可を受けた者、薬種商若しくは特例販売業者は、  店舗による販売…以外の方法により、…医薬品を販売し…てはならない。」 ・昭和63年3月薬務局監視指導課長通知  「…医薬品の販売に当たっては、その責任の所在が明確でなければならないこと、  消費者に対し医薬品に関する情報が十分に伝達されなければならないこと、医薬品  の品質管理が適切に行わなければならないこと等が要請されるところであり、これ  らに鑑み、従来より、一般消費者に対し薬剤師等が直接に効能効果、副作用、使用  取扱い上の注意事項を告げて販売するよう医薬品の対面販売を指導してきたところ  である。カタログ販売は、かかる対面販売の趣旨が確保されないおそれがあり、一  般的に好ましくないところである。」  「(カタログ販売の)取扱医薬品の範囲は容器又は被包が破損し易いものでなく、  経時変化が起こりにくく、副作用の恐れが少ないもので、一般消費者の自主的判断  に基づき服用されても安全性から見て比較的問題が少ないものであること。当面、  薬効群としては次の薬効群(15を指定)の医薬品に限ることとし、…」  厚生省の考え方及び今後の取り組み方針 ・昭和63年3月の通知に基づき、従来より一定の範囲の医薬品についてカタログ販  売を認めてきたところであるが、さらに平成7年3月の通知により、薬効群を追加  したところである。 指摘されている事項 (5)その他 ・遠隔医療等について診療報酬が認められていない。 指摘事項に関連する法令等 ・健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法(厚生省告示)他 厚生省の考え方及び今後の取り組み方針 ・ある医療技術を診療報酬上評価するかどうかについては、中央社会保険医療協議会  の議論を踏まえ決定される。厚生省としては、今後遠隔医療に関する技術の進展や  実施状況等に応じて、診療報酬上の評価について検討していく。

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