は じ め に 我が国は急速に高齢化しつつある。既に高齢化率は14%を超え、来たるべき21世 紀には4人に1人が65歳以上という社会を迎えることが予測されている。このような 高齢化の進展は、国民生活の様々な分野に影響を与え、家族や地域のあり方を含め我 が国の社会経済全体を大きく変えることとなるが、その中で、高齢社会にふさわしい 社会システムを如何に構築していくかは、全ての国民にとって最も重要な課題である。 なかでも、高齢者介護は喫緊の課題となっている。現在介護を要する高齢者は約 200万人にのぼっており、今後ますます増加することが見込まれている。今や介護問 題は、老後生活における最大の不安要因であると言って過言ではない。このため、高 齢者保健福祉推進十ヶ年戦略(ゴールドプラン)等に基づき、国、地方自治体そして 保険医療福祉関係者が一体となって介護サービスの基盤整備を進めているが、こうし た関係者の努力を踏まえ、さらに「国民誰もが、身近に、必要な介護サービスがスム ーズに手に入れられるようなシステム」を構築していくことが求められている状況に ある。 本研究会は、このような観点から、21世紀に向けた高齢者介護システムのあり方 について様々な角度から分析を行い、その基本的な論点や考え方を整理、検討する目 的で設置されたものである。7月に開催以来、内外の学識経験者からのヒアリングを 含め12回にわたり会議を重ねてきたが、その検討結果をとりまとめたので、ここに公 表する。 この報告書では、介護の基本理念として、高齢者が自らの意思に基づき、自立した 質の高い生活を送ることができるように支援すること、すなわち「高齢者の自立支援」 を掲げ、そして、新たな基本理念の下で介護に関連する既存制度を再編成し、「新介 護システム」の創設を目指すべきことを提案している。 我が国の高齢化のスピードは極めて速く、高齢社会に対する準備に充てることがで きる時間は限られている。残された貴重な期間内に、長寿社会へ向けて今後進むべき 方向を明らかにし、その実現のための施策を着実に講じていくことは、高齢社会の前 夜とも言うべき時代に生きる我々に課せられた責務である。また、高齢者介護の問題 は、高齢者だけでなく、現役世代にとっても、老親に対する介護ということのみなら ず、いずれ自らも高齢期を迎えるという意味で、自分自身の問題でもあることを十分 に銘記する必要がある。 この報告書が一つの契機となって、高齢者介護をめぐる問題について、国民各層に おいて幅広い議論が積み重ねられ、新介護システムの早期実現によって、全ての世代 の介護に対する不安が一刻も早く解消されることを期待したい。