レベル1.用語とコード体系の標準化 (1)病名コード  ICD10に準拠したコードを用いる。ICDの病名は病理学的命名が多くて、臨 床になじまないものがある。したがって、臨床で用いられる病名を列挙して、これと ICD10との対応表を作る必要がある。病院毎に分類体系やコードに対応する病名 が異なることを最少にしなければならない。このため、先行して対応表を作成した大学はこれを資料として公表し、デルファイ方式で統一化を図ることも一計であろう。  なお、UMINの病名小委員会は、MEDIS−DCと共同で、ICD9とICD 10との対応表を作成中(平成5年9月完成予定)であるので、現在、ICD9を採 用している大学は、これを参考としてICD10への移行を計画されることを勧めた い。 (2)医療機器・医療材料の統一コード  病院物流管理システムを開発するためには、医療機器や医療材料についての標準的 なコード体系の整備が不可欠である。医療機器や材料の種類は膨大で、医療機器販売 会社の取り扱い品目は30万種にも上るといわれる。コード化に先立って、商品の規 格化や標準化を行い、種類を大幅に減らすことを業界に望みたいが、短期間には困難 であろう。そこで、現在市販されているすべての機器や材料を識別するためのコード 体系とそれに基づく機器・材料データベースを早急に整備して、標準的な物流管理シ ステムの開発に取り入れるべきであろう。  日本医療機器関係団体協議会は、昭和62年に日本商品分類に採用された標準を作 成した。以来、改定と拡張を図ってきており、最近では、「医療機器・用品分類19 91」を発行し、さらに標準バーコードシステムの研究も行っている。また、受発注 の情報化を進めるために、業界共同の物品供給センターを設立するに至っている。本 委員会では、これらの現状を今後調査して、ユーザーと病院情報システムの立場から 評価を行い、機器・材料のコード標準化の推進を図りたい。 (3)医学用語の標準化  診療記録の電子化とその医学的活用は、病院情報システムの次の大きなテーマであ るが、このためには医学用語の標準化を避けては通れない。  わが國における医学用語標準化の活動は早くから行われていて、日本医学会や数多 くの分科会が用語集の編纂に取り組んできた。しかし、これらの活動は専門分野の視 点から行われる事が多く、相互の連絡が乏しく、日本医学会もこれらを取りまとめる には至っていない。  一方、米国では、1970年代から国際的な標準化をめざしての活動が活発で、代 表的なものでは、図書館学の面からの MeSH (Medical Subject Heading)、病理 学からSNOMED (Systematized Nomenclature of Medicine) が公表され、19 90年代になってからは、これらを統合するものとして、米国国立医学図書館(Na- tinal Library of Medicine NLM) によってUMLS (Universal Medical Language System) が開発されつつある。用語の標準化活動は、初期には用語の表記方法を統一 することに目標が置かれていたが、次第にそれぞれにコードを対応させて体系化しコ ンピュータでの利用を考慮したものに移行し、最近は、用語間の意味関係や文章中で の使用方法など、文法的な情報も収録したものに発展している。これは、電子化され た診療記録などの自然語解析が指向されるようになったためである。  わが国での医学用語の標準化活動は、1970年代以前の初期的なものに留まって いるが、本格的な国際的情報交換の時代を前にして、国際的な活動と歩調を合わせる 必要があり、今後は、 SNOMED や UMLS をベースとして、日本語の用語シ ソーラスを開発すべき時機にあると思われる。この問題は、本委員会の扱う枠を越え た大きな問題であるが、議題の一つとして取り上げ、意義や必要性についての提言を 行いたい。