■■■ うっ血性心不全治療薬服薬指導 【疾患名】MP うっ血性心不全(Congestive Heart Failure) 【有病率】 【好発層】 【予後】 HI 基礎疾患が治療可能の時→良好 ## 明らかな誘因のない時→半数生存の期間は6ヵ月から10年(拡張型心筋症)   食事中のNa制限と少量の利尿薬かジギタリスで改善する時→良好 【概要と成因】 HI 心不全とは心機能の異常が原因となって組織代謝の要求に相応した割合で心臓が血 液を駆出できなくなったり,あるいはたとえかろうじてポンプ作用は保たれたとし ても充満圧の異常な上昇を代償としている病態生理学的状態をいう. CS 〈成因:基礎的原因〉    @心機能障害     a.心筋そのものの変性に基づく張力の発生と収縮速度の減少     b.虚血による心筋細胞の消失によるポンプ機能障害     c.心臓の弁や心膜の解剖学的障害に基づく負荷条件の変化による駆出障害    Aうっ血性障害     a.交感神経緊張度の増大     b.腎血管の収縮     c.レニン−アンジオテンシン系の亢進     d.末梢のうっ血と浮腫 HI 〈成因:誘発因子〉    @肺塞栓 →肺動脈圧をさらに上昇させ右室不全を生じたり増強させる    A感染  →代謝要求の増大    B貧血  →心疾患との合併により酸素供給は不十分となる    C甲状腺中毒症および妊娠  →組織潅流保持のための拍出量の増大    D不整脈 a.不整頻脈があると心室充満に利用される時間間隔が減少する         b.多くの不整脈に特徴的に見られる心房収縮と心室収縮の解離のため に心房の補助的ポンプ機序が消失し心房圧が上昇しやすくなる         c.心室内伝導異常に伴うものは心室収縮の正常の同期性がなくなるた めに心筋機能がさらに障害される         d.完全房室ブロックに合併する著明な徐脈では心拍出量の著しい減少 を防止しようとすれば1回拍出量は著明に上昇しなければならない    Eリウマチ性心筋炎およびその他の心筋炎 →心筋の病変    F感染性心内膜炎 →弁膜障害等    G肉体的過労,精神的過労 →心代償不全を促進    H高血圧症  →動脈血圧の急激な亢進は心代償不全を来す    I心筋梗塞 【分類と症状】 HI 〈分類1〉    @高拍出性心不全:甲状腺機能亢進症,貧血,動静脈瘻,脚気,             Paget 病に続発する心不全    A低拍出性心不全:虚血性心疾患,高血圧,原発性心筋疾患,弁膜症,心膜疾患 に続発する心不全   〈分類2〉 ##  @急性心不全:急性心筋梗塞や弁膜腱索断裂患者 ##  A慢性心不全:ゆっくり進行する拡張型心筋症や弁膜障害   〈分類3〉    右心および左心不全:一方または双方の心室の後方に過剰の液体貯留がおこる. 最初は局在するが全身性静脈うっ血を呈するようになる.   〈分類4〉    収縮期性心不全と拡張期性心不全:充分な血液を駆出できないか,弛緩して正常 通りに充満できるかどうか   〈症状〉    @塩類と水分貯留    A呼吸困難    B起坐呼吸:横臥位での呼吸困難,腹部や下肢から胸部への体液再配分のため肺 毛細管静水圧の上昇を起こす.    C発作性(夜間)呼吸困難:睡眠中の呼吸中枢の抑制と心筋機能に対する交感神 経性刺激の減弱.    DCheyne-Stokes 呼吸:周期性呼吸ともいう 呼吸中枢の感受性低下により無呼 吸と過換気を繰り返す.    E疲労感および衰弱感:骨格筋への血液潅流減少.肝・門脈系のうっ血は食欲不 振・悪心・腹痛    F脳症状:老人で錯乱,集中力低下,記憶力障害,頭痛,不眠,不安 【治療薬剤の分類と特徴】 NP 〈薬剤名〉          〈特 徴〉   T.変力性薬    @ジゴキシン,ジギトキシン Ca2+の細胞内濃度増加    Aアミノフィリン Ca2+の細胞内濃度増加    Bドブタミン,ドパミン β受容体の刺激 IF  Cデノパミン β受容体の刺激 IF  Dベスナリノン       Ca2+の細胞内濃度増加   U.血管拡張薬    Eヒドララジン       末梢血管を直接弛緩    Fニフェジピン Ca拮抗薬    Gプラゾシン α1受容体遮断薬    Hカプトプリル ACE阻害薬   V.利尿薬    Iフロセミド ループ利尿薬 【禁忌の薬(理由)】 IR @塩酸プカインアミド(心房筋,心室筋の0相の立ち上がり速度を抑制 →興奮性 が低下し,心収縮力を弱める)   Aジソピラミド(@と同じ)   B硫酸キニジン(@と同じ)   C塩酸プロプラノロール(心収縮力を低下させる)   D塩酸ベラパミル(重篤なうっ血性心不全では心収縮抑制作用が強く現れる)   Eデキストラン40・乳酸リンゲル液(循環血液量が増加し症状が悪化)   Fヒドロキシエチルデンプン(Eと同じ) 【合併症と対策】 HI @急性肺水腫 →要緊急処置・Swan-Ganzカテーテルによる肺血管圧と動脈左の記録 ,2〜5mgモルヒネ(呼吸中枢抑制例ではナロキソン),酸素,坐位,フロセミド ・エタクリン酸(40〜100mg)・ブメタニド(1mg)のようなループ利尿薬,ニトロ プルシド(20〜30μg/min),即効性強心配糖体の飽和量の3/4量静注,アミノ フィリン(240〜480mg)静注 CS Aジギタリス中毒 →ジギタリスの投与中止,カリウム補給,リドカイン,フェニ トインの投与   B低ナトリウム血症 →利尿薬,特にサイアザイドの投与と経口的な水摂取の制限 の一時中止   C低カリウム血症 →Bと同じ   D循環血液量減少 →一時的に食塩制限と利尿薬投与を減ずる(しかし肺うっ血の 増強をもたらす) 【生活指導】 MP @肉体過労を避け,安静を保つ   A細胞外液が貯留しているとき食塩摂取制限 【薬物療法以外の特記すべき治療法】 CS @食事療法   A人工呼吸器による呼気終末陽圧呼吸(PEEP)   B人工透析体外濾過法(ECUM)   C腹膜透析,血液透析   D大動脈内バルーンパンピング法(IABP) HI E心臓移植 【疾病に対する注意すべき臨床検査】 LM @循環器機能検査(心エコー図→Swan−Ganzカテーテル) JL A生化学的検査    ナトリウム 135〜146mEq/l    カリウム 3.6〜5.0mEq/l 【疾病に関する用語】 MD @心係数:心拍出量を体表面積で割ったもの 正常値2.2L/min/m2   A前負荷:心収縮前の心臓が循環血を受け止めている荷重   B後負荷:血管系の抵抗で心臓が収縮する際の荷重 【メモ】 【参考文献】 ## Doctor's Advice