■■■ 悪性リンパ腫治療薬服薬指導 【疾患名】MP 悪性リンパ腫(CP Malignant Lymphomas) 【有病率】 【好発層】 MP 中高年に発症ピーク HI 米国ではHodgkin病は15〜35歳と50歳以上に発症ピーク ## 非Hodgkinリンパ腫(NHL)は金大では60才台にピーク.Hodgkin病はNHLの約 10%の頻度(日本では少ない) 【予後】 MP 適切な化学療法または放射線療法により長期生存可能 ## Hodgkin病の10年生存は約60%.   非Hodgkinリンパ腫の5年生存はBリンパ腫では StageTで90%,StageUで70%, StageV&Wは40〜50%,Tリンパ腫は20〜40%.(金大の例) 【概要と成因】 HI 免疫系の腫瘍で,リンパ腫はリンパ節あるいは腸,肺,皮膚のような実質臓器のな かのリンパ系組織に生じる(節外リンパ腫)  〈成因〉   @ウイルスがリンパ腫の原因の一つである   A環境と遺伝などの影響あり ## 上記1.2.のうち確実に証明されたものは特殊なリンパ腫のみ(HTLV,EBVな ど) 【分類と症状】 HI @悪性リンパ腫はHodgkin病と非Hodgkinリンパ腫(リンパ球性リンパ腫)に分類さ れる(リンパ球性リンパ腫の言葉は日本では一般的でない ##)   AHodgkin病の90%はリンパ節に由来し,非Hodgkinリンパ腫では実質臓器がしばし ば侵され,リンパ節由来のリンパ腫は60%である   BHodgkin病は特異的な染色体異常は同定されていない,非Hodgkinリンパ腫では染 色体異常が明らかにされている(14染色体を巻き込んだ転座 8;14 11;14 14; 18)例が多い   CHodgkin病は巨細胞(RS細胞)の出現が特徴である    RS(Reed-Sternberg細胞:Hodgkin細胞) ## @Hodgkin病は LP(リンパ球優位型),NS(結節硬化型),MC(混合細胞型 ),LD(リンパ球減少型)の4型に分類→予後が違う   A非Hodgkinリンパ腫はB細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫に分類または濾胞性リン パ腫とびまん性リンパ腫に分類  〈主な症状〉  1.Hodgkin病:     通常無症状,大小さまざまな無痛性のゴム様のリンパ節腫大,発熱,盗汗,体 重減少,そう痒感   2.非Hodgkinリンパ腫:     胃腸管への浸潤,肺,骨,消化器,皮膚,他臓器への個々あるいは重複した病 変あり,全身症状は一般的でない(Hodgkin病は有り)  〈リンパ腫の病期分類〉HI CS MP   Ann Arbor分類:Hodgkin病のために作られた分類でNHLにも流用されている −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   StageI |一つのリンパ節領域(T)または単一リンパ組織以外の       |臓器または部位(TE)の侵襲   StageU |横隔膜の同側で二つ以上のリンパ節領域(U)または横       |隔膜の同側でリンパ組織以外の臓器または部位の限局性       |侵襲と一つ以上のリンパ節領域の侵襲(UE)   StageV |横隔膜の両側にわたるリンパ節領域の侵襲(V)更に脾       |への侵襲を伴う(VS)またはリンパ組織以外の臓器ま       |たは部位の限局性侵襲を伴う(VE)臓器または部位と       |脾蔵の両者の侵襲を伴う(VSE)   StageV1|上腹部のリンパ管構築に限られた侵襲   StageV2|下腹部リンパ節に限られた侵襲   StageW |一つ以上のリンパ組織以外の臓器または組織へのびまん       |性または散布性侵襲で,リンパ節腫大の有無を問わない −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   E:リンパ節以外の部位, S:脾臓侵襲    以下の全身症状を欠くものをA,いずれか有するものをBとする    1)38℃以上の原因不明の発熱,2)盗汗,3)入院前6か月間に10%以上の原因不 明の体重減少 【治療薬物の分類と特徴】MP NP    〈薬剤名〉                  〈分類と特徴〉   @ シクロホスファミド(エンドキサン) CPA     アルキル化薬   A ダカルバジン (ダカルバジン) DTIC     アルキル化薬   B プロカルバジン(ナツラン)   PCZ     その他(UD アルキル化薬)   C ビンクリスチン(オンコビン) VCR     植物アルカロイド類   D ビンプラスチン(エクザール)  VLB     植物アルカロイド類   E エトポシド(ベプシド,ラステット)VP-16  植物アルカロイド類   F ドキソルビシン(アドリアシン) ADM      アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質   G ブレオマイシン(ブレオ)     BLM     その他の抗腫瘍性抗生物質   H メトトレキサート(メソトレキセート)MTX     代謝拮抗薬   I プレドニゾロン(プレドニン)        ホルモン類 MP Hodgkin病の化学療法  (番号は上記の薬剤を示す)  −−−−−−−−−−−−−−−−   C-MOPP療法 |@+B+C+I (完全寛解率 80%)   ABV(D)療法|A+D+F+G                  −−−−−−−−−−−−−−−−                CS @原則として stageT,Uは放射線治療,stageV,Wの治療はC-MOPPとAB V(D)療法   AC-MOPP→COPPともいう    (MOPPのナイトロジェンマスタード(クロルメチン)の代わりにシクロフォ スファミドを使用) ## @米国ではMOPP療法が有名,ABVD療法はイタリアで開発   A本学ではナイトロジェンマスタード(クロルメチン)の代わりナイトロミンを使 用 MP 非Hodgkinリンパ腫(リンパ球性リンパ腫)の化学療法  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   CHOP療法  |@+C+F+I (完全寛解率 50%)        Pro MACE療法|@+E+F+H+I+(leucovorin)         MACOP-B 療法|@+C+F+G+H+I+(co-trimoxazole)    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−     co-trimoxazole:バクタ ## CHOP療法は一般的であり,MACOP-B療法は流行になりつつある 【禁忌の薬(理由)】 IR ヒト成長ホルモン(コルポルモン,ノルディトロピン,ジェノトロピン,ヒューマ トロピン)→(細胞増殖作用のため悪性腫瘍も増殖させる可能性がある) 【合併症と対策】 HI @胃腸管に浸潤,黄疸,中枢神経系へ浸潤,肺浸潤,皮膚浸潤,骨髄浸潤,血液学 的合併症,代謝異常,高カルシウム血症,血清タンパク異常   A治療による合併症→放射線障害,化学療法剤による毒性,不妊症,続発性悪性腫 瘍の発生 【生活指導】 【薬物療法以外の特記すべき治療法】 MP @放射線療法(Hodgkin病)    1.単独放射線療法(stageUAまで)    2.化学療法との併用(化学療法を先行し,その後放射線療法)   A自家骨髄移植(非Hodgkinリンパ腫の再発例,難治例) 【疾病に対する注意すべき臨床検査】 LM @腫瘍細胞マーカー:    1.Hodgkin病     a.増殖している細胞は単一でない     b.Reed-Sternberg巨細胞が病変部に出現    2.非Hodgkinリンパ腫    a.濾胞性リンパ腫:        中細胞型,混合型,大細胞型(B細胞)     b.びまん性リンパ腫:        小細胞型(B(T)細胞);中細胞型,混合型,大細胞型(B・T細胞 );リンパ芽球型(幼若T細胞);多形細胞型(成熟T細胞);バーキ ット型(幼若B細胞)    * B細胞にcleaved cell(割れ目のある細胞)    * T細胞にconvoluted cell(複雑なねじれを示し脳回状,鶏足状,腎型を示す) HI @血球計算と血沈 A血清アルカリホスファターゼ B腎機能検査   C肝機能検査 ## LDHやβ2マイクログロブリンがマーカーとなる 【疾病に関する用語】 HTLV:Human T cell Leukemia/Lymphoma Virus EBV:Epstein-Barr Virus 【メモ】 CS @我が国ではHodgkin病は全リンパ腫の15%,非Hodgkinリンパ腫は全リンパ腫の85 %で,びまん性リンパ腫大細胞型が大半である   A腫瘍細胞の破壊による高尿酸血症の予防にアロプリノール(ザイロリック)300 mg/日 ## @リンパ腫ではビンクリスチンン(オンコビン)も重要な薬剤である.最近はエト ポシド,メソトレキセートを用いる事も多い   A金大ではHodgkin 病にはMOPP(但し,Mはナイトロミン)非Hodgkinリンパ 腫(NHL)にはCHOP,CHOP-B,HBEPを用いることが多い   BHBEPは金大のオリジナルメニュー    (アドリアシン,BH−AC,エトポシド,プレドニン) MG @CHOP-BはCHOPにブレオをくわえたもの   ABH-ACはAra-C(シタラビン(キロサイド))の誘導体であるベヘノイル Ara-C(エノシタビン(サンラビン))のこと 【参考文献】 ## Doctor's Advice