■■■ 肝炎治療薬服薬指導 【疾患名】MP 肝炎(CP Hepatitis) 【有病率】約200万人/日本   HB抗原の知識より:厚生省肝炎研究連絡協議会・B型肝炎研究班 【好発層】 MP 〔ウイルス性〕    A型肝炎 →20〜40代前半に多い    B型肝炎 →20〜30代に多い    C型肝炎 →全年齢 【予後】 HI 〔ウイルス性〕    A型肝炎 →ほとんど1〜2カ月で完全に治癒する.慢性化しない.    B型肝炎 →@急性の場合約90%以上が3カ月以内に完全に治癒する.          Aキャリアから発症した場合約10%が慢性となり肝硬変へと移行す る.    C型肝炎 →慢性化することが多い   〔その他〕    薬剤性 →回復した場合,ほとんど肝機能は正常化する    アルコール性 →脂肪肝の場合,摂取中止で速やかに正常化する 【概要と成因】 MP  急性肝炎はウイルス,アルコール,薬物が原因で起こる肝の急性炎症である. 急性肝炎の原因となるウイルスには,A型肝炎ウイルス,B型肝炎ウイルス, C型肝炎ウイルス等がある.    劇症肝炎とは急激に起こる肝の広範性壊死に基づいて意識障害(肝性昏睡)を主 徴とする急性肝不全症状が現れる肝炎である.劇症肝炎の成因としてはウイルス 性のものがわが国においては90%を占めるとみなされている.    慢性肝炎は病理組織学的な疾患概念であり,門脈域への単核球の浸潤がその特徴 であるが,ウイルスを含めさまざまな原因による門脈域を主座とした慢性炎症を 含む. 【分類と症状】 MP 〈原因による分類〉    A型肝炎 経口感染で流行性 ##  B型肝炎 非経口感染で輸血後肝炎のごく一部    C型肝炎(これまでウイルスが確認されず非A非B型肝炎に含まれていた): 輸血後肝炎の約90%    D型肝炎(デルタ肝炎:HBV存在下で感染)     肝炎ウイルス以外のウイルスによるもの(EBウイルス等)    アルコール性肝炎    薬物性肝炎(肝毒性肝炎,過敏性肝炎)   〈経過による分類〉    急性肝炎→A型肝炎,B型肝炎,非A非B型肝炎 ##  劇症肝炎→肝炎症状出現後8週以内に意識障害が出現するもの ##  慢性肝炎→持続性,非活動性,活動性に分類される.HBV,HCVの持続感染 に起因する.   〈主な症状〉    倦怠感,疲労感,食欲不振,吐き気,腹部の違和感,右上腹部痛,濃色尿,白色 便,黄疸 【治療薬剤の分類と特徴】 MP 〔慢性肝炎時〕    @プロヘパール    Aポリエンホスファチジルコリン(EPL)    Bマロチラート(カンテック)    Cグリチルリチン製剤(グリチロン,強力ミノファーゲンC)    Dウルソデオキシコール酸(ウルソ)    Eグルタチオン(タチオン)    Fチオプロニン(チオラ)    Gプロトポルフィリン(ナップ)    Hメチルメチオニンスルホニウムクロリド(キャベジンU)    Iアデフラビン    J小柴胡湯    K桂枝伏苓丸   〔B型肝炎の予防〕    L抗HBs人免疫グロブリン(ヘブスブリン)    MB型肝炎ワクチン   〔その他〕    Nインターフェロン-α(スミフェロン)    Oインターフェロン-α-2a(キャンフェロンA)    Pインターフェロン-α-2b(イントロンA)    Qインターフェロン-β(フェロン) 【禁忌の薬(理由)】 IR @メチルドパ(肝機能異常)   Aフェニペントール(肝細胞を刺激し急性肝炎症状を増悪)   Bセクレチン(肝細胞を刺激し急性肝炎症状を増悪)   Cダントロレンナトリウム(可逆性の肝機能異常)   Dカンシル酸トリメタファン(肝機能障害の発現→重度の肝疾患に禁忌)   Eアルプロスタジル(重度の肝疾患で血行不全による症状悪化の恐れ)   Fプロゲステロン(重篤な肝疾患での肝機能障害)   Gクエン酸クロミフェン(肝障害の増悪)   H沈降破傷風トキソイド(急性期,増悪期,活動期で予期せぬ副作用) 【合併症と対策】 MP 〈劇症肝炎あるいは劇症化時〉   @消化管出血 →H2レセプター拮抗剤   A播種性血管内血液凝固症候群(DIC)          →メシル酸ガベキサート,ATV製剤の投与   B急性腎不全 →血液透析   C脳浮腫   →マンニトール,グリセオールの投与   D感染症   →γグロブリン製剤,広域スペクトラム抗生剤投与 【生活指導】注:@ABは慢性肝炎 MP @黄疸,高度の自覚症状,トランスアミナーゼ300KU以上の場合は安静臥床 →肝血流量を増加させる   Aトランスアミナーゼが150KUのときは激しいスポーツの禁止   B高カロリー,高蛋白食をすすめる   C飲酒は原則として禁ずる 【薬物療法以外の特記すべき治療法】 MP 〈劇症肝炎時の特殊療法:薬物療法も含む〉   @ステロイド療法   Aグルカゴン−インスリン療法   B特殊組成アミノ酸輸液   C血漿交換療法 【疾病に対する注意すべき臨床検査】 JL @GOT,GPT(肝疾患により上昇)    (急性肝炎GOT<GPT,慢性肝炎GOT>GPT)   Aプロトロンビン時間(肝障害により延長)   B血清ビリルビン(軽度〈10mg/dl,中等度10〜20mg/dl,高度〉20mg/dl) 【疾病に関する用語】 MD GOT(グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ)   GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)  〈ウイルス関連〉   A型肝炎   HAV(A型肝炎ウイルス)   B型肝炎   HBV(B型肝炎ウイルス)   HBs抗原(B型肝炎表面抗原:B型肝炎ウイルスの膜タンパク)   HBe抗原(B型肝炎内部抗原:ウイルス複製に関する抗原)   HBc抗原(B型肝炎コア抗原:ウイルス複製に関する抗原)   HBs抗体(過去にHBV感染を経験) ## HBe抗体(ウイルス量の減少あるいは肝炎沈静化のマーカー) ## HBc抗体(過去にHBV感染あるいは持続感染例)   C型肝炎   HCV(C型肝炎ウイルス)   HCV抗体(HCVの感染抗体)   D型肝炎   HDV(D型肝炎ウイルス:別称デルタウイルス) 【メモ】   @HBs抗原による汚染事故対策    1.抗HBs人免疫グロブリン(ヘブスブリン)の筋注    2.HBワクチン(抗HBs人免疫グロブリンと併用する)   A新生児のB型肝炎予防    1.抗HBs人免疫グロブリン(ヘブスブリン)の筋注    2.HBワクチン(抗HBs人免疫グロブリンと併用する)   B消毒薬    1.グルタールアルデヒド(ステリハイド)    2.次亜塩素酸ソーダ 【参考文献】   C型肝炎関連:モダンメディシン 1990−5 ## Doctor's Advice