2[解説]医薬品の適正使用のために    塩酸イリノテカンの適正使用について  塩酸イリノテカンはI型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を有する新しいタイプの 抗癌剤である。平成6年1月の承認から平成9年3月末までの約3年間で本剤の副作 用との因果関係が否定できない死亡症例が42例報告されたことから、平成9年7月 に緊急安全性情報が配布され、適正使用の推進が図られたところである。骨髄機能抑 制の発現は症例によりその時期、程度は多様であり、必ずしも予知し得ない。本稿で は、緊急安全性情報の詳細な解説を行うとともに症例を紹介する。 +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 成分名            | 該当商品名             | +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |塩酸イリノテカン        |カンプト注(ヤクルト本社)      | |                |トポテシン注(第一製薬)       | +−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |薬効分類等|I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍剤        | +−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |効能効果 |小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又| |     |は再発)、結腸・直腸癌(手術不能又は再発)、乳癌(手術不能又| |     |は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)  | +−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+  塩酸イリノテカンはI型DNAトポイソメラーゼ阻害作用を有する新しいタイプの 抗癌剤であり、平成6年1月に小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌を適用 として承認され、更に平成7年9月に胃癌(手術不能又は再発)、結腸・直腸癌(手 術不能又は再発)、乳癌(手術不能又は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジ キンリンパ腫)の効能が追加された。本剤は治験時(効能追加時を含む)において 1,245例に投与され因果関係が否定できない死亡症例が55例認められたことか ら、発売当初から使用上の注意に「警告」欄が設けられ、骨髄機能抑制のある患者、 感染症を合併している患者、下痢(水様便)のある患者、腸管麻痺・腸閉塞のある患 者、間質性肺炎又は肺線維症のある患者、多量の腹水・胸水のある患者、黄疸のある 患者、本剤に対し過敏症の既往歴のある患者を禁忌にし、注意喚起を行ってきた。更 に、平成7年9月の一部変更承認時には、再審査期間が終了するまでの間、本剤を投 与された全症例を調査することが承認条件として付され、厳重な管理のもとで使用さ れていた。しかし、発売後も使用上の注意が守られなかったり、使用が不適切で重篤 な骨髄機能抑制に起因する死亡症例の報告がみられている。本剤は発売以降平成9年 3月末までに、5,445例に使用され、本剤による副作用との因果関係が否定でき ない死亡症例が42例報告されていることから、厚生省は平成9年7月に緊急安全性 情報を配布するよう関係企業に指示し、医療機関に対し注意喚起を行ったところであ る。  以下に緊急安全性情報の内容について詳細な解説を加える。 (1)症例の紹介  今回新たに加えた注意喚起のうち、前治療により白血球又は血小板数が短期間に減 少をした場合に投与し骨髄機能抑制が起こった事例について表1に紹介する。症例N o.1は最初の投与日は白血球数が5100/mm3、2回目の投与日である8日目 には白血球数が4000/mm3になり減少傾向を示している。2回目の投与を行っ た後、6日目に急激な骨髄機能抑制が起こり、白血球数が500/mm3まで減少し、 最終的に死亡した症例である。  症例No.2は白血球数に関しては、初回投与時と2回目投与時を比べると、2回 目投与時の方が増えているものの、血小板数に着目すると25.6万/mm3から 14.3万/mm3に約44%減少している。この場合も2回目の投与後に急激な骨 髄機能抑制を起こしている。その他の例も、いずれも白血球数あるいは血小板数が過 去1週間以内で30%以上減少している。このように、骨髄機能が低下している徴候 があらわれた場合には特にその投与の有用性を慎重に考慮し、投与を中止するか、回 復するまで延期することも十分に考えるべきである。また、従来の注意喚起では白血 球数だけに着目していたが、血小板数も観察して、慎重に投与の適否を判断する必要 がある。  表2は、初回投与時には投与可能とされたが、2回目の投与時には禁忌に該当した にもかかわらず投与され、重篤な骨髄機能抑制が生じ、死亡した症例である。このよ うに骨髄機能抑制の発現は症例によりその時期、程度は多様であり、必ずしも予期し 得ないので十分な注意を要する。 (2)具体的注意点 a.使用に際して  本剤は、投与後の骨髄機能抑制の発現が予知し難く、副作用が発現した場合に適切 な処置を必要とすることから、必ず癌の化学療法に十分な経験を持つ医師のもとで使 用しなければならない。また、投与前並びに投与後に頻回の血液検査等を行い、投与 の適否の判断を慎重に行い、本剤の投与が適切と判断される症例についてのみ投与す ること。 b.インフォームドコンセント  本剤は重篤な副作用が生じるおそれがあるので、使用にあたっては患者又はその家 族に危険性について十分に説明を行い、本剤投与の治療上の有用性について同意を得 てから投与を開始すること。 c.末梢血液検査の実施と確認  本剤を投与する際には投与前24時間以内に、必ず末梢血液検査を実施し、骨髄機能 を確認すること。また、検査結果を必ず確認してから投与の適否を判断すること。 d.骨髄機能抑制が疑われる場合の投与中止  本剤は、骨髄機能抑制のある患者は従来より禁忌になっているが、これまでは白血 球数が3000/mm3未満の場合のみの注意喚起であった。今回の死亡症例の分析に より、新たに血小板数が10万/mm3未満の場合も使用禁忌とし、「警告」欄に追記 した。  また、2回目以降の投与時の白血球数が3000/mm3以上かつ血小板数が10万 /mm3以上の場合であっても、白血球数や血小板数が急激な減少傾向にある患者は、 既に骨髄機能抑制の兆候があらわれていると考えられる。このような場合に本剤を投 与すると急激に骨髄機能抑制を生じることがあるので、今回新たに、白血球数又は血 小板数が急激な減少傾向にある患者は投与を中止又は延期するよう「警告」欄に追記 した。減少傾向の目安としては、これまでの症例を分析した結果、白血球数又は血小 板数が2回目投与前1週間の最高値に比べ30%以上減少している場合に、投与後に 重篤な骨髄機能抑制が起こっていることから30%位を目安に患者の状態を慎重に観 察し投与の適否を判断する必要がある。 e.投与後も引き続き末梢血所見を観察すること  一般的に薬剤による骨髄機能抑制は投与後10日前後で生じるとされている。本剤 投与後は必ず頻回に末梢血所見を観察するべきであり、1週間毎の投与を行う場合は 特に注意深く観察を行う必要がある。また、骨髄機能抑制の傾向が認められた場合は、 その程度に応じて本剤の投与の中止に加え、次のような対策を講じる必要がある。 f.骨髄機能抑制が起こったときの処置  白血球減少:好中球数が1000/mm3以下になったときは易感染性となり、感染 予防対策を始める。更に500/mm3以下になったときはその危険が増大するためG −CSFの投与も考慮する。(ただし、癌種によってはG−CSFの投与は適応とさ れていないことをあらかじめ知っておき、適切に対処すべきである。)  血小板減少:血小板数が2万/mm3以下になったときは致死的な出血の危険が大き く、血小板輸血を行い出血の予防に努める。  貧血:貧血の進行は循環系を含む全身状態に大きな影響をもたらすために十分な診 察を行い適切に対処する。 (3)今後の安全対策  本剤は冒頭でも述べたとおり、発売時から使用上の注意に「警告」欄を設け、十分 な注意喚起を行っていたが、今回、新たに白血球数、血小板数の急激な減少がある場 合、投与を中止するなどの注意の徹底を図った。更に、厚生省は適正使用をより徹底 するため、患者登録時に医師が企業に提出しているチェックリストを、今後、2回目 の投与以降もチェックでき、投与の適否を判断するのに役立つような様式に改訂する とともに、チェックリストを活用していない医療機関には今後納入をしないなど関係 企業を指導したので、使用上の注意を熟読の上、適正な使用を徹底されるようお願い する。また、骨髄機能抑制が起こった場合や、骨髄機能抑制の兆候があらわれた場合 には、投与を中止して適切な処置を行うべきである。 <<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>> <塩酸イリノテカン> +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |                警告                 | |本剤の投与にあたっては、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分に説明| |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜| |し、同意を得てから、投与を開始すること。骨髄機能抑制による致命的な副作| |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜| |用の発現を回避するために、特に以下の事項に十分注意すること。     | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜     | |1)投与予定日(24時間以内)に血液検査を必ず実施し、結果を確認してか| |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜| |ら、本剤投与の適否を慎重に判断すること。               | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜               | |2)投与予定日の白血球数が3000/mm3未満又は血小板数が10万/  | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 | |mm3未満の場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。        | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜        | |3)投与予定日の白血球数が3000/mm3以上かつ血小板数が10万/  | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 | |mm3以上であっても、白血球数又は血小板数が急激な減少傾向にあるなど、 | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 | |骨髄機能抑制が疑われる場合には、本剤の投与を中止又は延期すること。  | |〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 一般的注意 4)骨髄機能抑制、高度な下痢等の重篤な副作用が起こることがあり、ときに致命的 な経過をたどることがあるので、頻回に臨床検査(血液検査、肝機能検査、腎機能検 査等)を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には減 量、休薬等の適切な処置を行うこと。投与後2週間は特に頻回に末梢血液検査を実施                  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 するなど、極めて注意深く観察すること。また、使用が長期にわたると副作用が強く 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 あらわれ、遷延性に推移することがあるので投与は慎重に行うこと。  (1)骨髄機能抑制   本剤の投与にあたっては、白血球の変動に十分留意し、投与予定日の白血球数が   3000/mm3未満又は血小板数が10万/mm3未満の場合には、本剤の投与             〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   を中止又は延期すること。投与予定日の白血球数が3000/mm3以上かつ血小   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   板数が10万/mm3以上であっても、白血球数又は血小板数が急激な減少傾向に   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   あるなど、骨髄機能抑制が疑われる場合には、投与を中止又は延期すること。ま   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   た、白血球数が異常な高値を示す患者及びCRPが異常値を示すなど感染症が疑   われる患者では、投与後に白血球の急激な減少が起こることがある。このような   場合には、投与予定日の白血球数が3000/mm3以上かつ血小板数が10万/                             〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   mm3以上であっても、骨髄機能の回復を十分に確認してから投与を行うこと。   〜〜〜〜〜                       (慶応大学医学部教授 池田康夫) 表1 症例〔本剤の1週間間隔での投与において、各クール2回目投与時に骨髄機能   抑制が疑われる場合での本剤投与と白血球減少、血小板減少の出現(死亡例)〕 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (1クール目)   d1  d2  d8  d14  d16 No.|(/mm3)の推移            〜     〜  1 |(注1)       白血球(/mm3)  5100 6900 4000  500  400    |           血小板(万mm3)  20.9 22.6 16.5  5.0  2.4    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  42% *       |白血球減少(1000/mm3未満)6日    |  血小板  27%         |血小板減少(3万/mm3未満)8日 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (1クール目)   d1  d8  d12  d14 No.|(/mm3)の推移            〜  〜  2 |(注1)       白血球(/mm3)  7200 8500  400  200    |           血小板(万mm3)  25.6 14.3  7.6  1.9    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  (増加)        |白血球減少(1000/mm3未満)4日    |  血小板  44% *       |血小板減少(3万/mm3未満)6日 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (1クール目)   d1   d5  d8  d14 No.|(/mm3)の推移            〜      〜  3 |(注1)       白血球(/mm3)  8350 10500 3610 560    |           血小板(万mm3)  23.0  16.0 11.0 5.4    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  66% *       |白血球減少(1000/mm3未満)6日    |  血小板  44% *       |血小板減少(3万/mm3未満)−− −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (1クール目)   d1  d2  d8  d13 d16 d18 No.|(/mm3)の推移            〜     〜  4 |(注1)       白血球(/mm3)  6690 8760 4060 500 200 430    |           血小板(万mm3)  33.2 36.7 25.5 16.8 0.8 0.5    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  54% *       |白血球減少(1000/mm3未満)5日    |  血小板  31% *       |血小板減少(3万/mm3未満)8日 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (2クール目)   d1   d8   d13 No.|(/mm3)の推移            〜   〜  5 |(注1)       白血球(/mm3)  5570  3510  320    |           血小板(万mm3)  29.4  24.1  9.4    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  37% *       |白血球減少(1000/mm3未満)5日    |  血小板  18%         |血小板減少(3万/mm3未満)−− −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (2クール目)   d1   d8   d10 No.|(/mm3)の推移            〜   〜  6 |(注1)       白血球(/mm3)  7400  5400  200    |           血小板(万mm3)  26.0  13.0  2.6    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  27%         |白血球減少(1000/mm3未満)2日    |  血小板  50%         |血小板減少(3万/mm3未満)2日 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− 症例 |白血球・血小板数  (6クール目)   d1   d8   d13  d14 No.|(/mm3)の推移            〜   〜  7 |(注1)       白血球(/mm3)  7600  4300  400  800    |           血小板(万mm3)  40.1  19.7  10.4  2.7    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−    |2回目(d8)投与日での減少率(注2)|副作用出現時期(注3)    |(*は30%以上減少)         |    |  白血球  43% *       |白血球減少(1000/mm3未満)5日    |  血小板  51% *       |血小板減少(3万/mm3未満)6日 −−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− (注1)各クールでの本剤1回目投与日をd1として表記(下線は投与日)                    〜      〜〜   [d1:本剤1回目投与日、d2:投与後2日目、d8:投与後8日目(2回目投与    〜                   〜    日)、等] (注2)2回目投与前1週間以内の最高値と比較した2回目投与日(d8)での減少率                                〜     (2回目投与前1週間以内の最高値)−(2回目投与日の検査値) 減少率=−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−X 100(%)           (2回目投与前1週間以内の最高値) (注3)2回目投与日(d8)から白血球減少(1000/mm3未満)、血小板減少(3万/            〜    mm3未満)出現までの日数 (注4)症例No.1、3は単剤使用例、その他は他剤併用例 表2 症例の概要 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |No.1                            企業報告| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |患者 性         女                      | |   年齢        70代                    | |   使用理由[合併症]  肺癌[C型慢性肝炎]             | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |投与量・投与期間:塩酸イリノテカン 70mg/m2/週、2回       | |         シスプラチン 60mg/m2/週、2回         | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |副作用−経過及び処置                          | |初発の肺癌に対し、塩酸イリノテカン70mg/m2とシスプラチン60mg/ | |m2の投与を行った(白血球4100)。その7日後に同様に塩酸イリノテカン | |とシスプラチンの2回目の投与を行った(白血球2800)。2回目投与の当日| |から下痢がみられ、その後grade4と悪化した。2回目投与の5日後には白| |血球500、血小板3.2万と急激に減少し、発熱も認めたため、G−CSF、| |抗生物質の投与を開始した。6日後には血小板1.3万となり出血傾向を認めた| |ため血小板輸血を開始した。11日後からはイレウスとなり、12日後には肺炎| |による呼吸困難が出現し人工呼吸器管理となった。14日後には消化管出血によ| |るショックを来し、同時に肺炎悪化により、呼吸不全、循環不全となり死亡した| |。                                   | |                                    | |臨床検査値                               | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |          投与 2回目      2回目投与後        | |          開始日 投与日                    | |                 2  5 6 7  9 11 12  13  14 | |                 日  日 日 日  日 日 日  日  日 | |                 後  後 後 後  後 後 後  後  後 | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |下痢(grade*)   0   0   2  4 −  4  4  3  2  2  2 | |腸管麻痺(grade*) 0   0   0  0 −  0  0  3  4  4  4 | |ヘモグロビン(g/dL)12.8 12.7 11.5 10.1 − 10.5 10.9 9.6 7.6 6.5 5.5 | |白血球(/mm3)   4100 2800 2700 500 − 300 200 200 300 1200 3200| |血小板(x10000/mm3)17.5 11.1 6.9 3.2 1.3 1.3 0.7 0.3 0.2 0.1 0.1| |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |*:日本癌治療学会の「副作用の記載様式」による             | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |併用薬:塩酸ロペラミド、フィルグラスチム、抗生物質、人免疫グロブリン、 | |    ファモチジン                          | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |No.2                            企業報告| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |患者 性         女                      | |   年齢        60代                    | |   使用理由[合併症]  卵巣癌[乳癌(手術後再発無し)、慢性膵炎]  | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |投与量・投与期間:塩酸イリノテカン 80mg/週、2回         | |         シスプラチン 80mg/週、1回           | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |副作用−経過及び処置                          | |卵巣癌に対し、塩酸イリノテカン80mgとシスプラチン80mgの投与を行っ| |た〔白血球3900(4日前)〕。6日後に白血球減少、好中球減少、血小板減| |少が発現したが、7日後に2回目の塩酸イリノテカン80mgの投与を行った〔| |白血球2900(前日)〕。2回目投与翌日に下痢が発現した。3日後に白血球| |700となり、G−CSFと抗生物質の投与を開始した。また全く摂食できなく| |なり、IVH管理となった。4日後に発熱、CRP高値が認められ、白血球減少| |による重症感染症と判断され、抗生物質の投与を開始した。5日後に血小板が1| |.6万に低下し、血小板輸血を開始した。6日後に水様便あるも、同時にイレウ| |ス様症状があったため、止痢剤投与せず。同日夜〜翌朝に水様便が続いた。7日| |後に白血球100に低下した。下痢が更に悪化したため、モルヒネと止痢剤を投| |与。消化器症状は軽減されたが、8日後に突然心停止となり、蘇生術行うも、循| |環不全により死亡した。                         | |                                    | |臨床検査値                               | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |       投与前  2回目       2回目投与後        | |            投与前  1  2  3  4  5  6  7| |            日    日  日  日  日  日  日  日| |                 後  後  後  後  後  後  後| |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |Performance    1    3    4   4   4   4   4   4   4| |  status(PS)                            | |下痢(grade*)  0    0    3   0   2   1   2   4   4| |感染症(grade*) 0    0    0   0   0   3   4   4   4| |ヘモグロビン  10.5   10.9   −  11.6 10.3  9.0  7.7  8.6 7.8| |   (g/dL)                             | |白血球(/mm3) 3900   2900   −  2000  700  500  400  300 100| |血小板     16.4   12.0   −  7.5  4.6  2.7  1.6  4.2 2.5| | (x10000/mm3)                             | |−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−| |*:日本癌治療学会の「副作用の記載様式」による             | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |併用薬:塩酸ロペラミド、フィルグラスチム、抗生物質、塩酸モルヒネ、   | |    塩酸グラニセトロン                       | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+