1.塩酸トドララジンと劇症肝炎等の重篤な肝障害
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| 成分名 | 該当商品名 |
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|塩酸トドララジン |アピラコール錠・散(協和醗酵)他 |
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|薬効分類等|降圧剤 |
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|効能効果 |本態性高血圧症 |
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(1)症例の紹介
塩酸トドララジン(塩酸エカラジン)は、昭和46年(1971年)に承認された
ヒドララジン系の降圧剤である。これまでに、塩酸トドララジンの投与により劇症肝
炎等の重篤な肝障害を発現したとする症例が8例報告されている。
報告された症例は多剤併用例であり、併用薬によっても肝障害が起こることが報告
されている。しかし、報告された症例は塩酸トドララジンの投与後に発生しており、
本剤との関係が否定できない症例も含まれている。性別は男性3例、女性5例、年齢
は22〜74歳で65歳以上が4例であった。症状発現までの投与期間は1ヵ月〜2
年10ヵ月以上で、肝障害の初期には全身倦怠感、食欲不振、発熱等がみられる場合
もあった。
報告された症例の一部を紹介する(表1)。
(2)安全対策
これまで塩酸トドララジンの副作用としては「肝臓」の項に「まれに黄疸、S−G
OT、S−GPTの上昇等があらわれることがある。」と記載し、注意を喚起してき
た。
今回、因果関係は必ずしも明らかではないが、塩酸トドララジンの投与後に劇症肝
炎等の重篤な肝障害が発現した症例が報告されたこと、また、再投与で症状が再現し
ている症例もあること等から判断して、塩酸トドララジンと肝障害の発現との関係は
否定できない。
このため、本剤の投与にあたっては、定期的に肝機能検査を行うなど患者の状態を
十分に観察し、異常が認められた場合には、投与を中止し適切な処置を行う必要があ
る。
塩酸トドララジンについては、新たに一般的注意を設け、禁忌、副作用の項に下記
のとおり追加、改訂して、一層の注意を喚起することとし、関係企業に本剤の適正な
使用を促すための情報提供を行うよう指導した。
<<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>>
一般的注意
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劇症肝炎、黄疸があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど患者
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の状態を十分に観察すること。なお、異常が認められた場合には投与を中止し、適
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切な処置を行うこと。
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| 禁忌(次の患者には投与しないこと) |
| 重度の肝機能検査値異常の患者 |
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副作用
(1)重大な副作用
1)劇症肝炎:劇症肝炎等の重篤な肝障害、まれに黄疸、また、GOP、GPT
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の上昇等があらわれることがあるので、定期的に検査を行うなど観察を十分に
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行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
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表1 症例の概要
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|No.1 企業報告|
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|患者 性 女 |
| 年齢 22 |
| 使用理由(合併症) 腎性高血圧(妊娠中毒) |
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|1日投与量・投与期間:90mg、129日 |
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|副作用−経過及び処置 |
|出産後の蛋白尿、高血圧に対して塩酸トドララジン、ワルファリンカリウム、塩酸|
|ジラゼプ投与。 |
|約4ヵ月後自覚症状はあまりなく、GOT 1205IU、GPT 1090IUと上昇。そ|
|の後尿濃染、全身倦怠感、黄疸出現。10日後、急性肝炎として入院、薬剤中止。|
|入院時GOT 954IU、GPT 1014IU、T-Bil 13.8mg/dl、PT 32.8秒。|
|入院5日後脳症が出現。血液濾過を連日行うも入院11日後死亡。 |
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|併用薬:ワルファリンカリウム、塩酸ジラゼプ |
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|No.2 企業報告|
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|患者 性 女 |
| 年齢 57 |
| 使用理由(合併症) 高血圧 |
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|1日投与量・投与期間:60mg、46日 |
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|副作用−経過及び処置 |
|投与18日目より、胃の不調を訴え一時軽快したが、投与44日目に再び胃の不調|
|を訴え体温37.5゜C。 |
|その後黄疸が出現。GOT 3054IU、GPT 4644IU、T-Bil 17.4mg/dl。|
|黄疸出現6日後GOT 1005IU、GPT 1213IU、T-Bil 22.2mg/dl、PT|
|22.8%。血漿交換、ステロイド投与等の治療を実施。 |
|その後意識障害が出現。持続的血液濾過療法を併用するも出血傾向が出現し、黄疸|
|出現20日後に死亡。 |
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|併用薬:胃炎治療剤、胃粘膜抽出製剤、耐性乳酸菌、シメチジン、臭化チメピジウ|
| ム、ビタミンB1、トラネキサム酸、セフポドキシムプロキセチル |
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